ダージリン急行 ★★★

ダージリン急行ダージリン急行
(2008/09/03)
オーウェン・ウィルソンエイドリアン・ブロディ

映画の詳細を見る



 ウェス・アンダーソン監督作品の面白さは、ポップな映像と独特のテンポにある。ゆっくり過ぎず早過ぎないカット、シリアスでもなければシニカルでもない、他の監督が配合できない中間領域をウェス・アンダーソンは探求し続けている。「ダージリン急行」でもその領域はぶれることなく、観客を楽しませる不思議世界へと導いてくれた。




*****以下、ネタばれ注意*****




 物語は心が離れてしまった3兄弟が、列車で旅をしながら再び絆を取り戻すという単純極まりないものだ。しかし、スローモーションで電車に駆け込むシーンや急に顔にズームが寄ったりと、一心を一気に鷲掴みにされるシーンが挿入されており、興味深く鑑賞できる。役者が監督の作風に合わせているのか、それとも作品が役者を変えてしまうのかは分からないが、監督作品初参加のエイドリアン・ブロディも物語の空気に馴染んでいた。

 全編を通じて青が目立つように、美術・小道具や配置を徹底していたが、物語の終盤、父親からの荷物を放り投げた後は赤に変化している。過去と決別でき兄弟の心が通った象徴であるかのような鮮やかな赤は印象深い。

 インドというあまり見慣れない街並みと列車内の雰囲気。本作にはロードムービーとして旅の面白さを伝える要素も含まれているようだ。


■関連作品■
恋はデジャ・ブ ★★★★
マイ・ブルーベリー・ナイツ ★★
ヒート ★★★★

[ 2008/10/31 00:00 ] ヒューマンドラマ | TB(0) | CM(0)

チャーリー・ウィルソンズ・ウォー ★★

チャーリー・ウィルソンズ・ウォーチャーリー・ウィルソンズ・ウォー
(2008/10/24)
トム・ハンクスジュリア・ロバーツ

映画の詳細を見る



 「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」は2つの見方ができる。

 ひとつは、「…and then we fucked up the end game」(でも最後でしくじってしまった)の言葉。そして禅の師匠と少年の話の顛末"いずれわかる"という台詞に見えるように、ソ連のアフガン侵攻を、アメリカが水面下で阻止したことが結果として9.11を招いたのだと、内省的に捉える見方。

 もうひとつは、結果として9.11は起きてしまったが、その当時は、それが最善の方法であり人道的にも正しい行いをした。チャーリー・ウィルソンの所属する民主党は、ソ連からの侵攻を阻止したのに対し、最後は共和党の反発によりアフガン復興を拒まれたのだという、免責と共和党批判をしているのだという見方である。

 どちらから眺めても皮肉に満ちた内容であり、エンターテイメント性はあるものの珍しい部類の作品だなと思った。当時の実際の映像を交えたりと、さながら擬似ドキュメンタリーのような場面もあり、過去の世界情勢の動きについて多少なりとも勉強になる。予告編であったような分かり易いコメディや、そこから転じた感動作と期待して鑑賞すると肩透かしを喰らうだろう。

 「神は必ずや邪悪なるものを罰する」難民キャンプでのロング議員の台詞が記憶に残る。その意味をアメリカは10年後知ることになってしまうのだが、例えばアフガン復興を本気で行っていれば、その後、世界はどのようになっていたのだろうか。"fucked up the end game"それを学んだのであれば、今後アメリカはイラクにどのような行動を示すのか、同じ過ちを繰り返してはならない。


■関連作品■
ターミナル ★★★
Mi : 3 ★★★
パンチドランク・ラブ ★★★
ブギーナイツ ★★★★

[ 2008/10/29 00:00 ] 戦争・歴史 | TB(0) | CM(0)

譜めくりの女 ★★★★

譜めくりの女 デラックス版譜めくりの女 デラックス版
(2008/10/24)
カトリーヌ・フロデボラ・フランソワ

映画の詳細を見る



 「ゆりかごを揺らす手」は怖い映画だったな、とふと思い出すことがある。ある女性に復讐するため、ベビーシッターとなりその家族に近づき、じわじわと内側からその女性を追い詰めていくという内容だった。その流れと同様に、「譜めくりの女」はピアノ演奏者のサポート役として、とある女性に近づき、幼少期の苦い体験の仕返しを行うというものだ。

 「ゆりかごを揺らす手」はハリウッド映画だけに、ビジュアル的にも派手な復讐劇へエスカレートするのだが、今作はフランス映画であること、そして芸術家に復讐するだけあって、最後まで地味な展開に落ち着いている。




*****以下、ネタばれ注意*****




 意外なのは、その復讐方法である。譜めくりだけに、大事な演奏会で譜をめくらない、もしくは譜面に何らかの細工をするのだろうという予想。そして肉屋の娘であり、肉を捌く行為に長けているためナイフ等で傷つけるのだろうと予想していた。しかし実際には、カトリーヌ・フロに愛されて立ち去る、息子の腕の筋を痛めつけるという行為に終わる。何十年も想いをかけた割にあっさりだが、その地味さ加減も人間臭くて面白い。交通事故の件も何かあると思わせておいて、綺麗にスルー。散々引っぱってこれかよ、と突っ込みたくなるがその気持ち悪さが、逆に余韻を残した。

 そのような地味な展開でも最後まで興味深く鑑賞できるのは、俳優陣のお陰である。怖い女・メラニーをジュリー・リシャレ(幼少期)、デボラ・フランソワが好演。またピアノ初心者ながら、今作のためにレッスンを重ね、劇中は実際に演奏をしている!!!!カトリーヌ・フロも素晴らしい。若い女性が好きな男性はデボラ・フランソワに見入り、年上が好きな男性がカトリーヌ・フロに見入るほど、両者の動きに惚れぼれしてしまう。

 映画らしい場面といえば、メラニーにわいせつな働きかけをして、チェロのピンで足を刺されたローランだ。爽快なシーンだが、やられた本人でさえ理由を言えない物悲しさ…メラニー・プルヴォスト恐るべし。


ある子供ある子供
(2006/06/23)
ジェレミー・レニエデボラ・ブランソワ

映画の詳細を見る


[ 2008/10/26 00:00 ] サスペンス | TB(0) | CM(2)

ラスベガスをぶっつぶせ ★★

ラスベガスをぶっつぶせ (Blu-ray Disc)ラスベガスをぶっつぶせ (Blu-ray Disc)
(2008/10/22)
ケヴィン・スペイシージム・スタージェス

映画の詳細を見る



 映画を観た後に備忘用として、毎回タイトルをメモしておくのだが今作ほど覚えにくい題名も珍しかった。その理由として1998年にテリー・ギリアム監督、ジョニー・デップ主演の「ラスベガスをやっつけろ」という作品を前に鑑賞したことがあったからだ。その前例があると「ラスベガスを〜」までは、はっきりしているのだがそれ以降の言葉で詰まってしまう。

 今回の映画は「ラスベガスを〜」、「ぶっつぶせ」だったか「やっつけろ」だったか…そう考えだすと「ぶっとばせ」やら「ぶっこわせ」、「ぶちとばせ」など関係のない言葉も登場し、やはり覚えられない。原題が「21」とシンプルなだけに、この邦題は割と内容に即しているのだが…記憶力の無さが嫌になった。それを踏まえると、今作でのブラックジャック勝機の肝、"カードカウンティング"などは絶対に自分には無理だろうなと感じた。

 カードカウンティングは、ブラックジャックプレイヤーにおける一種のテクニックでありカードの「2〜6をローカード +1」「10〜Aをハイカード -1」「その他のカード 0」と瞬時にカウントしていき、プラスの値が高いときに大きく賭ける戦略である。この方法は必勝ではなく、勝利の確率を上げるもので冷静にカウントし、ベットして、潮目が変われば立ち去る堅実的な方法だ。本作はそのカードカウンティングを駆使するため、他のギャンブル映画にありがちな悪い奴との対決、レートを超えた最後の勝負、という見せ場がない。そういう意味では爽快感に欠ける内容となっている。




*****以下、ネタばれ注意*****




 カードカウンティングの取得過程や考察も浅く、ギャンブルのテクニックを楽しむよりも、青春ドラマとしての要素が強い。ストーリーはお約束の大勝→どん底→逆転、女性に惚れ→女性に嫌われ→その女性を取り戻す。物語のセオリーは正しいのだが、実際の出来事が題材になっているせいか、もうひとつパンチがなかった。稼いだお金を天井の裏に隠す、いわゆるタンス預金のシーンで「そんな大金を一箇所に粗末に保管していて大丈夫なのか??」と、余計なところでハラハラしてしまった。


■関連作品■
Mi : 3 ★★★
アサルト13/要塞警察 ★★

[ 2008/10/24 00:00 ] ヒューマンドラマ | TB(0) | CM(2)

賭博黙示録カイジが映画化!?

カイジ―賭博黙示録 (1) (ヤンマガKC (608))カイジ―賭博黙示録 (1) (ヤンマガKC (608))
(1996/09)
福本 伸行

本の詳細を見る



 小さな頃からほとんど漫画を読まずに育ってきたが、現在部屋にある唯一の漫画本が「賭博黙示録カイジ」のシリーズである。時間があれば何度も読み直すくらいに好きな漫画なのだが、つい先日、驚くべきニュースがネットから飛び込んできた。このカイジがなんと実写映画化されるとのことである。

 ネットの記事を読むとエキストラの募集を行っていたらしく、佐藤東弥監督、主演は藤原竜也になるとか…正式な発表ではないので、完全に信じて良い訳ではないが、もし本当であれば素直に嬉しいことだ。「デスノート」「クロサギ」「イキガミ」「ROOKIES」(2009年)など昨今に見れる、漫画の実写映画化への流れの一部になりそうである。


逆境無頼カイジ 1逆境無頼カイジ 1
(2008/01/23)
内田直哉津嘉山正種

DVDの詳細を見る



 「賭博黙示録カイジ」の大筋は、伊藤開司(カイジ)は保証人になっていた友人の借金返済を法外な利息と共に押し付けられ、それが発端となり危ないギャンブルに身を投じていくというものだ。いちカイジファンとして気になるのが、どのギャンブルが映像化されるかである。


■カイジが挑んだギャンブルの数々■

・限定ジャンケン
・鉄骨渡り
・Eカード
・ティッシュ箱クジ
・地下チンチロリン
・パチンコ「沼」


 ネットのエキストラ募集の内容を見ると「限定ジャンケン」は、ほぼ確定のようである。「限定ジャンケン」はカイジが初めて挑んだギャンブルであり面白いのだが、個人的には大好きな「Eカード」編を映像化して欲しい。Eカードのシンプルなルールと利根川との熱いバトルがたまらなく好きで、Eカード欲しさにニンテンドーDSのソフト「逆境無頼カイジDeath or Survival」を買ったほどだ。DSのゲーム自体はあまり面白くなかったが(笑)初回特典で付いてきたEカードに感動。




普段はお気に入りの名刺入れで保管。



漫画通り市民の顔の向きが微妙に異なっているのも嬉しい。



たまに持ち歩いてEカードで勝つための新たな戦略を考えています(笑)


 カイジの魅力は泥臭い人間ドラマとギャンブルに勝利するトリックが、高い次元で融合している点にある。カイジにおいて、ギャンブルはいつも命がけであり、その逆境・絶望の淵のなかで閃くアイディア。憎らしい敵や難攻不落なイカサマを逆手にとり、心理的にテクニカルに逆転する様子が快感なのだ。独特の「ざわざわ」感や心理描写のナレーション、精神世界の映像化をどのようにするのか工夫が必要であり、映画の良し悪しはその辺りで決まりそうである。人間ドラマや緊張感の持続は勿論だが、映画オリジナルの展開やトリックにも期待したい。

 このような原作がある場合に必ず論戦になるのが、映像化して面白いものが出来上がるのかということだ。当然、元の漫画が面白いから映画化されるのであって、賛否あるのは人気シリーズの証拠ともいえる。2009年の映画はとりあえず「007/慰めの報酬」に期待をしていたが、ここにきて「賭博黙示録カイジ」が一気にジャンプアップしてきた。今後もその動向から目が離せない。


逆境無頼カイジ Death or Survival逆境無頼カイジ Death or Survival
(2008/09/25)
Nintendo DS

ゲームの詳細を見る


[ 2008/10/22 00:00 ] 日記 | TB(0) | CM(0)

イーグル・アイ ★★★

イーグル・アイ (Blu-ray Disc)イーグル・アイ (Blu-ray Disc)
(2009/02/13)
シャイア・ラブーフミシェル・モナハン

映画の詳細を見る



 「イーグル・アイ」の感想を尋ねられたら迷わず"詰め込み過ぎの映画"と答えるだろう。スピード感がありアクションも豊富なのだが、様々な要素が絡み合いすぎてよく分からなかった、というのが本音である。

 また作品を観ながら過去の沢山の映画のタイトルが脳裏をよぎった。ストーリーの根幹は「激突」「逃亡者」「エネミー・オブ・アメリカ」「フォーン・ブース」やヒッチコックの作品。ビジュアルイメージは「2001年宇宙の旅」「セブン」「12モンキーズ」などである。つまり今作は色々な映画の良いとこ取りであり"どこかで見たことあるな"との既視感が絶えないのだ。ジャンルもアクション、サスペンス、SFと多岐に跨り、テロへの警戒、監視国家、親子・兄弟間の確執、逃亡者と追跡者などメッセージ性やドラマもぎゅうぎゅうに詰めている印象。満腹感はあるが消化不良に陥った人が大半なのではないだろうか。




*****以下、ネタばれ注意*****




 1番分からないのが主人公の声帯がそこまで重要なのか??という点である。アリアはあそこまで電子機器を駆使できるのだから、ギロチン作戦などの解除を待たずにミサイルを撃てば良いのでは??と思ってしまう。軍事類の操作がギロチン作戦解除以前の、アリアの越権行為にあたるとしても、もっと最短な方法があるはず…あれほどの規模の事象を思い通りに動かせるのに、最終的に声帯が必要というのは説得力に欠ける。



インディ・ジョーンズ/ クリスタル・スカルの王国 スペシャルコレクターズ・エディション【2枚組】 (Blu-ray)インディ・ジョーンズ/ クリスタル・スカルの王国 スペシャルコレクターズ・エディション【2枚組】 (Blu-ray)
(2008/11/07)
ハリソン・フォードケイト・ブランシェット

映画の詳細を見る



 序盤〜中盤までは割と面白いのだが、イーグル・アイ計画が明らかになった後から物語が失速するのは残念だ。大統領殺害の起爆装置がトランペットの内部にあり、ある音に反応して爆発する。それを演出するために楽譜や音符のCGまで用意する可笑しさ。何小説も待たずにさっさと起爆するように仕込んでおけよ、と突っ込みたい。アリアは何にしてもじらし過ぎて、まどろっこしい機械である。

 全体としてアクションシーンは素晴らしく、カメラワークが惜しいものの久々に本気のカーチェイスを観た。トンネル内の無人戦闘機のミサイルも迫力に満ち、空港の貨物室の追走劇は遊園地アトラクション並みに楽しいものである。シャイア・ラブーフとミシェル・モナハンはそつなく役をこなしていたが、難をいえば追手のビリー・ボブ・ソーントンにもうひとつ味付けがあっても良かったと思う。最も印象に残ったのは謎のマサコツアー(笑)


■関連作品■
インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国 ★★★★
ディスタービア ★★
トランスフォーマー ★★★
Mi : 3 ★★★
運命の女 ★★★★

[ 2008/10/20 00:00 ] アクション | TB(0) | CM(8)

パラノイドパーク ★★★

パラノイドパークパラノイドパーク
(2008/09/26)
ゲイブ・ネヴァンステイラー・モンセン

映画の詳細を見る



 「パラノイドパーク」とはスケーターのたまり場の通称のことで、劇中では"自力で違法なパークを造った"との説明もでてくる。主人公のアレックスはそのパークに魅せられ何度か足を運ぶことになるのだが、そこで見るスケーター達の映像が特に印象に残るものであった。自然の風景や街並み、青空を早回しで見せる演出はガス・ヴァン・サントならではのものだが、縦横無尽に走るスケーターを背面から捉えるショットは、今回撮影に参加しているクリストファー・ドイルの影響によるものだろう。




*****以下、ネタばれ注意*****




 ふとした誤りで人を殺してしまったアレックス。時間軸を入れ替えた構成ではあるが、その出来事以降、スケーターの走る姿がどこか悲しいものに見えてくる。出口の塞がれた太いパイプのなかを左右に滑り、狭い空間を何度も往復する様子は、主人公の揺れる心境そのものだ。

 スローモーションで描くガス・ヴァン・サントの世界は美し過ぎるがために、少年の中にある世界、迷いや若者独特の感覚、それらをより際立たせている。アレックスのその後も気にはなるが、それぞれの瞬間の表情、言動や行間を読み取ることが必要とされる物語だ。主人公の何処か冷めた感情は、アメリカの貧困層ではなくミドルアッパーのティーンエイジャーに見られるものなのだろうか。髪型も似ているのだが、今作を観ると「ストーリーテリング」や「リトル・ミス・サンシャイン」のそれぞれの若者の姿を思い起こさせる。

 「エレファント」に続き10代の若者を題材にしたガス・ヴァン・サント監督だが、今作を含めてキャスティングの上手さには毎度、舌を巻いてしまう。

[ 2008/10/17 00:00 ] ヒューマンドラマ | TB(0) | CM(2)

スルース/探偵 ★★

スルース 【探偵】スルース 【探偵】
(2008/09/26)
マイケル・ケインジュード・ロウ

映画の詳細を見る



 「スルース」はこれまで鑑賞してきた映画で、最も登場人物が少なかった作品だ。それまではイーサン・ホークの出演作、「テープ」の3人が最小人数だったが、今作は顔がはっきりと映るという点でいえば2人のみである。推理小説作家の屋敷、密室空間が舞台となるため、通行人などのエキストラも一切登場しない。

 出演する人物が少ないと映画の良し悪しは当然、出演者の演技に左右されるのだが、マイケル・ケインとジュード・ロウの両者共に、なかなか見応えのある立ち振舞いを見せていた。35年前にオリジナル版で若い役を演じていたマイケル・ケインが、今回は中年の作家役を演じているというのは、なんともユニークなことである。




*****以下、ネタばれ注意*****




 夫とその愛人が1人の女性を巡って繰り広げる危険なゲーム。支配と服従、正気と狂気のバランスの入れ替わりが「スルース」の見所である。残念なのはストーリーに、あまり意外性や驚きがないことだ。マイケル・ケインの罠やジュード・ロウの変装は、想定内の事象であり、それを飛び越えるショッキングな展開や、深い狂気の世界を見せても良かった気がする。2人の会話よりもついつい、スタイリッシュなオブジェや部屋の造りばかりに目がいってしまった。

 それにしてもジュード・ロウは影のある、好青年役がよく似合う。演技対決として注目・比較されがちだった2人だが、今回に限ればジュード・ロウが上手に喰らい付いていた、という印象をうけた。


■関連作品■
ダークナイト ★★★★★
バットマン ビギンズ ★★★★
ウェザーマン ★★★
マイ・ブルーベリー・ナイツ ★★
こわれゆく世界の中で ★★★
ホリデイ ★★★

[ 2008/10/15 00:00 ] サスペンス | TB(0) | CM(0)

パリ、恋人たちの2日間 ★★★

パリ、恋人たちの2日間パリ、恋人たちの2日間
(2008/10/08)
ジュリー・デルピーアダム・ゴールドバーグ

映画の詳細を見る



 「パリ、恋人たちの2日間」はジュリー・デルピー初監督作品であり、出演を含め脚本・音楽・製作・編集と映画のほとんどの要素を彼女は担っている。そのことを踏まえ、今作を鑑賞すると「ビフォア・サンセット」のあの面白さは、ジュリー・デルピーの脚本力・台詞選びの巧さにあったということを改めて思い起こさせた。劇中「論争は大好き」という彼女の台詞があったが正にその通りで、ジュリー・デルピーの才能は会話や言葉の裏に、現在社会への皮肉や彼女ならではのユーモアを上手に潜めている点にある。




*****以下、ネタばれ注意*****




 今回もお得意の会話劇に終始し、作品全体ではそれほど大きな起伏はない。様々なシチュエーションのなかで、恋人同士が見せるやりとりを楽しむことに重きが置かれているのだ。自由奔放なフランス出身の彼女と、神経質なアメリカ出身の彼氏。文化や慣習、差別問題や環境問題、セックスに至るまで会話の幅は広く、風光明媚なパリの街並みがそこにあるにも関わらず、自分の理屈を並べる両者の姿が可笑しい。ジュリー・デルピーが怒りっぽい性格で、昔の彼氏に殴りかかる場面は爆笑ものである。

 しかし、仮に彼氏役のアダム・ゴールドバーグがイーサン・ホークだったら…と願ったのは自分だけではないはずだ。「ビフォア・サンセット」のその後、完全に相性の良いカップルだっただけにイーサン・ホークとジュリー・デルピーのショットを今作にも重ねてしまうのである。

 ハリウッドにありがちな、映画らしい劇的な展開や動きのある笑いなどはない。等身大ということが既視感を招き、そしてどこかお洒落でもある。リラックスして鑑賞できるのが嬉しく、用事のない日曜日の午後に観るのにぴったりな一作だ。

 「たとえ毎朝その人のクシャミで起こされても ほかの誰のキスよりも そのクシャミがいとおしい」このような台詞運びが、ジュリー・デルピー特有の巧さだなと感じた。


■関連作品■
恋人までの距離/ビフォア・サンライズ ★★★★★
ビフォア・サンセット ★★★★★
ゾディアック ★★
10日間で男を上手にフル方法 ★★

[ 2008/10/12 00:00 ] ラブコメディ | TB(0) | CM(0)

シューテム・アップ ★★★

シューテム・アップ (Blu-ray Disc)シューテム・アップ (Blu-ray Disc)
(2008/10/08)
クライヴ・オーウェンモニカ・ベルッチ

映画の詳細を見る



 ニンジンにこれほどの用途があるとは…普通に食べてよし、相手の目玉をえぐる武器となり、自分の指の変わりにトリガーを引くことも出来る。って、どんだけ硬いニンジンなんだよ!!と突っ込まずにはいられないが、それだけ「シューテム・アップ」ではそのニンジンが大活躍なのである。

 今作の最大の魅力は「弾丸んねー」のコピーに代表されるように、全てをガンアクションで片付けているということだ。これまでもガンアクションを売りにした映画はいくつか存在していたのだが、意外とアクションシーンが少なかったり、肉弾戦に突入するなど納得のいく作品は少ない。




*****以下、ネタばれ注意*****




 しかし今作では、カーチェイスだろうが、スカイダイブだろうが、出産中だろうが、セックスの途中だろうが(笑)全て銃弾を使用して危機を乗り切っているのだ。その一貫性やこだわりたるや恐れ入るもので、クライヴ・オーウェンとモニカ・ベルッチが裸で抱き合いながら拳銃で敵を倒すシーンは、笑うどころか高貴な潔ささえ感じてしまった。バカに徹するスタイルには感服ものである。


シューテム・アップシューテム・アップ
(2008/10/08)
クライヴ・オーウェンモニカ・ベルッチ

映画の詳細を見る



 おそらく「シューテム・アップ」の監督や製作陣は四六時中、曲芸撃ちや演出について考えていたのではないだろうか。ノンストップでガンアクションが続いても、その場の地形や日常品を利用し、様々な見せ方をするので飽きることはなかった。派手な爆発やCGに依存しすぎない姿勢は素晴らしいものだ。最近観た「ウォンテッド」よりは思い切りがよく、こだわりが感じられるため個人的には今作の方が好きである。

 クライヴ・オーウェン、ポール・ジアマッティ、モニカ・ベルッチというスターを起用するも終始、在って無いようなストーリー。敵が襲う→主人公が危機を乗り切るのループ、バカらしい展開も面白い。大統領候補の議員を悪いとはいえ、ためらいもなく主人公が射殺するなど他の映画ではありえないことである。珍しくアクション映画に出演した、ポール・ジアマッティの変態さ加減も印象的だ。


■関連作品■
トゥモロー・ワールド ★★★
すべてはその朝始まった ★★
レディ・イン・ザ・ウォーター ★

[ 2008/10/10 00:00 ] アクション | TB(0) | CM(0)

NEXT -ネクスト- ★★

NEXT (Blu-ray Disc)NEXT (Blu-ray Disc)
(2008/10/03)
ニコラス・ケイジジュリアン・ムーア

映画の詳細を見る



 「ネクスト」を鑑賞すると、今時のハリウッド映画をまた観てしまったな、という気持ちになる。「トータル・リコール」「マイノリティ・リポート」など、SF要素を盛り込み記憶を題材にすることが多いフィリップ・K・ディックの原作。「007/ダイ・アナザー・デイ」「トリプルX/ネクスト・レベル」など、アクション映画を得意とするものの、実物を使わずCGに頼る傾向のあるリー・タマホリ監督。少し冴えない日々を送るも、ラスベガスが似合うニコラス・ケイジ。神経質なエリート捜査官で毎度、観客をイライラさせるジュリアン・ムーア。セクシー・ショットを用意し視線を釘付けにさせるジェシカ・ビール。

 そのような具合に、本作はそれぞれの人物がその通りのイメージを共有させた集合となっている。良く言えば安定感、最低限は面白い。悪く言えば工夫や新鮮さが無いという印象だ。ある程度の興行収入が見込め、ハリウッドのフランチャイズ化されたお手軽な公式に当てはまる、そんな空気の漂う一作だ。唯一、ピーター・フォークの出演だけは驚いた。




*****以下、ネタばれ注意*****




NEXTNEXT
(2008/10/03)
ニコラス・ケイジジュリアン・ムーア

映画の詳細を見る



 「ネクスト」の最大の問題点は"自分に影響する2分後の未来を予知できる"という基本設定に例外を与えたことだ。運命の女ともいえる、リズという女性に関してはその先の時間も予知することができ、この伏線が最後のどんでん返しを巻き起こす。「未来というのは見るたびに変わる。見た時点の未来だからだ。」この結論には賛否が分かれるだろう。 2分間という制限のなかのジレンマが面白いのであって、遠い先を予知できては何でもありである。中途半端なアクションにせず、知的にサスペンスフルな味付けをしたほうが面白そうではあるのだが...

 前述の通りリー・タマホリ監督のせいなのか、実物で表現できるものをCGを用いて描いているシーンが多い。中盤ではドンキーコングの樽のごとく、崖から色々なものが落ちてくる大掛かりな見せ場が用意されているのだが、CGであるためか迫力に欠けている。あり得ないほどの落下やマトリックス風の弾よけも、それはそれで面白いがB級感は否めない。

 ニコラス・ケイジの能力が自分にもあって、仮に2時間後の未来が予知できたらなんと便利なことだろうか。そうしたら2時間後の自分の表情を察して、「ネクスト」を鑑賞していなかったかもしれない。


■関連作品■
ナショナル・トレジャー/リンカーン暗殺者の日記 ★★
ウェザーマン ★★★
ハンニバル ★★★★
トゥモロー・ワールド ★★★
ステルス ★
トリプルX ネクスト・レベル ★

[ 2008/10/08 00:00 ] アクション | TB(0) | CM(2)

落下の王国 ★★★★

ザ・フォール/落下の王国 (Blu-ray)ザ・フォール/落下の王国 (Blu-ray)
(2009/02/11)
リー・ペイスカティンカ・アンタルー

映画の詳細を見る



 初めて訪れた場所で思わぬ絶景に遭遇すると息を呑み、その景色を凝視することがある。「落下の王国」はその凝視の連続であり、どこでロケを行ったのか、現実世界にこのような場所があるのか、という事実と映像美にひたすら打ちのめされる。

 前回作品「ザ・セル」では、その世界観を表現するためにCGを多用していたターセム監督だが、今回はほとんどCGを使用していない。「ザ・セル」での異常連続殺人犯の脳の中と、今作「落下の王国」での5歳の少女の脳内イメージ。同じような精神世界を題材として選んでいるのだが、監督が望んだ画はおそらくは今作のほうだろう。CGを排除したそのままの世界、雄大な自然や規律のとれた建造物のショットは少女の空想絵巻のイメージそのものであり、テクニカルな構図も絵本の1ページのような温かみを与えるものだった。




*****以下、ネタばれ注意*****




 映像美を売りにした映画は得てして、物語がおざなりになり易い。「ザ・セル」がそうだったように、今作も中盤までは在り来たりな話だと感じていた。しかしラスト、サイレント活劇のスタントシーンの連続、そこでのナレーションで急に物語の角度が変わってくる。現実の映画の映像と、少女の空想ともとれる映像の融合。バスター・キートンのなかにロイは居たのか??居たとしてもそれは事故の前のシーンなのか??アレクサンドリアの語るその後のロイの活躍は勘違いなのか??など様々なことが頭の中を駆け巡った。

 モノクロのサイレント活劇はそれまでの色彩美とはまた違う世界を映し、自分のなかにある新たな感情領域を呼び起こす素晴らしいシークエンスとなった。これはターセム監督が映像だけではなく、物語を完成させようとする作家としての使命を果たした結果ともいえる。今作が放つ強烈なファンタジーこそ現実世界とを乖離させる有効な手段であり、"落ちる"という感覚に近いのかもしれない。


ザ・セルザ・セル
(2007/07/06)
ジェニファー・ロペスヴィンス・ヴォーン

映画の詳細を見る


[ 2008/10/06 00:00 ] SF・ファンタジー | TB(0) | CM(0)

ゴッドファーザー Prat3 ★★★

ゴッドファーザー PartIII <デジタル・リマスター版>ゴッドファーザー PartIII <デジタル・リマスター版>
(2008/10/03)
アンディ・ガルシアダイアン・キートン

映画の詳細を見る



 フランシス・フォード・コッポラ監督曰く、「ゴッドファーザーは1と2で完結しており本作は外伝的な位置付けだ」ということを述べているのだが、正にその通りだと思った。前2作までは100年に1度の傑作と評された格調高いシリーズだったのだが、Part3に関してはその威厳のような風格が伝わってこない。作品の質が落ちてしまった理由として、以下の2つの要因が考えられる。




*****以下、ネタばれ注意*****




 ひとつめは俳優陣の華の無さである。Part2までに多くのキャラクターが死亡したこともあるが、これまでのシリーズに見られた名優達の出演があまりに少ない。ウィノナ・ライダーの代わりに監督の娘、ソフィア・コッポラが出演したことが批判の的になっているが、トム・ヘイゲン(ロバート・デュヴァル)の不在があまりに大きな痛手となっている。彼はビト、マイケルの2人のゴットファーザーの側近であり相談役としてファミリーの重要な人物であった。立場上の重要さもあるが、ゴットファーザーシリーズの雰囲気を台詞だけではなく、しぐさや振る舞いで表現できる数少ない俳優でもある。ギャラの折り合いがつかずに、出演を断念したと言われているが、パラマウントはどのような金額を払ってでも彼を出演させるべきだったと思う。


ゴッドファーザー コッポラ・リストレーション ブルーレイBOX (Blu-ray Disc)ゴッドファーザー コッポラ・リストレーション ブルーレイBOX (Blu-ray Disc)
(2008/10/03)
マーロン・ブランドアル・パチーノ

映画の詳細を見る



 ふたつめは演出の変化である。シリーズの魅力に、数多くの登場人物が見せる会話やかけひきの巧妙さというものがあった。それは派手な見せ場がなくても構築できるものであり、抑えたトーンのなかにある緊張感がシリーズの品を保っていたとも言える。それが今作では、ヘリコプターを使いファミリーのボスを銃殺する。それまでと、あまりに乖離したシーン、普通のマフィア映画に成り下がっていることに違和感を覚えた。画面全体から伝わる明るいコントラストの映像もある種の軽さを感じてしまうものだ。

 ひとえにフランシス・フォード・コッポラ監督が本当はPrat3の企画に乗る気ではなかったこと。80年代に製作した映画が振るわず多額の負債を抱えているため、しかたなく監督したことが今作の出来に直結しているようだ。野心がありスタジオと対立したことが結果として「ゴッドファーザー」を良い方向に導いたが、今回はその情熱に陰りがあり、演出もどこか弱いものであった。


ゴッドファーザー コッポラ・リストレーション DVD BOXゴッドファーザー コッポラ・リストレーション DVD BOX
(2008/10/03)
マーロン・ブランドアル・パチーノ

映画の詳細を見る



 それでもシリーズの完結としてマイケルの贖罪を始めとする数シーンは見応えがある。兄フレドを殺したことを懺悔するものの、最終的には娘のメアリーを失ってしまう。愛する者を守れず泣き叫ぶシーンは、これまでマイケルが見せることのなかった姿だった。大きな後悔と喪失を抱え、独り静かに息をひきとったマイケル。そのラストシーンだけでも今作の意義があったのかもしれない。


■関連作品■
ゴッドファーザー ★★★★★
ヒート ★★★★
オーシャンズ13 ★★★
88ミニッツ ★
ラッキー・ユー ★★★

[ 2008/10/03 00:00 ] ヒューマンドラマ | TB(0) | CM(0)

アイアンマン ★★★






 「アメコミはぴちぴちのタイツ姿のヒーローばかりだ。」という友人の一言にハッとしたことがあった。スパイダーマンしかりスーパーマン、サイクロップス、デアデビル等、たしかに全身タイツ姿が多い。これらおそらくは、全般的にアメリカ人の体型が大きく、筋肉質=強いという発想から由来しているのだと推測する。狩猟民族である米国圏内では、体格や筋肉がそのまま強さの象徴として刷り込まれているのだろう。しかしここにきて、それとは真逆のアメコミヒーロー映画を観ることになる。それが「アイアンマン」だ。

 主人公であるトニー・スタークは巨大軍需企業の社長であり、彼本人に力は無い。しかし知力に長け機械の助けを借りることによりスーパーヒーローへと生まれ変わる。非力でもテクノロジーにより強くなるという展開は正に日本人向けではないだろうか。超合金ロボットを連想させるメタリックな外見や変形(バージョンアップ)の要素が存在するのは、日本人の思うヒーロー像と嗜好が極めて近い。




*****以下、ネタばれ注意*****




 ロボコンやものづくり、半田付けや基盤設計が好きな人にとって劇中のメカニカルな描写にはたまらないものがあっただろう。アイアンマンが誕生する製作過程が綿密に描かれているため、強固なスーツや空を飛ぶ機能等、あり得ない事象ながら現実世界でも少しは真似できるかも…と期待をさせるものばかりである。個人的には網膜スキャンで、人質を盾にした敵だけを複数ロックオンし瞬時に殲滅させたシーンが最高にかっこよかった。







 また「アイアンマン」の良さは、分かり易いストーリーで誰にでも楽しめるエンターテイメントに徹したことだ。5,6年前に映画化されていたら、もしかしたら重く暗い内容になっていたのかもしれない。2008年は「ダークナイト」一色の年となったが、2つのアメコミ映画を比較するのも面白く、両者共に上手に差別化できているなと感じた。暗いヒーロー映画に辟易していたアメコミファンも今回の爽快な色付けは歓迎ものだっただろう。

 テレンス・ハワードを除く、ロバート・ダウニーJr、ジェフ・ブリッジス、グウィネス・パルトロウという最近ヒット作に恵まれなかった俳優陣の見せる、コミカルな演技が今作の成功の要因のひとつだ。今回の出来を観て「アイアンマン2」、そしてその後に続く「アベンジャーズ」がますます楽しみになった。


■関連作品■
インクレディブル・ハルク ★★★
ゾディアック ★★
ラッキー・ユー ★★★
ブレイブ ワン ★★★

[ 2008/10/01 00:00 ] ヒーロー | TB(0) | CM(2)
スポンサードリンク
過去のタイトルを検索
カレンダー
09 | 2008/10 | 11
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -
プロフィール
リンク

各ブログランキングに参加しております。良かったら応援よろしくお願いいたします!!

にほんブログ村 映画ブログへ




★前田有一の超映画批評★
映画通信シネマッシモ
グレートシネマ
映画リンク集-シネマメモ
相互リンク/映画
ピコシアタ

カウンタ