イタリアは呼んでいる [Blu-ray]


日本も呼んでいる


 なんとも画期的・冒険的な映画だ。開始30秒でイタリアの旅が始まったかと思えば、以降は、中年親父2人のお喋りと移動→食事→ホテルの繰り返しだけなのである。劇的な展開もない、明確な起承転結もない、だけど面白い。会話劇+ロードムービー+ドキュメンタリーのアンサンブル、他にあまり例を見ない作品だ。

 スティーブ・クーガンとロブ・ブライドンは実名のまま登場し、本人役をそのまま演じて??(投じて??)いる。2人は私生活でも仲がよいとのことで、そのことが映画に心地良い風を吹き込み、会話の掛け合いが自然で可笑しい。また劇中では多数の物真似を披露しており、全世界・全男子が一度は試す、「ゴッドファーザー」でのマーロン・ブランド、アル・パチーノという王道ものから、「ダークナイト ライジング」でのクリスチャン・ベール、トム・ハーディ、マイケル・ケインといった、フレッシュなものまでを網羅している。また、旅行のアイテムにiphoneやipod、skypeを駆使するなど、限りなく”現在”を切り取ったスタイルにも注目だ。

 今作のテイストに近い映画といえば、同じく会話劇がメインの「ビフォア」シリーズが挙げられる。ビフォアシリーズでは、男女間での考え方の齟齬等を主題に扱っていることから、普遍的な会話やテーマが多くの人に共感を呼んだ。

 それに比べ今作は中年親父が2人、仕事の悩みは俳優業でのこと、裕福な旅のプラン等々その辺りは感情移入し難い点だ。しかし言い方を変えれば、芯となる物語の設定を確立しなかったことで、浅く広くパッケージ化が可能だということも窺える。

 イタリアは呼んでいる。次回はフランスでもアメリカが舞台でもよい。その国の料理、ホテル、映画、俳優について語り女性を口説く。年に1回のペースで世界各国を周って欲しいものだ。願わくばいつか日本の地で。


■■関連作品■■
ビフォア・ミッドナイト ★★★★
ダークナイト ライジング ★★★★

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(2014/10/24)
アレック・ボールドウィン、ケイト・ブランシェット: サリー・ホーキンス 他

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コメディ映画と見せかけて、実はダークファンタジー。


 ジャスミンという人物が本当にそこに居る、と思わせたケイト・ブランシェットの立ち振る舞いはさすがのひとこと。超セレブ生活から一転し、妹との生活に馴染めない様子、周囲からの孤立、曖昧な将来展望と、地に足が着いていないフワフワした存在感が可笑しいのだ。

 そもそも、ケイト・ブランシェットは「エリザベス」「ロード・オブ・ザ・リング」「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」等、女王様キャラ、タカビーキャラを演じることが多かった。従来からのイメージをそのまま踏襲したようなキャラクターこそがジャスミンであり、彼女の為に存在した脚本と言っても過言ではない程のはまり役だった。




*****以下、ネタばれ注意*****




 中盤にエリート外交官が登場すると、少女漫画のような展開になるのかなと匂わせたがウディ・アレン監督の眼差しは違う。自身の過去を暴露され結婚は破談、精神バランスはさらに壊れ、独り言をつぶやくジャスミンの姿は、ある種のホラーである。彼女は気付いていなかったにしても、優雅な生活の裏には妹の元夫のような多くの被害者が居て成り立っていたもの。また、暴言をうけながらも最終的にはチリとよりを戻し、ピザのひとかけらを奪い合うジンジャーの姿も併せ、「三つ子の魂百まで」「蛙の子は蛙」等の諺を連想させた。

 「ブルージャスミン」とは一見すればコメディ作品だが、物語を美談にせず、最後までどん底に落とし続ける辛辣な展開、教訓めいた記号の配置は、さながら現代を舞台にした寓話、ダークファンタジーである。

 また、ジャスミンの新恋人をピーター・サースガードが演じていただけに、どこか胡散臭く実はこの人は詐欺師ではなかろうかと、ハラハラしながら鑑賞していたのは私だけではないはずだ。


■関連作品■
あるスキャンダルの覚え書き ★★★★
インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国 ★★★
ベンジャミン・バトン/数奇な人生 ★★
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アナーキーを貫くのに予防線を引いてはダメ


 謎のSMクラブへ入会した会社員、「R100」という題名、松本人志監督。これらの要素からして相当にアナーキーな映画になるのは間違いないと予想していた。感想としてはいつも通りにぶっ飛んだ内容だったが、どうしても許せないことがあった。




*****以下、ネタばれ注意*****




 私が許せなかったこととは「R100」という物語自体をメタ構造にしたこと。つまり謎のSMクラブや不条理な出来事は劇中劇であり、物語の破綻やありえない事象などを、劇中内に登場する高齢監督に責任を転嫁したことである。謎の組織「ボンデージ」の存在意義や丸呑み女王など、劇中劇のスタッフに矛盾点を説明させるのもいかがなものか。「大日本人」でも「ここから実写になります」と警告メッセージを発したように、ギリギリのところで免罪符を準備しているのが無責任に思えるのだ。

 メタ構造にすることで、物語に深みがでるかといえばそうでもない。非日常的なクラブの存在は元々ファンタジーのようなものなので、細かいことは気にせずに最後まで突き抜けてほしかった。カルト映画として長く愛されるためにはあと少しの覚悟が松本監督には必要なのかもしれない。
 
 劇中で良かったのは、佐藤江梨子のボンデージ姿(寿司ネタ好きだなぁと思う)、片桐はいりの丸呑み女王、吊るされた嵐君(笑)。また「ヴァイブレーター」以来の大森南朋と寺島しのぶの共演、しかも全国シネコン上映でムチで打たれるなど、あの頃では想像がつかないほど2人揃っての大出世でありユニークな描写だった。

 とはいえ、どんな批判にも我流を貫く松本人志監督をはじめ、ここまで全4作を律儀に劇場で鑑賞したりと私自身もドMなのかもしれない。


■関連作品■
大日本人 ★★
しんぼる ★
さや侍 ★★
ハゲタカ ★★★
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