年間売上高13兆円、全米第7位の「エンロン」という企業を御存知だろうか?巨額の不正経理・取引が明るみに出て2001年12月に破綻に追い込まれた企業である。当時ニュースではアメリカ史上最大の企業破綻と言われ、その影響はアメリカ全土のみならず世界経済をも巻き込むことに。今作はその企業スキャンダルの真相を暴く衝撃のドキュメンタリー映画である。
マイケル・ムーアが作るようなドキュメンタリー、アポなし取材、全編を通じての主張、爽快感そのような物語手法は一切なく、本作は事実のみをナレーションで伝えるもの。それでも最後まで目が離せなかったのはあまりにも「真実」が嘘のように思えるほどスリリングで、それこそ台本のあるフィクション映画を観ているかのようだった。
「何千万ドルの報酬が」「何億ドルを儲けた」などの会話、その額や桁に呆然としてしまう。果てには電気料金の規制緩和に伴い、山火事で送電線が燃えているのを「素晴らしい、もっと燃えろ」と喜んでいたり(送電線が燃えることで電力供給ができなくなり電気料金が上がるため)利潤を追求するが故の、歪んだ人間の本質には恐怖さえ覚えた。現実は小説より奇なりというが、本当にこのようなことがまかり通っていたのかと思うと、滑稽で笑いさえおきてしまう。
時価主義会計を導入したこと株価・トレーダーばかりを重視したこと、ペーパーカンパニー、損失化隠し、顧問弁護士・金融機関・会計事務所一体となっての共謀など破綻までには様々な要因が挙げられたが、結局は人間のモラルの問題である。
昨今では日本でも同じような事件が横行した。世界経済の中心は現在もアメリカであり、アメリカの会計基準を日本企業が多く採用し始めている。今作を観て本当にそのような流れ、アメリカ型経済・株主重視の体制が正しいのか疑問を持たざるを得ない。大きな数字ばかりに目がいってしまうが、破綻した裏では失職者が2万人いて、真っ当に働いた多くの人の財産や将来(退職金基金12億ドル、年金基金20億ドルの喪失)が奪われたことも忘れてはならない。