シッコ ★★★★

シッコシッコ
(2008/04/04)
マイケル・ムーア

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 つい先日、腸炎にかかり、ものすごい腹痛のなか病院に行った。痛みの部位から盲腸の疑いもあるとのことで、なにやら検査を受けたのだが、支払いの際の金額を見て驚く。医療費3割負担とはいえ、想像以上の金額に会計のレジを眺めながら、前よりも腹痛がひどくなった気がした。お金を持ち合わせずカードで支払いながら、日本の医療制度を恨んだのを覚えている。しかしである「シッコ」を何10分間か鑑賞すると、そのような考えから一変して、日本に生まれて良かったと少しながら思ってしまったのだ。

 まず、自分が無知だったのだが、アメリカは国民皆保険制度が無い、唯一の先進国だったことを初めて知った。そのためアメリカでは、自分で民間の保険会社に保険料を支払い、その後で病院の医療を受けることになる。しかし民間の保険会社は、利潤を追求するあまり既往症や治療の必要性の無さなど、難癖をつけて患者に保険料を支払わない。保険会社に従事し、審査する医師も非承認を出し続けることで、保険料を抑えたとみなされ、地位や報酬が上がるというおかしな現象が起きているのだ。そのようなアメリカの実状とカナダ、イギリス、フランス、キューバの医療制度とを比較しながらドキュメンタリーは進んでいく。


市場原理が医療を亡ぼす―アメリカの失敗市場原理が医療を亡ぼす―アメリカの失敗
(2004/10)
李 啓充

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 印象的だったのは「健康な人が、見ず知らずの人のためにお金を払っている(税金を納めている)」ということが、理解し難いと発言したマイケル・ムーア監督の姿だ。病気になったのなら、その人自身でどうにかしなければならない。それがアメリカ人の普通の発想であり、さすが自衛の国だなと監督の言動に妙に納得してしまった。

 では日本はどうだろうか。国民保険制度はあるものの、平成20年度からは後期高齢者医療制度が始まり高齢者の負担は増え、 また、介護報酬を不正に請求し処分を受けた企業もでてくるなど、制度や規制緩和の行方は不安定である。大切なのは助け合いの精神だ。

 本作のラストの言葉にあるよう「私ではなく、私たちを大切にする精神」は国民に健康と自信を与え、それが全体としての生産性を向上させるのではないだろうか。何においても、アメリカ志向になっていく日本の未来には、不安を覚えてしょうがない。お金の有無で、人の死期が左右されることが当たり前ならば、それは笑えない事象である。


■関連作品■
ブリッジ ★★
デート・ウィズ・ドリュー ★★★
エンロン/巨大企業はいかにして崩壊したのか? ★★★


[ 2008/04/08 00:00 ] ドキュメンタリー | TB(0) | CM(0)

エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか? ★★★

エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか? デラックス版エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか? デラックス版
(2007/05/25)
元エンロン社員:ケン・レイ(元CEO) ジェフ・スキリング(元CEO) アンディ・ファストウ(元CFO)

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 年間売上高13兆円、全米第7位の「エンロン」という企業を御存知だろうか?巨額の不正経理・取引が明るみに出て2001年12月に破綻に追い込まれた企業である。当時ニュースではアメリカ史上最大の企業破綻と言われ、その影響はアメリカ全土のみならず世界経済をも巻き込むことに。今作はその企業スキャンダルの真相を暴く衝撃のドキュメンタリー映画である。

 マイケル・ムーアが作るようなドキュメンタリー、アポなし取材、全編を通じての主張、爽快感そのような物語手法は一切なく、本作は事実のみをナレーションで伝えるもの。それでも最後まで目が離せなかったのはあまりにも「真実」が嘘のように思えるほどスリリングで、それこそ台本のあるフィクション映画を観ているかのようだった。

 「何千万ドルの報酬が」「何億ドルを儲けた」などの会話、その額や桁に呆然としてしまう。果てには電気料金の規制緩和に伴い、山火事で送電線が燃えているのを「素晴らしい、もっと燃えろ」と喜んでいたり(送電線が燃えることで電力供給ができなくなり電気料金が上がるため)利潤を追求するが故の、歪んだ人間の本質には恐怖さえ覚えた。現実は小説より奇なりというが、本当にこのようなことがまかり通っていたのかと思うと、滑稽で笑いさえおきてしまう。


エンロンの衝撃―株式会社の危機エンロンの衝撃―株式会社の危機
(2002/11)
奥村 宏

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 時価主義会計を導入したこと株価・トレーダーばかりを重視したこと、ペーパーカンパニー、損失化隠し、顧問弁護士・金融機関・会計事務所一体となっての共謀など破綻までには様々な要因が挙げられたが、結局は人間のモラルの問題である。

 昨今では日本でも同じような事件が横行した。世界経済の中心は現在もアメリカであり、アメリカの会計基準を日本企業が多く採用し始めている。今作を観て本当にそのような流れ、アメリカ型経済・株主重視の体制が正しいのか疑問を持たざるを得ない。大きな数字ばかりに目がいってしまうが、破綻した裏では失職者が2万人いて、真っ当に働いた多くの人の財産や将来(退職金基金12億ドル、年金基金20億ドルの喪失)が奪われたことも忘れてはならない。


[ 2007/12/19 00:00 ] ドキュメンタリー | TB(0) | CM(2)

ブリッジ ★★

ブリッジ ブリッジ
エリック・スティール (2007/11/22)
アミューズソフトエンタテインメント
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 ゴールデンゲート・ブリッジで自殺をする人々を捉えた問題のドキュメンタリー映画。驚いたのは自殺をする、橋から飛び降りる瞬間の映像が固定カメラではなく、人の手によって撮影されたものだということだ。

 つまり自殺をする瞬間が偶発的な出来事ではなく、時を同じくして克明に目撃していたカメラマンが居たということである。橋の上で同じ場所を何度も行き来し、迷う行動が自殺者にはあり、その挙動不審な言動を察知すればカメラマンはその行為を止めることもできたのだ。今作は自殺問題を強く肯定も否定もせず、問題提起を扱うに止まっている。自殺の是非を問うという、スタンスのようだがその前にカメラマンはどのような気持ちで撮影していたのか、その瞬間に「すごい映像が撮れた」と内心では思っていたのではないだろうか??撮影を終えた後に少しでも気が咎めたのだろうか??この辺り、ジャーナリズム・製作という観点、人道的・道徳観など境界線が非常に難しく、ピューリッツァー賞をとったケビン・カーターの問題ではないが、なんともすっきりせず気持ちが悪かった。

 今作ではゴールデンゲート・ブリッジで自殺した人の家族や友人のインタビューが全体のほとんどを占めている。そのなかで橋から飛び降りて助かった男性と、その家族のインタビューは興味深く、両者の想いの違いが鮮明に見て取れた。それでも前述のように作品が問題提起に止まっているせいか、鑑賞し終えても記憶に残ったのは、壮大な景観のゴールデンゲート・ブリッジの映像と飛び降りる際の映像くらいである。

 自殺は今や大きな社会問題だ。腫れ物に触るな、タブーに触れるな、とは言わないが今作のように微妙なラインで描くことは、ウェルテル効果や模倣性を増長させる危険も潜んでいる。踏み込むには相当の覚悟が必要だが、そういう意味では「ブリッジ」は自殺問題というものを根本から捉えきれていないような気がした。


[ 2007/11/27 00:40 ] ドキュメンタリー | TB(0) | CM(2)
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