シン・ゴジラ Blu-ray特別版3枚組



日本映画を不信していた自分を恥じるほど…


 近年、邦画を観て、ここまで熱い気持ちになったのは久しぶりだった。2014年レジェンダリー・ピクチャーズが製作した、いわゆるハリウッド版ゴジラを観たときに、迫力の映像・ビジュアルに圧倒され「あぁ、もう日本でゴジラは作れないな」と思った。

 それ以前に、自分自身がどこか邦画を敬遠していたようにもある。「日本よ、これが映画だ。」、「アベンジャーズ」公開時の憎たらしい挑発的なキャッチコピーだが、それを完全には否定できず、ある部分で納得していたりもした。邦画を観たとしてもドラマやドキュメンタリー、まして大掛かりなアクションものやSF、ディザスター系はハリウッドの映像に遠く及ばず、鑑賞しても無駄であると鼻から決めつけていたのだ。

 そこにきての「シン・ゴジラ」である。面白い!!まずはハリウッド版のゴジラより面白く、さらに製作費が10分の1程度というから驚きだ。物語は3.11を体験した日本の現状を上手く絡めており、どのような困難な状況に陥っても皆で力を合わせ、知恵を出し合えばそれを乗り越えられる、と説いている。無論、東日本大震災からの復興もそうだが、私には日本の映画業界に「もっと自信を持っていこう!!」と庵野秀明総監督が檄を飛ばしているようにも観えたのだ。

 嬉しいのは、面白い映画をきちんと観客が評価し、興行収入を得たという点である。これにより、日本でも信念を持って映画製作に臨めば、ジャンルを選ばずビジネスとして成り立つことが証明された。特撮という日本のお家芸を不信していた自分が恥ずかしくなるほど「シン・ゴジラ」は我々にプライドを取り戻させた作品である。

 一部では石原さとみの存在や演技に難がでているようだが、ポリティカルな人物・言葉の波のなかにあのようなフィクション寄りのキャラクターが居ても良いのではないだろうか。すし詰めの群像劇に紛れる緩和剤であり、その存在がなければ今作のテンションを保つことが難しいように思えるが。


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GODZILLA/ゴジラ ★★★
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アーロン・テイラー=ジョンソン、渡辺謙 他

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それぞれの”こうあるべき”ゴジラ像


 今作「GODZILLA ゴジラ」を観た人の反応は様々だ。日本版ゴジラを踏襲していると見る人もいれば、反核やゴジラの怖さについて描き方が足りないと見る人もいる。共通するのは鑑賞者それぞれに熱い想いがあり、自分なりの”こうあるべき”ゴジラ像が確立されていることだ。それだけゴジラは映画キャラクターを越えたアイコンであり、人々を(ある意味で)魅了する、惹きつける存在でもある。

 私自身、ゴジラにそこまで精通している訳ではないが怪獣映画は好きだ。理由は高貴なものでなく、単純に街が破壊されていく様子に高揚感を覚えるからである。普段の光景が為す術なく滅びる様、それは日頃のストレスや、理不尽な社会構造がリセットされることをそこに重ねているのだと思う。同じような都市破壊ではディザスター映画もあるが、通常起こりうる事象と、未知の生物により破壊されるとでは気持ちの置き方が違う。ディザスターには悲観があるが怪獣はノンリアルであり、楽観していられるのだ。

 さらに怪獣映画には時として、敵怪獣が出現することもある。モスラやヘドラがこれに当たるが、これも街をリングに置き換えたプロレスとも見れる。まるで自分が幼児に戻り、丁寧に作り上げた積み木を押し倒すような純粋な欲求充足も存在するのだ。反核や自然の脅威というメッセージはその充足の後に来るものだと思う。

 以上を踏まえれば、今作の「GODZILLA ゴジラ」は、日本映画ではおおよそ検討のつかない製作費を投じ破壊や戦闘を繰り広げるため、当然の如く私の欲求を満たしてくれた。巨費が投じられることで画面は派手になるが、それに終始せず演出も素晴らしい、特にハワイのシーン。軍隊が発煙筒を打ち上げその赤い光が上昇し、ちょうど真上まで到達し光が折り返してもまだ後ろの物体の顔まで届かない、そこにカメラが上昇しゴジラの全貌が初めて明らかになる。ゴジラの大きさや人間との位置関係を1ショットで示した、丁寧で見応えのあるシーンだった。

 マイナスは監督が人間描写を重視したという割には、主人公が家族を大事にしているのか、ゴジラとの因縁を結したいのか分かり難いこと。また芦沢博士に扮する渡辺謙の立ち位置や役割が掴み難いこと。期待したエリザベス・オルセンとジュリエット・ビノシュに見せ場が無かったこと。(特にジュリエット・ビノシュの扱いに絶句。)米軍の作戦も、もはや自爆行為と見れなくはないが、そんなことはどうでもいい。ゴジラが暴れれば私は概ね満足である。次回作では是非、キングギドラを!!


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観客・登場人物が感じるサプライズ


 予告編の印象ではホラーかと思っていたが、実際はスプラッター+サスペンス+コメディの融合。一言で表するなら実に”にぎやか”な映画である。R-15のレイティングで激しい残虐描写はあるものの、上質な映像と、繰り返される「Looking for the Magic」(Dwight Twilley )も相まって、スカッとする後味だ。

 本編では、両親の結婚35周年祝いに集まった家族10人を助けを呼べない状況で、別荘に閉じ込めておく必要がある。携帯電話の普及のせいでミステリー小説が成立しなくなったといわれる昨今。劇中ではジャマーなる電波妨害装置で、いとも簡単にそれらの端末使用を禁じたのは目新しい方法だった。劇中のように広範囲で妨害電波が効くのか怪しいところだが、今後ミステリー系の脚本で重宝されそうな小道具ではある。




*****以下、ネタばれ注意*****




 邦題は「サプライズ」。何がサプライズかと言えば犯人の正体ではなく、一般学生に思えた絶妙に華のないヒロイン(笑)が実は、ジェイソン・ボーン並の能力を持っていたことである。つまり観客が感じるサプライズというよりは、犯人グループが感じた不意打ち、サプライズという流れだ。

 しかし突っ込み所は多い。
・犯人グループが動物のお面を被る必要性→視界が制限されるし、仮に顔を見られたくないのであれば普通の目出し帽でよい。結局は「映画の画作りのため」の域を超えていない。
・殺人計画の無謀さ、意味のない行動→短いクロスボウで窓の外から7人を殺害しようとする計画が甘い。また壁に書く「You're Next」(次はお前だ)の血文字、猟奇殺人に見せるのであれば全員殺害した後でもよい。観客のミスリードを誘うほどのインパクトもなく必要性に欠ける。

 もっとも観客総意の突っ込みはヒロインの生い立ちである。父が妄想に憑りつかれ世界の資源が枯渇すると思い込み、1人でも生き残れるようにサバイバルキャンプで育ったというバックグラウンド。いや、そっちの方がむしろ映画向きだろ!!どんな風に育てればあんな能力が備わるのか、そのサバイバルキャンプを映像化した方がドラマチックではなかろうか。

 それでも、助けを呼びに走り出す娘が速攻でグエッとなる。(スローモーションで死亡フラグも立ちまくり)足に釘が刺さる他、弱小犯人グループはさながらホームアローン。脳天ミキサーと爆笑シーンは多い。色々こねくり回した末に犯行動機が、何の捻りもなく遺産相続に着陸すること、または若すぎる母親の容姿こそが本作1番のサプライズだったのかもしれない。
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