ブギーナイツ [DVD]ブギーナイツ [DVD]
(2011/04/21)
マーク・ウォールバーグ、ジュリアン・ムーア 他

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*****以下、ネタばれ注意*****




 2時間30分近い上映ラストに主人公の巨大な性器を見せるという、前代未聞の画にこの上ないインパクトを覚えた。「キメた」という最後の台詞もクールなもので、弱冠26歳で監督を務めたポール・トーマス・アンダーソンの自信に満ちた心の声を代弁しているようである。

 分かり易い物語だが「ブギーナイツ」が面白いのは、ポルノ業界を舞台にしているということだ。数多くの登場人物をバランスよく配置し、見せ場をつくり、魅力あるキャラを創造することにも成功している。それぞれのキャラクターには"特技""目標""弱み"があり、一旦は成功を収めるがそこから転落、最後に再び立ち上がるというもの。それ故、ほとんどの人物が集結する豪邸での華やかなパーティーシーンは見所のひとつと言えるだろう。

 また本編ではセックスシーンやドラック、高級車に洒落た家具や小物など、人間の欲求を満たす・本能を刺激する描写が多い。そこに溺れる人間模様が可笑しくも絶望的であり、愚かなことをしようが、駄目人間ながらほっておけないという心理に見事に引っ張られるのだ。

 ポール・トーマス・アンダーソンは今やハリウッド屈指の才能ある監督として認められている。「ブギーナイツ」に出演している俳優もこの作品以降、確実にキャリアを伸ばした。

・マーク・ウォールバーグ→「ディパーテッド」でアカデミー助演男優賞にノミネート
・バート・レイノルズ→今作でアカデミー助演男優賞にノミネート
・ジョン・C・ライリー→「シカゴ」でアカデミー助演男優賞にノミネート
・ジュリアン・ムーア→「エデンより彼方に」などアカデミー賞の常連に
・ドン・チードル→「ホテル・ルワンダ」でアカデミー主演男優賞にノミネート
・フィリップ・シーモア・ホフマン→「カポーティ」でアカデミー主演男優賞受賞

 いま考えると「ブギーナイツ」の共演が奇跡に思えるほどの輝かしい俳優陣だ。才能を開花させたい、キャリアアップしたいとのことで、監督の作品に出演を熱望する俳優は後を絶たないだろう。


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Mi : 3 ★★★
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ジャンル:映画
恋 空 プレミアム・エディション(2枚組)恋 空 プレミアム・エディション(2枚組)
(2008/04/25)
新垣結衣、三浦春馬 他

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 「お前が望むんだったら こいつを殺す」「今度やったら女でも殺す」という台詞の数分後のシーンでは「赤ちゃん産もう」。命に対して考えが軽すぎである。「恋空」は40億円近い興行収入を収め大ヒットを記録した。若年層の支持が、興行収入を牽引する形だったのだが、上記の台詞や感覚に全くついていけなかった。

 また前半でレイプシーンがあるのだが、この展開が物語のリズムと登場人物に対するリアリティを削いでいた。2人の愛の深さを測るため、あるいは原作に忠実であるがために挿入されたのかもしれないが、2時間で語るには短く、レイプ・妊娠・中絶のシーンが急転直下の出来事であり、気持ちが乖離してしまう。


恋 空 スタンダード・エディション恋 空 スタンダード・エディション
(2008/04/25)
三浦春馬、新垣結衣 他

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 今作では最大限に不可解な演出がある。三浦春馬が差し出した花のプレゼントに対して新垣結衣は「花が可哀想だよ」と言い残して立ち去る。その後、三浦春馬は律儀に花を植え直すのだが、このシーン以降、新垣結衣が何度も花を差し出しているということだ。あれほど花を摘むことを嫌悪していた女性が、花束を渡したり、菜の花のブーケを喜んだりとその行動が理解出来ず、最後まで気持ち悪かった。「いやいや、花あげてるやん!!」っと、野暮なツッコミをいれてしまう。

 「恋空」という造語は好きである。言葉のイントネーションや「今も空に恋をしています」という心情も爽やかなもの。Mr.Childrenの「旅立ちの唄」がエンディングテーマとなっているが、フルで流れたことはファンにとっては嬉しいことだった。




*****以下、ネタばれ注意*****




 今作はケータイ小説が原作のせいか、劇中でも携帯が必須のツールである。美嘉とヒロの出会いや別れ(最期)に至るまで携帯電話が用いられ、写メ・メール・テレビコールと機能もフルに活用している。一方で中盤以降の福原優との付き合いでは、携帯は出てこず、直接の会話がメインとなった。デジタルとアナログ人間の対決のようだが、今回はデジタルに軍配があがる。現代では携帯電話の所有は当たり前であり、それを無くしては恋人の関係は成り立たないといっても過言ではない。

 「永遠に…」という言葉を連呼していた2人だが、気持ちを表現・代弁したのも携帯である。例えば設定を1990年にしたら果たして2人は出会っていたのだろうか、運命の人として関係が成り立っていたのか、携帯に依存し過ぎている2人を観て、そんなことをふと思った。


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旅立ちの唄 / Mr.Children
"HOME" TOUR 2007 DVD/Mr.Children
キサラギ ★★★
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ジャンル:映画
アイ・アム・レジェンド [Blu-ray]アイ・アム・レジェンド [Blu-ray]
(2010/04/21)
ウィル・スミス、アリーシー・ブラガ 他

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唐突な幕切れ感がなければ…


 ドラえもんの秘密道具のなかに「どくさいスイッチ」というものがある。名前を呼ぶだけで嫌な人を消すことができる道具なのだが、のび太は周りの人物を消していき、結局は世界中の人々を消してしまう。1人取り残された世界で好きな物を食べたり、おもちゃで遊んだり、悠々と生活を始めるも直ぐに孤独に包まれるという展開、幼心にも、このシチュエーションは衝撃的で記憶に鮮明に残っていたものだ。「世界で1人だけ」という設定は究極の孤独であり、この上ない虚無の境地だろう。

 本作の冒頭はクリッペン医師のテレビインタビューで始まり、画面が暗転した時には3年後のニューヨークが映し出される。人類滅亡のプロセスを描かず、情報を極力与えず、最初から誰もいない高層ビルと雑草と動物が共存する異様なニューヨークを観せる演出は巧く、一気にこの世界に惹きこまれることに。CGの技術は見た事のない物体を描くことや、激しいスペクタクルシーンに用いられるのが常だが、タイムズスクウェアやブルックリン橋など圧倒的なスケールでありながら、細部まで緻密にCGで再現された動きの無い舞台、巨費を投じたであろう映像にまずは驚いた。

 1人で生き残るサバイバル映画といえば「キャスト・アウェイ」を思い出す。無人島に漂流し、なにもないゼロの状態からライフラインを構築するのに対し、今作ではほとんどの物質が供給過多状態にある大都市圏が無人島であり、それまでの日常とのギャップが面白い。生活感が残っているのに現在は1人、将来に対する希望がないという観点からすれば、今作のほうがより虚無的になるのではないだろうか。劇中のウィル・スミスは規則正しい一定のリズムを守った生活、運動し食事を摂り、パソコンで記録を残し、レンタルビデオを返すという、出来る限り普通の生活を維持することで精神を正常に保っていたように観える。




*****以下、ネタばれ注意*****




 そのような描写から中盤以降は物語が一変する。ダークシーカーと呼ばれるウイルスに感染した凶暴な人間が主人公に襲ってくるのだが、その遭遇シーン、複数のダークシーカーがビルの内部で黙って立っている場面は心底恐い。突発的に驚かせる演出も多く、この手のジャンルが苦手な人にとっては辛いものだったように思う。

 現状を踏まえ、神は存在しないと言っていたウィル・スミスが、娘の別れ際の言葉と、女性の蝶の刺青、蝶に見えたガラスの割れ方で悟ったように行動にでる展開は興味深い。個人的にはこの辺りのテーマを掘り下げて欲しかったが、公開前の試写で不評を買い、急遽撮り直したラストの影響を含め、後半の失速が残念でならない。
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ジャンル:映画
転々 プレミアム・エディション転々 プレミアム・エディション
(2008/04/23)
小泉今日子、オダギリ ジョー 他

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 最近テレビを観て、太陽の光を肌に浴びるとビタミンDが生成されるということを知った。そのビタミンDが欠乏すると骨を作る働きが低下したり、情緒不安定になったりするとのことだ。「転々」は散歩映画で、屋外のあたたかな日差しが印象に残る。その柔らかな光は、さながら画面からビタミンDが生成できるようであり、近所の公園を目指して散歩でもしようかという気持ちになった。

 「東京の町は風景が変化に富んでいるから散歩向きなんだよ」三浦友和の台詞の通り、本編のロケーションは全て東京である。意外なのは東京なのに、田舎っぽさ・昔懐かしさを感じる景色が存在したということだ。駅の改札口が自動ではなく有人であったり、狭い路地ひとつにしても異国のように観えた。東京に住んでいたら、または住んだことがある人なら、今作はよりいっそう楽しめるだろう。

 前半はそのような散歩が心地良く思えたのだが、物語を紡ぐためとは言え、擬似家族を形成する後半の展開や、3人組のエピソードが話の腰を折り集中できない。散歩という序盤のスタイルで首尾一貫してほしかったものだ。「ゆみちゃんって、あのジョン・マルコビッチに似てる」という台詞やオダギリジョーが読んでいた4コマ漫画など、ゆるく、シュールともとれる笑いは人によってツボが分かれそう。

 HDVで撮影された本編の映像には、独特の臨場感がありフィルムカメラとはまた違う味わいがある。これらのデジタルツールを用いた今後の映画に期待がもてそうだ。


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あずみ ★
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大いなる陰謀 (特別編)大いなる陰謀 (特別編)
(2008/08/22)
ロバート・レッドフォードメリル・ストリープ

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 豪華出演陣だが、もうひとつ踏込みが足りない


 トム・クルーズが自分の部屋から一歩も外に出ない映画。他の作品で激しく走り回る彼が、政治家(共和党の上院議員)を演じ、会話のみの出演となるのは珍しいことだ。「大いなる陰謀」はロバート・レッドフォード、メリル・ストリープ、トム・クルーズのハリウッド3大スター共演が話題となっているが、そのほとんどが密室劇で、3人全員が交わるということでもない。

 アフガンで繰り広げる新たな作戦・戦略を軸に、政治家とマスコミ、大学教授と生徒、作戦を遂行している兵士の3つの場所が舞台となり、同時刻で話が展開される。まったく関係のないように見える、個々のエピソードが次第に繋がっていく構成は「バベル」を思い出させた。




*****以下、ネタばれ注意*****




 同時刻・国を跨ぐ物語はスケールの大きさを感じるが、場所が点在し会話がほどよい部分で移り変わるせいか、感動やメッセージ性が散漫となっている。新たな驚きや緊迫した展開もなく、メリル・ストリープを除いては演技の見せ場もそれほどない。若い兵士2名が銃弾を浴びる場面でも、壮大な音楽・スローモーション・フラッシュバックと演出も手垢のついたものだった。

 「大いなる陰謀」という邦題も意味もなくミスリードを誘う。陰謀とあるせいで、ロバート・レッドフォードとトム・クルーズが裏で繋がっているのか、と予想するが共謀していることもない。政治的な娯楽要素の強いサスペンスを期待して劇場に足を運ぶと、肩を落とす結果となるだろう。原題の「Lions for Lambs」の方が作品の中身を端的に示している。

 アメリカの現状、戦争への政策、マスコミの情報操作、若者への教育・将来・無関心さを危惧するロバート・レッドフォードの熱意も分からなくはない。ただ、それを伝えるための踏み込みや語り方が圧倒的に足りなかったように思える。


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Mi : 3 ★★★
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ハリー・ポッターと秘密の部屋 [Blu-ray]ハリー・ポッターと秘密の部屋 [Blu-ray]
(2010/04/21)
ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント 他

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 ハリーポッターシリーズ第2弾。冒頭のドビー登場のシーンで前作より、CG技術の向上が顕著に現れていたが、ドビーは不気味で怖かった(笑)

 またダニエル・ラドクリフをはじめとする子役が随分と成長したなと驚く。パート2ということだが、普通に2年目の学校が始まり、新しい魔法の練習をしたりクィディッチをしたりほのぼのと物語は進行する。しかし後半では「スターシップ・トゥルーパーズ」を彷彿とさせる蜘蛛の大群が現れたりとグロテスクな描写が続き、子供達が泣きださないかと心配になった。

 それにしてもホグワーツには秘密がありすぎて、何気に危険な学校なのではと疑ってしまう。あれだけ先生がいるのだから何とかしろよ、と思ったが先生方もかなり怪しいので信頼できない。普通に閉鎖だと思う(笑)


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ランボー [Blu-ray]ランボー [Blu-ray]
(2009/02/04)
シルヴェスター・スタローン、リチャード・クレンナ 他

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 単なるアクション映画ではない


 小さい頃に観た「ランボー」ではアクションばかりを注視していた。タンクトップ1枚、鍛えぬかれた筋肉、銃弾をたすきのようにまとう姿から放たれる、アクションシーンに完全に見入っていたものだ。しかし改めて鑑賞し直すとベトナムから帰還し、居場所がなくなった1人の男のドラマであり、強い孤独と虚無を感じさせられる。

 特にラストでの無人の警察署に銃弾を撃ちこむシーンは社会に対する怒りと、ベトナム後遺症から逃れられない叫びにも見え、戦争の悲惨さや虚しさをより際立たせていた。またそれらは暴力を示すことで非暴力をも訴えており、少なくともパート1にはそのような記号が作品中には点在しているように思える。

 田舎の町並み、白い雪が仄かに残り巍然とそびえる山脈など激しいアクションの背景は、静的で厳しい寒さを思わせるものばかりだ。作品全体のトーン・色彩も抑え気味であり、それらの画がランボーの孤独を助長させている。

 ランボーの特徴をトラウトマン大佐が説明するシーンがあるのだが「(ランボーは)ヤギが吐いた物も食う」という台詞が衝撃的過ぎた。自然の中でのサバイバル戦を得意とし、圧倒的大多数の敵にも屈しない彼を応援したものだ。


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ニコラス・ケイジのウェザーマン スペシャル・コレクターズ・エディションニコラス・ケイジのウェザーマン スペシャル・コレクターズ・エディション
(2006/06/23)
ニコラス・ケイジ、マイケル・ケイン 他

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 「コンエアー」「フェイス/オフ」の筋肉質で元気全開なニコラス・ケイジと、「リービングラスベガス」「ザ・ロック」「アダプテーション」のような駄目な情けない男のニコラス・ケイジ。今作で観られるのは後者のニコラス・ケイジだ。家庭×、仕事×、親子関係×と悪いところだらけ、背中を丸め悲壮感を漂わせ、ちょっと気にいらないことがあったら相手を罵る。そんな駄目男を演じる彼の魅力が物語全体を覆い尽くしていた。淡々と進む一人称での語り口の連続なので、存在感と演技が一層際立っているように思える。

 他のヒューマンドラマ作品と大きく違うのは主人公の職業がタイトル通り、ローカル局の天気キャスターだということだ。この天気予報に準えて、人生は予想困難な天気予報で風向きひとつでどうなるか分からないんだ、などと訴えるあたりはかなり新鮮に映る。

 主人公がアーチェリーにはまったのも、風向きや角度を計算し的に命中させるという作業が、仕事の天気予報や家庭で満たせなかった気持ちとを連動させる働きがあったのだろう。最後にはその腕前も上達し、その姿もすっかり様になっていく。それまでの迷いや悩みが吹っ切れ、新たな人生への手応えを感じるツールとして効果的に物語に反映されていた。

 今作の監督はいまや売れっ子のゴア・ヴァービンスキー。「パイレーツ・オブ・カリビアン」だけではなく、このような小粒のヒューマンドラマもそつなくこなすあたりはさすがである。あの名優、マイケル・ケインに「人生はクソだ」と言わせただけでも、今作の存在意義があるのかもしれない。


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インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説 [Blu-ray]インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説 [Blu-ray]
(2013/12/20)
ハリソン・フォード

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純粋な冒険活劇、恐怖と面白さは紙一重。


 インディ・ジョーンズ第2弾はシリーズ中でも異色作と言われ、ファンの間でも賛否分かれる作品として議論が絶えない。ナチス・ドイツが絡まない、描写がグロテスク・暗い、ヒロイン・子供が騒がしい(笑)などの非難もあるが、個人的には「魔宮の伝説」も大好きである。

 前作「レイダース」でインディ・ジョーンズのある程度のフォーマットが出来上がっているが、冒険活劇物という観点からすると、奴隷の子供達を救い村の宝を取り戻す、険しいジャングルや奥深い洞窟が舞台である今作のほうが、純粋なアドベンチャーとは言えないだろうか。

 しかし、3部作で群を抜いて気持ち悪いのも「魔宮の伝説」だ。心臓をえぐりとられ、ワニに食べられ、猿の脳みそのシャーベットがでてくるなど、際どいシーンの数々にアメリカ公開時には新たなレイティング枠を設けたほどである。そのなかでも昆虫の大量発生のシーンはきつい。名前も知らないような、虫がうじゃうじゃと湧き出し、ムカデ・ゲジゲジ・甲殻類やカマキリ、蛆虫、、、思い出しただけでも背筋が凍るようだ。

 恐怖と面白さは紙一重だ。危険なものほどスリルがあり、美味しい食べ物ほど体に悪いものである。スピルバーグ監督はそのことを充分に理解しており、ブラックな描写をあっさりと見せる所にエンターテイナーとしてのセンスを感じさせる。終盤ではトロッコチェイスや吊り橋を真っ二つに斬り裂くシーンなど、CG全盛期の現代でも見劣りしない最高に美味な見所もあり、ラストまで息つく暇も無い。

 その「魔宮の伝説」がシリーズ中で1番面白いという人も多く、1番面白くないという人も多いのは興味深い結果だ。個人的には、多くの人に今作を推したいのだが、スピルバーグ監督がDVDのコメントで「3部作のなかで最も思い入れのない作品だ」と断言してしまっているから救われない。


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ステルス [Blu-ray]ステルス [Blu-ray]
(2010/04/16)
ジョシュ・ルーカス、ジェイミー・フォックス 他

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 この御時世によくこのような映画を撮れたな、と感心したのが「ステルス」である。大手配給会社、巨費を投じてB級映画を作っているのだが、脚本もお粗末なものでB級以下の出来だと言わざるを得ない。何故この企画でGOサインが出たのか不思議でしょうがなく、ハリウッド映画のネタの無さを痛感してしまう。

 無人ステルス機・人工知能の暴走といった使い古された展開、しかもその暴走の原因が落雷という発想の浅ましさが逆に笑えたりする。派手なアクションが多いもののCGを多用しているせいか、質量無視の動きに迫力がない。フォーカスをわざとずらしたり、突然コックピットをアップで撮ったりとライブ感を煽っているものの、戦闘機がラジコンのように軽く観えるのは問題だ。




*****以下、ネタばれ注意*****




 絶対こんな女性パイロット居ないであろう、やたらとグラマーなジェシカ・ビール(中盤にサービスシーン有)。製作途中で嫌気が差したのか、あっさり死んでしまうジェイミー・フォックス。その中途半端な出演のジェイミー・フォックスにすら負ける薄い存在の主人公ジョシュ・ルーカス。無人ステルス機のせいで仲間が亡くなったのに、いつの間にか無人ステルス機と共に戦ったりと展開も謎であり、突っ込み所は多い。

 続編を臭わせるシーンがエンドロール後に用意されているが、興行収入的にも失敗している現状から間違いなくパート2はないだろう。製作陣のいやらしさか、勘違いか、悲しささえ覚えてしまうオチである。


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トリプルX ネクスト・レベル ★
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イルマーレイルマーレ
(2008/06/11)
キアヌ・リーブスサンドラ・ブロック

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 キアヌ・リーブスとサンドラ・ブロックは共に1964生まれの同い年。無名だった2人は「スピード」への出演、大ヒットをきっかけにハリウッドスターの仲間入りを果たす。そのような2人だからこそ「イルマーレ」での久々の共演には注目が集まり、またその内容も「時を越えた恋愛」という題材なのだから、運命的なものさえ感じてしまう。




*****以下、ネタばれ注意*****




 タイムトラベルもので恋愛ものとなると、会えそうで会えない切なさや儚さといった感情・展開がつきものだ。未来が分かっていて、何の弊害もなく思い通りになってしまうと物語の意味がないからである。今作で言う「儚さ」は、キアヌ・リーブスが交通事故で亡くなってしまう、というものだった。なるほど、時を越えた恋愛も成就しないんだなという気持ちで鑑賞していたら「キアヌ・リーブスが死んだ世界に、ひょっこりキアヌ・リーブスが現れる」というハッピーエンドなのに、なにか釈然としないラストを迎えてしまう。居ないはずの人間が存在し尚且つ、それまでの記憶も継続されるという、タイムパラドックスをねじ伏せたファンタジーにハリウッドらしさを感じた。

 「スピード」の時とは違い主演の2人とも落ち着いた印象をうける。特にサンドラ・ブロックは仕事・恋愛観・生き方に悩む医師という、繊細で傷つきやすいキャラクターを演じており、普段の明るさや破天荒な様とは異なる立ち振る舞いも楽しめた。「すれ違い」や「待つ」ことが多いため、2人が1つの画面に納まるのはわずかに2シーンのみである。そう考えると、ロジックやルールを越えて2人を1フレームに納めたラストの展開も分からなくもない。


イルマーレイルマーレ
(2008/10/08)
キアヌ・リーブスサンドラ・ブロック

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 劇中ではバレンタインデーの日がターニングポイントになるが、サンドラ・ブロックからカードを受け取った婚約者の男性が「ごめん なにも買っていない」という台詞があったりと、チョコレートを一方的に受け取る、日本の習慣との違いが印象的だった。


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シッコ [DVD]シッコ [DVD]
(2008/04/04)
マイケル・ムーア

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 お金の有無で人の死期が左右される


 つい先日、腸炎にかかり、ものすごい腹痛のなか病院に行った。痛みの部位から盲腸の疑いもあるとのことで、なにやら検査を受けたのだが、支払いの際の金額を見て驚く。医療費3割負担とはいえ、想像以上の金額に会計のレジを眺めながら、前よりも腹痛がひどくなった気がした。お金を持ち合わせずカードで支払いながら、日本の医療制度を恨んだのを覚えている。しかしである「シッコ」を何10分間か鑑賞すると、そのような考えから一変して、日本に生まれて良かったと少しながら思ってしまったのだ。

 まず、自分が無知だったのだが、アメリカは国民皆保険制度が無い、唯一の先進国だったことを初めて知った。そのためアメリカでは、自分で民間の保険会社に保険料を支払い、その後で病院の医療を受けることになる。しかし民間の保険会社は、利潤を追求するあまり既往症や治療の必要性の無さなど、難癖をつけて患者に保険料を支払わない。保険会社に従事し、審査する医師も非承認を出し続けることで、保険料を抑えたとみなされ、地位や報酬が上がるというおかしな現象が起きているのだ。そのようなアメリカの実状とカナダ、イギリス、フランス、キューバの医療制度とを比較しながらドキュメンタリーは進んでいく。


華氏 911 コレクターズ・エディション華氏 911 コレクターズ・エディション
(2004/11/12)
ドキュメンタリー映画

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 印象的だったのは「健康な人が、見ず知らずの人のためにお金を払っている(税金を納めている)」ということが、理解し難いと発言したマイケル・ムーア監督の姿だ。病気になったのなら、その人自身でどうにかしなければならない。それがアメリカ人の普通の発想であり、さすが自衛の国だなと監督の言動に妙に納得してしまった。

 では日本はどうだろうか。国民保険制度はあるものの、平成20年度からは後期高齢者医療制度が始まり高齢者の負担は増え、 また、介護報酬を不正に請求し処分を受けた企業もでてくるなど、制度や規制緩和の行方は不安定である。大切なのは助け合いの精神だ。

 本作のラストの言葉にあるよう「私ではなく、私たちを大切にする精神」は国民に健康と自信を与え、それが全体としての生産性を向上させるのではないだろうか。何においても、アメリカ志向になっていく日本の未来には、不安を覚えてしょうがない。お金の有無で、人の死期が左右されることが当たり前ならば、それは笑えない事象である。


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バイオハザードIII [Blu-ray]バイオハザードIII [Blu-ray]
(2010/05/26)
イアン・グレン、アリ・ラーター 他

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 バイオハザードシリーズ、1作目の舞台は地下研究所「ハイブ」。2作目は都市、ラクーンシティ全体。そして今回の舞台は砂漠だった。人気ゲームからの映画化だが、ゲームはそのドアの向こうに未知なる何かが居る、という恐怖・閉塞感が売りなだけに、砂漠がメインとなるのは違和感を覚えてしまう。荒廃した大地を、何台かのトラックやバスが並走する画はそのまま「マッドマックス」である。ゾンビやカラスが出てこなかったら、マッドマックスの新作ではないかと、似たようなシーンが多かった。

 そもそもバイオハザードはT-ウイルスに感染し、ゾンビ化した生物から逃げるということが基本の話である。それが開始数秒だけのナレーションで人類のほとんどを絶滅させ、生存者が安息の地を求めて旅に出る、となるともはや別次元の物語だ。その基本軸がぶれてしまっているため、終盤になって凶悪なクリーチャーが出てくるも、いまひとつ盛り上がりに欠ける展開となってしまっている。




*****以下、ネタばれ注意*****




 砂漠に群がる圧倒的な数のゾンビ、大空を覆いつくすほどのカラス、砂に埋もれたラスベガスなどCG・視覚効果については感心するほど良くできていた。また全編に渡り、ミラ・ジョヴォヴィッチのアクション、特にトリッキーな蹴り技やナイフを使った動きが多く見られるので、彼女のファンには楽しめる内容だろう。

 ラストは何故か日本、品川の地下のシーンになる。日本のマーケットを睨んだサービスカットなのだろうか。すっきりしない終り方でも、仮に次回作の舞台が日本となれば、それはそれで観てみたいものだ。

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(2010/05/12)
ブラッド・ピット、アンジェリーナ・ジョリー 他

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刺激的な画は多いが、物語のテンポが悪い。


 ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリー。ハリウッドのスーパースター2人が夫婦役で共演、最強の殺し屋同士がド派手なケンカを見せる話題作だ。豪華出演者、惜しみない製作費を与えられ刺激的な画が多いのだが、その期待感故に丁寧すぎて面白味に欠ける、そんな印象が残った。




*****以下、ネタばれ注意*****




 2人が殺し屋というのは、予告やポスターで存分に知れ渡っている。…にも関わらず、わざわざ出会いのシーンから描いており、この辺りが長い。お互いを疑い始めるディナーのシーンからが本当の見所である。ワインや胡椒、包丁やナイフの位置に気を配るなど疑心暗鬼のなか相手を探る様子は面白く、これこそが観たかったシーンだとワクワクしたものだ。そうして観ていると、あれだけ本気で殺しあった夫婦があっさりと仲直り(笑)後半は協力して組織壊滅のために戦うという、これまたどうでもいい展開に。

 普通の夫婦だった2人が嘘を突き通し、殺し屋と分かり始める過程と分かった後、夫婦喧嘩と両者の葛藤こそ求めていた流れなのに、その前後はもはや蛇足である。自宅で互いに銃を向け合い、殺さないといけないターゲットなのに気持ちが入り結局は殺せなかった、あのシーンこそクライマックスであり、鑑賞していてもそこでかなり気持ちが落ち着いてしまう。そこからまたギアを入れようとする姿勢。製作者はよほど欲張りなのか、もしくはそのまま終わることを恐がる、弱腰だったのではないだろうか。

 また2人以外のキャラクターが目立たないことにも驚く、正に2人のための映画といっても過言ではない。アンジェリーナ・ジョリーはファースト・カットからその美しさを見せつけ「トゥーム・レイダー」のララ・クラフトのごとく、綺麗で強い女性を演じていた。SMプレイ中にターゲットを殺し華麗にビルから脱出するシーンは必見であり、殺されたマフィアも綺麗なアンジェリーナ・ジョリーとのプレイ中に殺されて幸せだったのでは??(笑)

 一方のブラッド・ピットは「ザ・メキシカン」のように、どこか頼りなさげで周りに振り回される役を爽やかに演じている。時折アドリブにも見える、やんちゃなしぐさもファンにはたまらないだろう。両スターの魅力は充分だったが本当にそれだけであり、話題性や瞬間的な刺激を追及してしまう"ハリウッド病"の典型を観たようだった。


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腑抜けども、悲しみの愛を見せろ [DVD]腑抜けども、悲しみの愛を見せろ [DVD]
(2008/02/22)
佐藤江梨子、佐津川愛美 他

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脱いでくれ、佐藤江梨子。


 非常に突飛なタイトルで、映画館で鑑賞したらチケットを買うときに困りそうなものである。印象に残ったのは物語や展開ではなく、どちらかというと個々のキャラクターであり、俳優陣とそれぞれのテンションがこの映画を支えているのだと感じた。




*****以下、ネタばれ注意*****




 傲慢でプライドの高い、和合澄伽を佐藤江梨子が演じている。「演技力がない売れない女優」という設定のせいか、演技しない演技という点ではまり役に思えた。その抜群のプロポーションの良さを見せる箇所があり、大胆なシーンに挑戦とのことで話題になっていたが、結局は脱いでいない。物語の脈絡からすれば脱いでもよさそうだったが、一定の制約があったのだろうか。今作は海外でも一定の評価を得ていたため、今回に関して言うと大胆にいったほうが好転していたように思える。

 和合澄伽の妹役は佐津川愛美。姉からのいじめに耐え、精神世界での仕返しと創作活動に勤しみ、ラストではどんでん返しを見せる。没頭して漫画を書き始める際の、表情や音楽・カット割が強烈で印象深い。

 そして今作で最も光っていたのは人気が再燃している永作博美だった。畳の上をゴロゴロ転がって柱にぶつかったり、そばつゆを顔面に思いっきりかけられたり、少し天然の外れたキャラクターで楽しませてくれる。ただ、完全に枠からはみ出ている訳ではなく、中盤以降、物語に密に絡んでくるのもおいしいところ。30歳過ぎていても処女という設定、夫の永瀬正敏に関係を迫るシーンなど、泥沼の精神状態に陥った人々のなかで、物語に笑いのエッセンスを与え、作品のバランスを保っていた。


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