「パリ、恋人たちの2日間」はジュリー・デルピー初監督作品であり、出演を含め脚本・音楽・製作・編集と映画のほとんどの要素を彼女は担っている。そのことを踏まえ、今作を鑑賞すると「ビフォア・サンセット」のあの面白さは、ジュリー・デルピーの脚本力・台詞選びの巧さにあったということを改めて思い起こさせた。劇中「論争は大好き」という彼女の台詞があったが正にその通りで、ジュリー・デルピーの才能は会話や言葉の裏に、現在社会への皮肉や彼女ならではのユーモアを上手に潜めている点にある。
*****以下、ネタばれ注意*****
今回もお得意の会話劇に終始し、作品全体ではそれほど大きな起伏はない。様々なシチュエーションのなかで、恋人同士が見せるやりとりを楽しむことに重きが置かれているのだ。自由奔放なフランス出身の彼女と、神経質なアメリカ出身の彼氏。文化や慣習、差別問題や環境問題、セックスに至るまで会話の幅は広く、風光明媚なパリの街並みがそこにあるにも関わらず、自分の理屈を並べる両者の姿が可笑しい。ジュリー・デルピーが怒りっぽい性格で、昔の彼氏に殴りかかる場面は爆笑ものである。
しかし、仮に彼氏役のアダム・ゴールドバーグがイーサン・ホークだったら…と願ったのは自分だけではないはずだ。「ビフォア・サンセット」のその後、完全に相性の良いカップルだっただけにイーサン・ホークとジュリー・デルピーのショットを今作にも重ねてしまうのである。
ハリウッドにありがちな、映画らしい劇的な展開や動きのある笑いなどはない。等身大ということが既視感を招き、そしてどこかお洒落でもある。リラックスして鑑賞できるのが嬉しく、用事のない日曜日の午後に観るのにぴったりな一作だ。
「たとえ毎朝その人のクシャミで起こされても ほかの誰のキスよりも そのクシャミがいとおしい」このような台詞運びが、ジュリー・デルピー特有の巧さだなと感じた。
■関連作品■
恋人までの距離/ビフォア・サンライズ ★★★★★ビフォア・サンセット ★★★★★ゾディアック ★★10日間で男を上手にフル方法 ★★