ターミネーター:新起動/ジェニシス ブルーレイ+DVDセット(2枚組) [Blu-ray]



 カジュアル感覚なターミネーター


 「カジュアル過ぎる」という感想に尽きる。今シリーズの良さは、得体の知れない殺人マシン=ターミネーターが突如として現れ、倒しても倒しても追いかけてくる恐怖と緊張。そして機械が自我に目覚め、人類30億人が滅亡するジャッジメント・デイ不可避への悲壮が物語の肝だ。

 「ターミネーター:新起動/ジェニシス」は予告の段階、ポスター等の事前情報である程度は予見できたように、要の肝が軽視された内容である。本作はターミネーターの正式な続編ではあるが、過去の遺産に頼ったセルフパロディ色が強いため、ある種のコメディにも見えてしまうのだ。

 自らの運命と人類の未来に悲観した、リンダ・ハミルトンが見せた強くも繊細なサラ・コナーは、本作のエミリア・クラークからは微塵も感じられない。また、機械側の最終手段とされたタイムトラベルを今回は乱発しているのも疑問。2人同時に転送できたり、未来へタイムスリップしたり(未来へ行く意味も疑問)と、縦の時間軸または並列の時間軸まで言及しているのだから訳が分からない。最終的に1984年の段階でシュワルツェネッガーが自分でタイムマシンを作ったりしているし(笑)“軽い”と感じるのはアクションシーンも同様。スクールバス横転時のCGや終盤のヘリコプターチェイスのCG連発も陳腐、目新しさがなく重量感にも欠ける。

 シリーズ5作目で、続編を追うごとにカジュアルになり作品の質を下げている、同様の病魔に侵されているのが「ダイ・ハード」シリーズだ。その5作目の両方に出演しているのがジェイ・コートニー。彼自身が実は、商業・ビッグバジェットに傾倒しているハリウッド映画界に送り込まれた、ターミネーターなのでは…と頭のなかで妄想してみたり。勿論、彼だけが悪い訳ではないのだが、作品選びのセンス若しくは運が無過ぎである。


■関連作品■
ダイ・ハード/ラスト・デイ  ★★
コマンドー ★★★★★
ホワイトハウス・ダウン ★★★
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(2015/04/08)
マシュー・マコノヒー、アン・ハサウェイ 他

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深層心理から恒星間航行、5次元の世界まで網羅してしまう、クリストファー・ノーランの止まらない進化


 近年、この監督の新作映画は是が非でも観なければならない、と思わせる監督が3人いる。デヴィッド・リンチ、デヴィッド・フィンチャー、そしてクリストファー・ノーランだ。

 振り返れば「ゾディアック」が公開された際、それがフィンチャー監督作品と思えなくてひどく失望した記憶がある。「セブン」や「ファイト・クラブ」で味わったスタイリッシュな映像・演出が影を潜めたように観えたからだ。(実はものすごい映像技術を使用しているのだが。)しかし、何度か鑑賞するうちに自分の間違いに気付く。映像は物語を正確に伝える手段に過ぎず、大事なのはキャラクターの感情そのものなのだと。映像より人物に比重を置いてから鑑賞したところ「ゾディアック」は大好きな作品のひとつとなった。近年のフィンチャー作品は無駄な演出を削ぎ落とし、正確に物語・人物・感情を伝えるよう、努めているように思える。

 「インターステラー」におけるクリストファー・ノーランも、その時と同じ様な印象を受けたのだ。仮に今作を監督名を伏せた状態で鑑賞しても、ノーランが監督であると答えることができるか正直分からない。それほど監督のフィルモグラフィーと異なる箇所が多かった。

・映画のタイトルクレジットがエンドロールではなく冒頭に現れる。
・時間軸が前後せず、物語の進行は極めて連続性が高い(後半まで)。主人公クーパーの行動、感情が次のシーンへと直に繋がっている。
・高層ビルやスーツ姿といった都会的で直線的な画のイメージがあったが、農場、畑、田舎町のアイコン、そして映像の印象は円や球体を連想させるものが多い。

 そして何よりも、1番の違いは監督の代名詞ともいえるノワール色が皆無だということだ。クーパーは1度もノワール的な闇に呑み込まれることなく、一心に娘との約束を果たそうとする。同じように子供との面会を切望した「インセプション」のコブは自身のトラウマ(闇)と最後まで対峙することと比較すれば、今回は極めて明朗で感情がぶれていない。深層心理の揺れを真下へ描いたこれまでの構造とは逆に、上へ上へと目指す様はポジティブで物語のトーンも最後は明るいものに。前述のように直線ではなく曲線や円のイメージは、自分だけではなく周りの現状を見据えているような印象さえ感じさせるのだ。

 では「ゾディアック」のように「インターステラー」も失望したかといえばNOである。これだけ大仕掛けをしておいても描き貫いたのは親子愛、SFの設定は感情の引き出しを開けるツールに過ぎず、監督は終始その部分を徹底していた。

 心の中を4層に下った「インセプション」から、恒星間航行、5次元の世界を描く「インターステラー」まで。ノワール色をも脱したクリストファー・ノーランの進化がどこまで続くのか楽しみで仕方がない。



■関連作品■
インセプション ★★★★
ダークナイト ★★★★★
ダークナイト ライジング ★★★★


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(2014/11/12)
トム・クルーズ、エミリー・ブラント 他

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同じ選択=死、トム・クルーズの映画人生に準える。


 映画の物語にはいくつかのセオリーがあり、主人公が突然死ぬという事象は限りなくイレギュラーなこと。ましてやそれが、トム・クルーズであれば尚のことである。そのような定石を真っ向からひっくり返したのが「オール・ユー・ニード・イズ・キル」だ。

 トム・クルーズの過去の出演作品を思い返しても、彼が死ぬ映画をパッと思い出せないほど、彼は死なない(何作品かでは死んでいるが)。そんなトム・クルーズが前半から死んで死んで死にまくる。時にはトラックに轢かれ、時にはヒロインに頭を撃ち抜かれ、と死に描写のオンパレードだ。

 もうひとつ今作が特異なのは、トム・クルーズ演じる主人公ケイジの何ともひ弱な性格なこと。戦場の最前線に行けという将軍の命令に難色を示し、挙句の果てには将軍を脅すというくずっぷり。これまでのトム・クルーズのイメージとは正反対、大スターの輝き等は皆無なのだ。

 上記、2つのイレギュラーが導くものは恐怖と緊張感である。つまりこれまでは”トム・クルーズ”なる特権に守られ絶対に死なない、という基本ルールが今回は通用しないのだ。さらに戦闘経験はゼロ、右も左も分からないまま戦場に落とされる恐怖は正に観客目線である。このため観ている側も先が読めないうえに、いつ死ぬかもしれない恐怖・緊張感が常につきまとうことになるのだ。

 思えば、トム・クルーズ自身もハリウッドスターとして何作も映画の世界をループしている。彼が長年に渡り、浮き沈みの激しい業界の第一線で活躍出来ているのは、同じ選択を繰り返していないことだ。スパイ、スポーツエージェント、ハスラー、殺し屋…。完全無欠なヒーローから男性向けのセックス教祖まで。俳優として”同じ選択=死”という事象は実は彼自身が1番理解していることかもしれない。その意識が強いため、彼の作品は常に新しいものを提供し観客を魅了し続けられているのだ。次回作では、また生まれ変わったトム・クルーズに出会えるはずだ。



■関連作品■
アウトロー ★★★
プラダを着た悪魔 ★★★★
ミッション・インポッシブル/ゴーストプトコル ★★★
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