◆魔法の瞬間
ジョージ・ルーカスがそのことを「魔法の瞬間」と表現したように、インディ・ジョーンズのシルエットが浮かび上がった瞬間、ただならぬ感覚が身体を包んだ。まだ物語が始まっていない冒頭に起こる感情は、長い年月を経ての復活の喜びと、このシリーズがやはり大好きだったのだということが、純粋に自分のなかで確認できた瞬間でもあった。無条件で心を掴むヒーローの存在は、他の作品では起こりえない感動を運び「これこそが映画の醍醐味だ」と改めてそう感じたのだ。
◆大人になったインディ・ジョーンズ
19年ぶりの新作とのことで劇中内のインディ・ジョーンズも年齢を重ねている。彼は1899年生まれのため、今回の時代設定では58歳。「最後の聖戦」が39歳の頃の話なので、映画内でも19年の歳月が過ぎたことになるのだ。そのため自身の立場も変わり落ち着きがあり、大人になったなという印象をうける。それはインディに限らず、スピルバーグやジョージ・ルーカスの映画製作に対するスタンスにも当てはまることだった。
*****以下、ネタばれ注意*****
インディ・ジョーンズというキャラクターの良さは、知的・ユーモラス・絶対に諦めない精神、この3点の複合に限ると思う。今作では歳をとり大人になったせいか、ユーモアやアクションを息子であるマットが受け継いでおり、さらに知的な謎解きに関しても、友人のオックスリーがそのほとんどを導き出す。彼自身が常に前線に構え、ボロボロになりながら突進していくというより、チームを指揮する監督へと成長しており、若干の物足りなさもあるが頼もしくもあった。
◆無限の創造力と抑止
少し残念なのが、アクションや見せ場に対する演出の工夫の少なさである。これまでは、トラック・トロッコ・戦車などインパクトのあるチェイスシーンが用意されていたのだが、今作ではその味付けがかなり薄い。ジャングルでの追走劇が見所で、ジャングルカッターなるいびつなマシンが登場するも、インディがロケットランチャーで一掃してしまう。これまでのシリーズなら、このマシンを利用し、敵兵と壮絶なバトルを展開。何人かの兵士がカッターに巻き込まれ、血まみれの餌食になると予想できるのだがあっさりと終了する。
また軍隊アリの大群も、CGであることがすぐに分かり気持ち悪いというより、規律のとれた動きは綺麗とも映った。「魔宮の伝説」で本物の昆虫を喜んでケイト・キャプショーに投げつけていた、あの感覚を思い出して欲しかったところだ。グロテスクな描写が少なくなったのもスピルバーグ、ジョージ・ルーカスが大人になった証拠なのか、ファミリー映画としてそのことよりもSF的な描写に力が入っていたように思える。しかしその一方で、アステカ文明を思わせるアケトーの神殿やナスカの地上絵での壮大な俯瞰視点はCG技術がこれを可能にし、冒険活劇の見せ方に新たな可能性を示したのも事実である。
インディ・ジョーンズ同様に、スピルバーグ、ジョージ・ルーカス両者も19年の歳月を経て、多くの成功と新たな技術を獲得した。無限の創造力と潤沢な製作費。映画人として成功した2人が何の弊害もなく製作したことが、逆に本来の演出を忘れてしまったのではないだろうか。予算や環境など、なんらかの抑止があってこそ、誰も考え付かなかったアイディアが誕生するのだと思う。
◆最強の敵・シリーズの今後
個人的にケイト・ブランシェットが好きなせいか、初登場したイリーナ・スパルコの活躍が嬉しかった。ソ連兵を率い予知能力があるという謎に満ちた人物。長剣を得意武器とし機関銃を乱射するなど、冷酷さと強さを兼ね備えたシリーズ最強の敵である。時折見せる、気の抜けたような表情も面白い。
「クリスタル・スカルの王国」はエリア51・ロズウェル事件に始まり、最終的にはアダムスキー型のUFOのようなものまで登場してしまう。SF的で意外な展開に賛否分かれそうではあるが、これまでのシリーズでも非現実の要素はあったので大いに楽しめた。ラストではシャイア・ラブーフに世代交代を示唆する場面もあり、シリーズの今後にも期待が高まるものだった。
■関連作品■
インディ・ジョーンズ/レイダース失われたアーク ★★★★★インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説 ★★★★★インディ・ジョーンズ/最後の聖戦 ★★★★★インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国 ★★★★インディ・ジョーンズのジャパンプレミアに・・・バベル ★★★あるスキャンダルの覚え書き ★★★★ディスタービア ★★トランスフォーマー ★★★