ローン・サバイバー [Blu-ray]ローン・サバイバー [Blu-ray]
(2014/09/02)
マーク・ウォールバーグ、テイラー・キッチュ 他

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人は人を救いたいという本質


 アメリカ海軍の精鋭特殊部隊、ネイビーシールズが完全な敗北を喫する映画が「ローン・サバイバー」だ。実話ベースで特殊任務の失敗を描く作品として、真っ先に「ブラックホーク・ダウン」を喚起させるが、それに匹敵する映画が登場したと言ってよい。




*****以下、ネタばれ注意*****




 鑑賞中、私は少なくとも3回絶望感を味わった。

① 山の頂上に兵士が1列に並んで迫ってくる描写。
自身のチームが4人に対し、あまりに敵対兵の数が多いこと。また自分から見て不利となる上方に配置され、情報伝達のスピードも脅威に感じられた。

② 後方撤退時に崖から飛び降りるシーン。
戦争映画では市街地やジャングルでの戦闘は何度か観ていたが、山岳地帯の傾斜地が舞台というのは初見だった。右も左も敵兵に囲まれ、やむなく後方の崖から飛び降りるが、文字通り「転がり落ちる」ということを体現おり、それまでの映画史になかった新しい描写である。転がりながら鋭利な岩肌に全身を打ちつける箇所は、画面を直視出来ないほど”痛さ”がダイレクトに伝わってきた。

③ 救援に来たヘリがRPGにより撃墜されるシーン。
チームが残り2人になった段階でようやく駆け付ける救援ヘリ。「ブラックホーク・ダウン」でも屈強の兵士を演じていたエリック・バナも同乗しているため、これで安泰と思いきや、これまた「ブラックホーク・ダウン」で火を噴いたRPGによって撃墜される。他の戦争映画でもそうだが、とにかくRPGの火力がインフラ気味で、今作でもその存在を十二分に示した格好だ。

 延々と続く地獄絵図の様相だが、今作はラストで少し異なる展開を迎える。後半で米兵である主人公を助けた村人、「いかなる代償が伴おうと敵から逃げる者を守り抜け」と定められているパシュトゥーンの掟に従った末の行動だ。エンドロール時でのこの文字を観たときに「ローン・サバイバー」という映画の見方が一変する。

山羊飼いの3人を殺害せずに助けたことにより、作戦は失敗し多くの仲間を失うという悲劇を迎えるが、それを超越した人の崇高な行動に触れることができた。逆に山羊飼いを殺害すれば、作戦を遂行し仲間を失うことはないが、交戦規程に抵触し負い目を背負う可能性があった。どちらの選択にも得るものと失うものが存在し、どちらが正しかったのかは断定し難い。

 この不思議なジレンマと顛末。単なるサバイバル映画、または米軍プロパカンダ映画だけではない。なんらかの大義に沿っての戦争・殺し合いという極限状況のなかでも、人は人を救いたいという本質をそこに見た。



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(2013/08/07)
ジェイミー・フォックス、クリストフ・ヴァルツ 他

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名編集者サリー・メンケの急逝を惜しむ


 「ジャンゴ 繋がれざる者」を鑑賞して改めて、クリストフ・ヴァルツの存在の重要さに気付く。逆に言えば「イングロリアス・バスターズ」も「ジャンゴ 繋がれざる者」も彼がいなければ、物語にここまでの牽引力は無かったように思えた。2度目のアカデミー助演男優賞受賞も納得の演技である。




*****以下、ネタばれ注意*****




 マカロニ・ウエスタンというタランティーノ監督が大好物なジャンルで挑んだせいか、
上映時間が長く、なかなか進まない展開に若干飽きてしまう。特にレオナルド・ディカプリオが演じたカルビン・キャンディとシュルツが退場した後が冗長に思えた。監督が語りたい、またはオマージュを捧げるマカロニ・ウエスタンのシーンは沢山あるだろうが、これらの要素が嵌らなければ映画のリズムには乗れないだろう。

 また期待していたジェイミー・フォックスと、開始1時間以上経過してようやく登場したレオナルド・ディカプリオのキャラクターが個人的にはいまいちピンとこなかった。卓越した狙撃の腕前や肉体的な強さなど、最初からやたらと要領のよいジャンゴと、ただただ悪趣味なだけのカルビン・キャンディ。それよりはサミュエル・L・ジャクソンの2面性のある奴隷、スティーブンの方がずっと恐ろしく魅力的である。

 「ジャンゴ」では、それまでのタランティーノ作品とは違う点がいくつか見られた。
・シュルツの視点のみで進む物語。タランティーノ監督がよく採用する群像劇ではなく1人のストーリーテラーで展開される。そのせいか登場キャラが若干少ない??(イングロリアス・バスターズが多すぎた??(笑))
・チャプター毎のタイトル表示が無く、物語の大筋の時間軸が前後しない。
この辺りは、それまでのタランティーノ作品の名編集者サリー・メンケが急逝したのが1番の原因ではなかろうかと勘繰ってみたりした。クリストフ・ヴァルツの存在の重要さに気付いたことと同じように、サリー・メンケが「ジャンゴ/繋がれざる者」を編集していれば…と思うと残念で仕方ない。再びタランティーノ監督の魔法に掛かることが出来るのか、今後の作品に期待したい。


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(2013/09/04)
ベン・アフレック、ブライアン・クランストン 他

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作品の根幹に漂う映画への愛情


 ベン・アフレックは本物の巨匠監督になりそうだ。完璧な時代描写は「ゾディアック」、中東や異国の空気感は「ミュンヘン」のようである。同胞の国外脱出という硬派なストーリーをサスペンスとコメディ要素を巧く混ぜ合わせた「アルゴ」はベン・アフレック”監督”としての評価・名声をさらに高める作品となった。

 「ペルシャ帝国―現在の国名はイラン…」米国とイランの関係を端的に説明した冒頭の絵コンテは、世界情勢に疎い自分にとっては大変に助かり、また劇中で登場するアルゴの絵コンテへの伏線となる憎い演出だ。そこから当時の映像を交えながら、暴動の緊張感で張り詰めた1979年のイランへと観客を一気に送り込む。

 イランから6人のアメリカ人を国外脱出させる作戦は、偽のSF映画を製作し、そのスタッフのロケハンに仕立て上げ出国させるという、突拍子もないもの。しかもその作戦が真実であるから尚のこと驚く。国家間を股にかけた一大作戦が偽映画なのだから、アメリカにとっての、また世界にとっての”映画”の影響力の高さを思わせる。

 劇中で感心した点が2つある。ひとつは時代考証・描写に尋常ではない力を注いでいるところ。遠くから引いた画ではCGを使い、細かい箇所・小道具に至るまで徹底したリアリティを貫いていることだ。それはエンドロールでの画像比較でも分かるのだが、これにより物語への没頭感、説得力が増す結果となる。派手な爆破、銃撃戦はなくともグイグイと画力で惹きつけられるのだ。それはさながら画面の細部まで、また画面に写りもしない引き出しの中身まで几帳面にこだわりぬいた、デヴィッド・フィンチャーの「ゾディアック」のようである。

 もうひとつはサスペンスとコメディ要素の加減だ。「大使館占拠→作戦熟慮→実行」時間と拘束の危機に迫られる緊張の連続だけではなく、偽映画を作り上げる要素、アラン・アーキンとジョン・グッドマンの軽妙なやり取りが映画に良いアクセントを与えている。ベン・アフレックを含め3人で卓を囲み「フ○ッキン、アルゴ!」と乾杯するシーンなどは最高である。CIA本部の上司役、ブライアン・クランストン、人質のクレア・デュバルをはじめキャスティングも渋く上質な演技は見応えがあった。

 「アルゴ」という偽映画製作の作戦。例えばこれが劇中であった英会話教師作戦であったなら、2012年の世の中に映画として当時を再構築する流れが起きただろうか??今作は評論家の間でも概ね好評価を得ているが、その根底には映画への愛情が見え隠れしているからだ。



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