ウサギ人間など、どこからその発想が湧き出るのだろうか。デイヴィッド・リンチ監督の作品には異質なキャラクターが登場する。「ロスト・ハイウェイ」ならミステリーマン、「マルホランド・ドライブ」ならカウボーイ、そして今回は3匹のウサギ人間。
いずれも重要な意味をもちそうだが、何らかのシンボリック的な存在であり、最後までその素性は明らかにならない。これらのキャラクターが登場すると画面が引き締まり、とりわけ不気味でユーモラスである。他の監督が撮ったら途端にチープなものに、リンチ監督の腕によってそれらは上質な気品に満ちた存在へと昇華する。あのウサギのお面が発売されたら買って、頭からかぶってみたいものだ。
*****以下、ネタばれ注意*****
以下、私的な解釈だが今作のテーマは「救済」ではないかと思う。ロストガールが映画「47」の撮影中に殺され、その作品は未完となってしまう。
この世に想いを残し成仏できない彼女は、テレビのなか(ロストガールの頭の中)のウサギ人間を通じニッキーと意識を繋げ、最終的には彼女によって救済される。ウサギ人間はロストガールとニッキーの意識交流を司るスイッチャー、夫に復讐をするまでの手助けをする存在。ロストガールの頭の中は観客に解るように、テレビという媒体を用いて表現していたのだろう。一方で「内なる旅」によってニッキーも、忌わしい過去の出来事から救済され、満ちたりた表情で「明日の自分」がいる椅子に座っていたのだ。
リンチ監督は「考えずに感じろ」と言うが、どうしても辻褄を合わせたくなるものである。
「インランド・エンパイア」の1番の見所は意外にもエンドロールだった。出演者のローラ・ダーンをはじめ、ウサギ人間のローラ・ハリング、劇中の台詞でしか存在しなかった片足の女性、ペットの猿、金髪のカツラをした女性、そして娼婦達が出現し歌い踊る。
「マルホランド・ドライブ」でのパーティーの食事シーンで、点と点が線になった瞬間を彷彿させる世界観の広がりがそこにはあり、動的な画面とパワフルな歌は脳内を一気に快感へと導いた。強烈なイメージを頭に焼き付け、作品中の女性が救われるこの上ない大円団だ。
■関連■
インランド・エンパイアを観に行くストレイト・ストーリー ★★★