ダンケルク ★★★


DUNKIRK


「監督」 らしさかクリエイトか


 「ダンケルク」を鑑賞した直後の感覚は「ゾディアック」を鑑賞した直後のそれに似ていた。私はデヴィッド・フィンチャー監督が好きで「セブン」や「ファイト・クラブ」にかなり傾倒していた時期があった。そんなフィンチャー監督の当時の最新作「ゾディアック」を鑑賞した時に、それまで多用していた、カット割りの速いスタイリッシュな映像や、ひねりの効いた展開がなく、過去に起きた実際の事件を淡々と追っていく内容に失望してしまったのである。

 「ダンケルク」を観ようと思う要因にクリストファー・ノーラン監督の新作だから、という人も少なくはないはずだ。ノーラン監督といえば「メメント」「ダークナイト」「インセプション」等、独自のルールがあるフィクションの世界をCGに頼らず出来る限り実物で撮影し、あたかもこの現実と地続きにその世界が存在するように見せる映像と、その圧倒的な世界で起きる物語のツイストやフェイク、時間軸を入れ替える構成に、比類ない刺激と魅力があるのだと思う。

 では今作はどうか。まず監督が初めて史実に基づいた題材を扱ったこと、また物語がキャラクターで転がす展開ではなく、状況のみで進める展開となっている点でノーラン監督らしさどころか、通常の映画でもあまりない構成となっている。「ゼロ・グラビティ」も近い気がするが、このようなビッグバジェットで、全くキャラクターに移入させず全編に渡ってのタイムサスペンスは異例中の異例だ。空想の世界の中で起こるツイストばかりをノーランに求めてよいのだろうか。クリエイターでもある映画監督は、やはり新しいものも追求しなければならない。

 初見時は失望した「ゾディアック」を公開から随分後に観返した際、「なんと面白い映画なのか!!」と考えが一変したことがあった。そしてその魅力を、当時分からなかった自分を恥じたりしたものだ。もしかしたら「ダンケルク」もそうなる可能性があるかもしれない。しかし劇場から一歩足を踏み出した際のあの感覚を、あえてここに記そうと思う。


■■関連作品■■
ダークナイト ★★★★★
インセプション ★★★★
インターステラー ★★★★

キングコング/髑髏島の巨神 ★★★


キングコング:髑髏島の巨神 ブルーレイ&DVDセット(初回仕様/2枚組/デジタルコピー付) [Blu-ray]


観たいものだけをぶち込む、攻めの姿勢。


 観たいものだけを詰め込んだ、潔い怪獣映画だ。今作「キングコング/髑髏島の巨神」は、ゴジラやキングコングが登場しバトルする、モンスターバースの第2作目にあたる作品。別々の映画が同じ世界を共有し互いの作品に干渉し合うことは、現在ハリウッド映画ビッグバジェットの潮流だ。このような一大プロジェクトには巨費が投じられること、今後のユニバース映画の興収に影響を及ぼすこと等から失敗が許されず、物語やキャラクター描写がどちらかといえば手堅いものになりがちである。

 しかしである。今作はそのようなマイルドな「守り」の空気は見受けられず、いま観たい!!と思わせる怪獣映画の要素がふんだんに詰まっているのだ。実に、勇気と怪獣映画愛に満ちた「攻め」である。以下、私が感じた今作の良さを列挙してみた。




*****以下、ネタばれ注意*****




① テンポの速さ
 2005年公開のピーター・ジャクソン版「キング・コング」は、完成度の高い意欲作ではあったが、いかんせん上映時間が長い。特にスカル・アイランド上陸まで、さらにはキングコング登場までが長く、中だるみを激しく覚えた。今作では主役がド頭にいきなりの登場。メインストーリーも25分ほどで髑髏島に上陸し、夕日に佇むキングコングのシルエットを映した後はヘリ部隊、タコ、擬態虫、スカル・クローラーなど勝ち抜きトーナメント方式でバトルし、ラストまで一気に駆け抜ける。細かいことを気にせず真面目な展開に傾かない、非常にフレッシュなテンポだった。

② 怪獣映画と戦争映画のミックス
 これまでの怪獣映画は、フィクションラインが低く設定されており、舞台が現代であることが多かった。実際に住んでいる街が破壊されることで、よりエモーショナルになることもその一因だろう。しかし、今作はベトナム戦争終戦時が時代設定であり、アメリカ兵と当時の装備で巨大生物に戦いを挑むというユニークさ。これは、怪獣と戦争のミックスジャンルなる、新しい映画の発明ともいえるだろう。監督が公言しているように、ヘリ部隊や小型船で川を下るビジュアルは正に「地獄の黙示録」。森の奥のカーツ大佐を暗殺するがごとく、パッカード部隊はキングコング抹殺を厳命されるのだ。

③ キャラクター描写の面白さ
 非常に速いテンポながらキャラクターが全員面白い。特にパッカード大佐扮するサミュエル・L・ジャクソンのアクの強さ。あの台詞を言っている途中に激死する様は「ディープ・ブルー」を思い出すもの(笑)ジョン・C・ライリーが日本刀を構え「不名誉よりも死を」と日本語で語る様もしびれる。トム・ヒドルストンがヒロイックにならないこと、ブリー・ラーソンとも恋仲にならない(キングコング映画なら当たり前??)のもあっさりしてて良い。その他、キャラクターの味付けや死に方も多種多様で忘れ難いものとなった。

 以上のように、今作は非常に特異な味付けだったが、今後、ゴジラ等が合流するモンスターバースも同じように攻めの姿勢で臨んでほしいものだ。日本タイトルの副題もカタカナでの「スカル・アイランド」ではなく、万人が絶対に書けない「髑髏島」という漢字表記が、まがまがしくてなんとも良い雰囲気をだしている。日本の配給会社にも「攻め」の姿勢を感じた次第だ。


■■関連作品■■
アベンジャーズ ★★★
ドン・ジョン ★

メッセージ ★★★★


メッセージ [Blu-ray]


記憶には感情が伴う


 甘い経験、苦い思い出、などと言われるように、記憶には感情が伴う。記憶に感情が伴うことで、素晴らしい体験を繰り返したいという思いや、過ちを繰り返したくないといった、心情が生まれてくるのだろう。成長や人生を豊かにするために欠かせない人間の本質である。




*****以下、ネタばれ注意*****




 主人公のルイーズはヘプタポッドの文字を理解するにつれて、未来が見えるようになる。おそらくはその未来の記憶にも感情が伴っているのだろう。だからこそ、イアンとの離婚や娘との死別といった、最も辛い出来事が先に分かっていてもその運命を受け入れたのだ。

 「メッセージ」はイントロダクションこそ、SF映画によくある異星人とのファーストコンタクトもの、全世界を巻き込むスケールの大きなものだが、物語はルイーズの主観で語られ、ごくごく個人的な内容であることが次第に明らかになる。冒頭とラストで流れる、マックス・リヒターの「On the Nature of Daylight」は安らかにその運命を暗示し、観客を感動に包んだ。かくいう私も、鑑賞後この曲がずっと頭から離れず、主人公の気持ちを何とか理解しようと想いを巡らせたものだ。

 物語の始まりが、1番先の未来=ラストというサプライズ。では何故、冒頭の大学の講義や日常生活において終始、ルイーズは怪訝そうな表情だったのか(笑)ミスリードへと上手に誘導したエイミー・アダムスの演技はさすがである。

 ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の前作「ボーダーライン」では国境検閲所での舐めるような空撮ショットが印象的だったが、「メッセージ」もヘリコプターで宇宙船へと向かうシーンが同じように鮮烈だった。大渋滞した禁止区域を越えると、山肌から雲が流れ、その白い雲の間にぬっと現れた未知の物体がなんとも美しく不気味。そこで流れるスコア「Arrival」の影響もあり、好奇心と歪な不安が同居した屈指の名シーンといえる。この場面が上手いのは、一般人はそのエリアに入れないこと、宇宙船の大きさ、宇宙船と作戦基地の距離間といった情報を言葉ではなく、1ショットの映像で見せていることだ。


■■関連作品■■
バットマンVSスーパーマン/ジャスティスの誕生 ★★
キャプテン・アメリカ/シビル・ウォー ★★★
ハート・ロッカー ★★★

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