マグノリア [DVD]マグノリア [DVD]
(2006/07/19)
ジェレミー・ブラックマントム・クルーズ

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 年末年始の楽しみでもある豪華なテレビ番組の数々。そのなかでも民放の深夜の映画は、映画ファンには特に楽しみなものです。レンタルやケーブルTVでよいのでは??という意見もありますが、地上波には地上波ならではの楽しみ方もあります。昨年のブログの記事と同様に魅力を挙げてみると…

・日本語吹き替えで放送されることが多く、新鮮な感覚で鑑賞できる。
・無料で鑑賞できて気楽。
・地域によって放送される作品が異なる。地方によって優劣が発生!!その地方のセンスが問われる。
・CMが挿入されることで、ローカルのCMを見ることができ自分が帰省しているんだとノスタルジックな気分になれる。
・作品や時間が選べないが故に、思わぬ伏兵映画が登場する可能性。
・こんな時間にこんなつまらない映画が…でも他に観ている人が居るかも、という妙な一体感。

などが挙げられます。以前はアナログ放送で画質も荒かったのですが、地デジに移行してからは、綺麗な画質で鑑賞できるようにもなりました。地方局、ローカルエリアで面白い作品を放送しているようで、以下その結果を紹介します。(昨年同様、眠りながら調べたので誤植等あるかもしれません、多少のミスは御了承ください)


◆対象の期間と時間帯
 12月29日~1月3日までの間、深夜0時以降に放送が開始される映画のみ対象。
◆番組表・内容に関するリサーチ元
 「インターネットテレビガイド」 http://www.tvguide.or.jp/ を利用。放送局名や開始時間はインターネットテレビガイドを参照しています。


バック・トゥ・ザ・フューチャー (ユニバーサル思い出の復刻版DVD)バック・トゥ・ザ・フューチャー (ユニバーサル思い出の復刻版DVD)
(2008/12/19)
マイケル・J・フォックスクリストファー・ロイド

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★バック・トゥ・ザ・フューチャー旋風

 全国的に「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズを扱う局が多く、昼間・深夜を問わずに放送。パート1からパート3まで、1日1作品ずつ放送するケースが多かったです。なかでも、鹿児島などでは元旦から3日にかけて、全て深夜に放送するため途中で帰省できません。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は幅広い年代が楽しめるエンターテイメント作品。正月+こたつ+みかんがぴったりと似合う良い選択だと思いました。ただ個人的には、2009年の動向を踏まえて「ターミネーター」シリーズを放送してほしかったです。年明けて直ぐに「ターミネーター:サラコナー クロニクルズ」がレンタル開始になったり、夏前に「ターミネーター4」が公開されるので、ここで復習しておきたい気分でした。「ターミネーター」は作品によって配給元が変わったりしているので、連続での放送が難しいのかもしれません。


スナッチ [DVD]スナッチ [DVD]
(2005/12/21)
ベネチオ・デル・トロブラッド・ピット

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★年末年始男??ブラッド・ピット

 去年に引き続き、ブラッド・ピットが主演の映画が多く放送される印象がありました。発見できた範囲で挙げてみると…

◇デビル (愛媛県他)
◇セブン (大阪府他)
◇レジェンド・オブ・フォール (富山県他)
◇スナッチ (徳島県他)

年末年始にはブラッド・ピットが観たい!!という声が多いのでしょうか??それとも2009年公開の「ベンジャミン・バトン」や「バーン・アフター・リーディング」を踏まえてでしょうか??「デビル」や「セブン」は07-08年にも放送されていましたし、独特の存在感があります。もし来年末もブラッド・ピット関連をするなら、ある種深夜向けの「ファイト・クラブ」や「12モンキーズ」なども放送してほしいところです。



善き人のためのソナタ (Blu-ray Disc)善き人のためのソナタ (Blu-ray Disc)
(2008/11/26)
セバスチャン・コッホマルティナ・ゲデック

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★他県が羨ましい!!充実のラインナップ

 全国的に放送している映画はほぼ同じですが、地方で微妙に異なる作品もありました。以下、個人的に良いな、面白いなという作品群をセレクトしました。

◇着信アリ、着信アリ2 (三重県他多数)…視聴者が無しなのでは。
◇マグノリア (石川県)…3時間超の作品を放送する意気込みが素晴らしい。
◇ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女 (福井県)…この後に続編をレンタルしたい。
◇夜逃げ屋本舗、夜逃げ屋本舗2 (長野県)…世相を反映したチョイス??
◇ハウルの動く城 (大分県)…年明け早々に宮崎アニメです。
◇善き人のためのソナタ (香川県他多数)…渋いセレクトです。
◇スパイ・キッズ、スパイ・キッズ2 (鹿児県他)…深夜向けではないでしょう!!
◇天国の口、終りの楽園。 (愛知県他)…好きな映画ですが、放送して良いのかドキドキしてしまう。
◇チョコレート (三重県他)…放送して良いのかドキドキしてしまう。ヒース・レジャーが少し出演。
◇タイムマシン (愛知県他)…年明け早々にこけてしまう(笑)
◇シン・シティ (北海道)…激しいバイオレンス描写が深夜向け。
◇麦の穂をゆらす風 (福岡県他)…ヨーロッパ映画が少ないので余計に目立つ。
◇ラブ・アクチュアリー (徳島県他)…クリスマスに放送してよ。

全国を見渡すと色々な映画が揃っていて楽しいです。また福岡県、愛知県、瀬戸内海地域のラインナップが特に充実していたように思いました。1年のなかで数少ない、ゆっくりと過ごせるこの時期。深夜映画で夜更かしをするのも味わい深いものです。


■関連■
☆年末年始の民放深夜映画 全国編☆
☆年末年始の民放深夜映画 福岡・大分編☆


麦の穂をゆらす風 プレミアム・エディション [DVD]麦の穂をゆらす風 プレミアム・エディション [DVD]
(2007/04/25)
キリアン・マーフィーポードリック・ディレーニー

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テーマ:映画関連ネタ
ジャンル:映画
ゴッドファーザー  PARTⅡ<デジタル・リストア版> [Blu-ray]ゴッドファーザー PARTⅡ<デジタル・リストア版> [Blu-ray]
(2010/09/16)
アル・パチーノ、ロバート・デュバル 他

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◆偉大な続編
 およそ100年に渡る映画史のなかで、ビト・コルレオーネほど純粋に愛されたキャラクターはいないだろう。そして、マイケル・コルレオーネほどその悲哀に満ちた人生を、愛せずにいられないキャラクターも他にいないだろう。ビトーとマイケル。偉大な人物を生み出した「ゴットファーザー」はPrat2にて、この2つの生き方が交わることになる。同じシリーズで2度、アカデミー作品賞を獲得した唯一の作品であり、そのことは今作がただの続編ではないことを証明している。


◆2つの時代と2人の俳優
 1917年と1958年の2つの時代。ファミリーの誕生(上昇)と衰退(下降)が交錯し、またそれぞれの時代のゴッドファーザーに注目が集まった。ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノだ。今作で評価されたのは、どちらかといえばアカデミー賞を受賞したロバート・デ・ニーロのほうである。マーロン・ブランドが演じたビトの若かりし頃を、臆することなく堂々と演じており、ゆったりとした素振りや喋り方は大物の風格やオーラを感じさせるものだった。

 ロバート・デ・ニーロも素晴らしかったが、個人的には疲労し、闇へ墜ちていくアル・パチーノの様子が強烈に印象に残った。水を頻繁に飲み、目をタオルで拭い、椅子に深々と腰掛ける。至るところから、マイケルの苦悩と憔悴がにじみ出ており、画面のコントラストも彼のシーンは暗いものが多かった。「この世で唯一確かな事は―人は殺せる」という台詞に「ゴッドファーザー」の冒頭で見せた、爽やかな好青年の面影は無くなっていた。





*****以下、ネタばれ注意*****




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(2008/10/03)
マーロン・ブランドアル・パチーノ

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◆目的と手段
 「ファミリーを守る」という想いは、ビトとマイケル共に同じである。その目的に辿り着くまで、明暗がはっきりと分かれるのだが、どこに違いがあったのだろうか。ビトはファミリーを誕生させたいわば発起人であり、純粋な気持ちで組織を守った人である。本音と建前を上手に使い分け、目の前の損得ではなく長いスパンで物事を考える、伝統を重んじるタイプであった。

 一方のマイケルはファミリーの後を継がざるをえなかった、いわば重責を負わされた後継者である。計算高く冷静な彼は、目的に対しどのような方法を使ってでも最短距離を目指し、その手段を選ばなかった。常に勝ち続ける彼だったが"0か1"、"絶対なる服従か排除"しか存在しない考え方は徐々に孤立を生み出していく。彼の決断により、兄のフレドを殺し、妹の夫を殺し、妹の気持ちは離れ、妻も離れ、最終的にはトムの気持ちも離れていく。決定的なのは母親にも想いが伝わらなかったことである。そのときの「時代が違う」というマイケルの言葉が重くのしかかった。

 温かい空気がファミリーのなかを漂っていたビトの時代とは異なり、マイケルのファミリーでは閉塞感や緊張感に包まれていた。そのマイケルの孤立はラストシーンで見事に表現されている。


ゴッドファーザー コッポラ・リストレーション DVD BOXゴッドファーザー コッポラ・リストレーション DVD BOX
(2008/10/03)
マーロン・ブランドアル・パチーノ

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◆映画史上最高のシーン
 どんな映画でも"見せ場"というものが存在するが、今作のラスト5分ほど素晴らしいシーンはあまりないだろう。ビトの誕生日という設定で回想シーンに移るのだが、ソニー(ジェームズ・カーン)、フレド(ジョン・カザール)、トム(ロバート・デュヴァル )、マイケル(アル・パチーノ)、コニーの主要の登場人物が揃い食卓を囲む場面だ。家族の仲が良かった頃が映し出され嬉しくなる反面、この頃には戻れないのだという哀しみがすぐに押し寄せる。

 このシーンでは短い時間ながら、台詞やしぐさにキャラクターそれぞれの性格が巧みに表現されており、6時間かけて堪能した叙事詩は正にこのシーンのため、この瞬間のために鑑賞してきたのだ、という気分にさせられる。ビトが帰ってきたとのことで部屋を後にする一同と部屋に独り残ったマイケル。周りの人物の気持ちがどちらに傾くか、またファミリーの行く末を示した素晴らしい演出だ。


◆ゴッドファーザーが残したもの
 「ゴッドファーザーPrat2」の公開は1974年。その少し後の1980年代は俳優そのものの魅力よりも、観客の嗜好・マーケティング重視の映画製作へと移行した期間となった。メソッド派の俳優が影を潜め、動きの多い派手な演出の映画が台頭する時代となり、今作で出演した俳優や製作陣の一部も不遇の時を迎えることになる。そのような見地からしても「ゴッドファーザーPrat2」とは、豪華な名優と情熱をもった製作陣が結集した最後の作品であり、最後の抵抗であったのではないだろうか。

 自分の生前の作品だが、これほど画面に対し緊張し、品を感じ、感情を揺さぶられた映画はない。そしてこれから先、ハリウッド映画でこの感情に出会うことはないような気がする。例えそうだとしても、この映画ならば諦めがつくものだ。それほど「ゴッドファーザー」は完璧である。


                                                     (2001/6/15 記)


■関連作品■
ゴッドファーザー ★★★★★
ゴッドファーザー Part3 ★★★
ヒート ★★★★
テーマ:映画感想
ジャンル:映画
ワールド・オブ・ライズ [Blu-ray]ワールド・オブ・ライズ [Blu-ray]
(2010/04/21)
レオナルド・ディカプリオ、ラッセル・クロウ 他

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 「スパイ・ゲーム」と「ワールド・オブ・ライズ」


 中東のテロ組織に潜入し、現地工作員として最前線で動き回るレオナルド・ディカプリオ。そしてアメリカに居ながらにして、子供の世話・家族サービスをしつつ、携帯電話越しに冷酷な指示をだすラッセル・クロウ。行動と命令系統の分離やそれらの位置関係は、ブラッド・ピットとロバート・レッドフォードが共演した「スパイ・ゲーム」を彷彿させるものだ。

 「スパイ・ゲーム」の監督が弟のトニー・スコット、「ワールド・オブ・ライズ」の監督が兄のリドリー・スコット。兄弟揃って同じような題材を扱ったことに不思議な因果を感じさせる。両者のフィルモグラフィーから分かるように、「スパイ・ゲーム」はエンターテイメント色が強く、「ワールド・オブ・ライズ」は硬派で骨太の内容だ。同じ諜報員をテーマにした作品でも、兄弟でどのように色が違うのかを比較するのも面白いだろう。




*****以下、ネタばれ注意*****




 またレオナルド・ディカプリオとラッセル・クロウは、1995年製作の「クイック&デッド」以来の共演とのことで話題となっていたが、本作に限れば登場時間も存在感も圧倒的にディカプリオが上回っていた。「ブラッド・ダイヤモンド」に引き続き、現在の世界情勢を加味したリスクの高いテーマに体を張って挑んでいる。「ディパーテッド」の頃から、極限状況下で理性を保とうとする彼の演技には力がみなぎっており、今作でも随所で鋭い表情を見せていた。脱王子様といったことろか。セレブという生ぬるい看板を捨て、埃と瓦礫にまみれる姿には、映画に対するしたたかな情熱が伝わってくる。


スパイ・ゲーム [DVD]スパイ・ゲーム [DVD]
(2002/07/25)
ロバート・レッドフォード、ブラッド・ピット 他

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 一方のラッセル・クロウは中年太りをし、携帯電話から指示をだすだけの上官に終始している。激しくディカプリオとやり合う様子や、聡明な判断で部下を救い出すシーンなどもあればキャラも立っていたのだが、見せ場に欠ける。それよりはハニを演じたマーク・ストロングの、協力関係にありながら危険な香りを放つ存在感の方が強く残った。ハニのバックグランドでもう1本作品が作れる、と思わせるほど魅力的な人物である。

 アクションシーンは主に前半に用意されており、ヘリと車のチェイスはかなり迫力のあるものだ。同じリドリー・スコット監督の「ブラック・ホーク・ダウン」を観てからは、どんな武器よりRPGが強いと刷り込まれていたが、今作でもRPGがアメリカ軍の脅威になっていたのがユニークに思えた。リドリー・スコット作品にRPGは欠かせない。

 裏切りや嘘など、それぞれの思惑が絡み合い、高い緊張を保ったままラストを迎える。このような情報戦、騙し合いの果てには、ハイテク機器や身分・金も意味がなくなるのか。大切なのは信じる気持ち、信頼できるリレーションシップだ。フェリスは簡単に人を排するホフマンより、気持ちを大切にしたハリを尊重し、結果として救われることになる。帰国してデスクワークの地位に就かず、中東に残る決意をしたフェリスの気持ちも、あながち分からなくはない。


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アメリカン・ギャングスター ★★★
プロヴァンスの贈り物 ★★
ハンニバル ★★★★
ブラッド・ダイアモンド ★★★
ディパーテッド ★★★
テーマ:映画感想
ジャンル:映画
ファニーゲーム [DVD]ファニーゲーム [DVD]
(2009/06/26)
スザンヌ・ローター、ウルリヒ・ミューエ 他

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 嫌悪の固まりのような作品だが、その嫌悪を求めて再度鑑賞したくなる。悪意に満ちた演出も、ある種のエンターテイメントであり、それでこそ映画だと思う。

 映画史最高の後味の悪さとのことで名高い「ファニーゲーム」。「セブンス・コンチネント」をはじめ「ベニーズ・ビデオ」等、ショッキングなシーンを与えると同時に、現代人のマイノリティから湧き出る問題点を鋭く描くのがミヒャエル・ハネケ監督だ。今作もそのような問いかけはありそうだが、救いのない展開はメッセージ性を飛び越えて失笑してしまう。恐怖やタブーを簡単に超えてしまう感覚は正にファニーである。




*****以下、ネタばれ注意*****




 最もインパクトのあるシーンは、子供が銃殺されるという映画界のタブーを侵した場面ではないだろうか。長回しで見せる衝撃の1ショット。やつれた姿、無言・無表情の母親と大声で悲鳴をあげる父親、横たわる子供の死体、地獄絵図である。なによりも犯人の2人組が変に親切であったり、会話が噛み合わなかったり、罪悪感が皆無という点で終始イライラしてしまう。何を考えているのか理解に苦しむ2人組であるがために、いつ爆発するのか読めず、家族と犯人のやりとりは緊張感にあふれていた。

 このような物語を紡いでハネケ監督は何を訴えかけたかったのか??犯人が時間を気にしたり、リモコンで時間を巻き戻したことに象徴されるように、観客の期待(映画の文法を含めた)や現在社会の行く末など、予測不能の事態が起きうるという警告のようにも思える。犯人が画面=観客に向け問いかけるが、「ファニーゲーム」とは観客をも巻き込んだミヒャエル・ハネケ監督からの挑戦ではないだろうか。


■関連作品■
セブンス・コンチネント ★★★★★
ピアニスト ★★★★
隠された記憶 ★★★★
テーマ:映画感想
ジャンル:映画
 2008という数字の並びを見たときに、真っ先に連想するのは「ダークナイト」だ。そのくらい2008年は「ダークナイト」に支配された1年だったと思う。そんな今年を振り返って、2008年中に初めて観た作品のなかから、特に気に入ったベスト3を紹介します。


2008年初めて観た映画でのベスト3

1位 ダークナイト ★★★★★
2位 百万円と苦虫女 ★★★★
3位 落下の王国 ★★★★



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(2008/12/10)
クリスチャン・ベールマイケル・ケイン

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 1位の「ダークナイト」は今年、初鑑賞の映画で唯一の★5の作品。全米ではオープニング記録、歴代興行収入第2位など爆発的なヒットを記録。自分も4回劇場に足を運ぶほど作品の面白さと奥深さにはまってしまった。特にラストのナレーションや、それに併せたカットバックは素晴らしい映画を締め括る、最高の演出である。以下、その台詞を抜粋しました。


Because he's the hero Gotham deserves, but not the one it needs right now.
So we'll hunt him.
Because he can take it.
Because he's not a hero.
He's a silent guardian.
A watchful protector.
A DARK KNIGHT

彼はゴッサムにとって必要な人だ だけど今は"時"が違う
だから追う
だが彼は強い
彼はヒーローじゃない
沈黙の守護者
我々を見守る監視者
暗黒の騎士(ダークナイト)だ




*****以下、ダークナイトに関するネタばれ注意*****




 不覚にも感動してしまったラストシーン。バットマンの例えも「silent guardian」「watchful protector」「DARK KNIGHT」と、どれもかっこいいものばかりだ。

 人々は何故、「ダークナイト」に熱狂したのか??思えば2008年は世界的な金融危機に振り回された1年でもあった。この金融危機の根幹にあるのは「虚を愛する」という現代人特有の心理が働いているのではないだろうか。

 わずかな所得ながら、プール付一戸建ての家をローンで購入できるシステム。その後、利息が一気に跳ね上がり返済できず、そのシステム自体が破綻。実価格が何セントにも満たない石油がWTIの中間介入により何倍にも跳ね上がる異常事態。目先の利益に狂乱し、その後の乱高下で一気に熱を冷まし騒ぎ出す。これが2008年の世界の動きだ。「ダークナイト」内でも同じような動きがあった。

 バットマンの登場によりゴッサムシティは平和を取り戻すが、ジョーカーの介入が逆にバットマンの存在を嫌悪へと移行させる。甘美な希望は少しの綻びで一気に絶望へと移り変わるのだ。ハービー・デントはその現実に落胆し、光の騎士から一気に悪へと墜ちる。バットマンはゴッサムの市民のために、ハービー・デントの罪を被り、虚の希望を与える。バットマンの希望でもあったレイチェルからの気持ちも、アルフレッドによって葬られる。つまり今作の人物のほとんどは偽りの希望により、行動や理性が保たれていることになる。


ダークナイト BATPODプレミアムBOX(2枚組)<初回限定生産>ダークナイト BATPODプレミアムBOX(2枚組)<初回限定生産>
(2008/12/10)
クリスチャン・ベールマイケル・ケイン

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 現代社会とゴッサム市民の翻弄ぶり、これは偶然の一致なのだろうか。アメコミヒーローながら高い評価を得ている今作だが、その根底には「虚を愛する」現代人の深層心理が上手に刷り込まれているように思える。だからこそ、自分の考えを一寸も変えなかったジョーカーが、悪役ながら魅力的に栄えるのだ。大金の上から滑り降り、その金を躊躇なく燃やす、現代人の心理を逆手にとったかのような一連のシーンが非常に印象的である。

 以上のように、極上のエンターテイメントとして楽しむも良し、現在社会とトレースしながらスクリーンを眺めるも良し、2008年に舞い降りた「ダークナイト」という、とんでもないモンスター映画に出会えたことは素直に喜ばしいことだ。


百万円と苦虫女百万円と苦虫女
(2009/01/30)
蒼井優森山未來

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 2位の「百万円と苦虫女」は主人公の鈴子と自分が重なって見え、記憶に残った映画である。福岡のわりと都会の方と、大分のわりと田舎の方に居住したことのある自分にとっては、劇中の地域の描き方やそれらに振り回される鈴子が面白かったのだ。

 情には厚い田舎の人は優しいながらも、偏った価値観によって逆に相手を傷つけてしまったり、淡白に思える都会の人の方が実は懐が広かったりと…現在のリアルな地域間ギャップの塩梅が上手い。100万円貯まったら引越しをして新しい場所で暮らす鈴子。人から傷つけられるのを恐れ、そのせいで相手の気持ちの深い部分まで干渉しない、当たり障りのない生き方は正に現代の若者の姿であり、自分にとっても耳が痛い描写の連続だった。今作の続編が観たいな、と渇望するほど佐藤鈴子というキャラクター、作品の空気全体が魅力にあふれていた。


ザ・フォール/落下の王国 (Blu-ray)ザ・フォール/落下の王国 (Blu-ray)
(2009/02/11)
リー・ペイスカティンカ・アンタルー

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 3位「落下の王国」は邦題"落下の王国"という文字の並びや言葉の響きが好きだった。映像美が注目される作品ながらオープニングとエピローグに流れたモノクロ映像こそ、物語のバランスを熟慮した素晴らしいシーンだと思う。DVDかブルーレイでのリリースが待ち遠しいが、大きなスクリーンで堪能して欲しい映画だ。この世界に、あのような景観が存在していることが未だに信じられない。絶景の連続である。


☆2008年その他のお勧め映画
・ノーカントリー ★★★★
・やわらかい手 ★★★
・ファーストフード・ネイション ★★★
・譜めくりの女 ★★★★


☆2008年トホホ映画
・恋空 ★
・スポーツキル ★
・ハンコック ★
・X-ファイル/真実を求めて ★


☆2009年 期待の映画
・映画版「カイジ」
・スラムドッグ・ミリオネア
・パブリック・エネミーズ
・ライチャス・キル
・バーン・アフター・リーディング
・アバター
・007/慰めの報酬
・トランスフォーマー/リベンジ
・ターミネーター4

 上記のなかでも「劇場版カイジ」は原作の漫画大好きなだけに、期待と不安が入り交じる。男だらけの世界ながら天海祐希の存在がカイジの世界にどのような色をつけるのか、また利根川幸雄を演じる香川照之の演技も楽しみである。また、現在最も期待しているのが「スラムドッグ・ミリオネア」。2009年も映画が楽しみである。


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☆ 2007年中に観た映画ベスト3 ☆
ダークナイトに続編があるとしたら…??
賭博黙示録カイジの映画化!?
テーマ:映画関連ネタ
ジャンル:映画
遊星からの物体X 【ユニバーサル・Blu-ray disk 第1弾】遊星からの物体X 【ユニバーサル・Blu-ray disk 第1弾】
(2008/12/19)
カート・ラッセルA・ウィルフォード・ブリムリー

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極限の緊張感、終わりの見えないババ抜き。


 「ベン、ベベン…ベン、ベベン…」 極寒と静寂のなか、迫りくる恐怖を表現したエンニオ・モリコーネのスコアが耳に残る。B級・カルト映画の請負人、ジョン・カーペンター監督の最高傑作として評されているのが「遊星からの物体X」だ。1982年製作とは思えない、奇妙で精巧なクリチャー描写に加え、閉ざされた空間で見せる人間模様・ドラマ性の高さが人気の決定打となっている。




*****以下、ネタばれ注意*****




 今作に登場する未知の生命体"いきもの"は他の生物の細胞を乗っ取り、擬態できることが特徴で、普通の人間に見える人物が実は既に同化している、という設定が面白い。仲間内に潜む敵へのストレスと寒さ密閉された状態の2つのストレスに追い込まれていく展開は、鑑賞者をも巻き込んだ、終わりの見えないババ抜きゲームのようである。互いが疑心暗鬼に陥ったなかでの血液検査は最高の緊張感を生み、劇中でも1番の見所として今でも語り草となっているシーンだ。

 未知の"いきもの"に対して基地を全破壊するという究極の方法で戦ったカート・ラッセル。そのすさまじい爆発の後の興奮と達成、そして絶望感が重なったラストが素晴らしい。
「じゃあ…何をする?」
「見るんだな ここで待って…どうなるか」
生き残った2人の少しの安堵と、そこから湧き上がる恐怖と絶望のラストカットであり、そこに前述のモリコーネのスコアが重なり更なる憶測を深めていく。

 B級映画を連想させる題名ではあるが、南極基地のセットや爆発シーンの迫力はA級もので、現在の映画として観ても全く遜色はない。むしろロブ・ボッティが創造したクリチャーの造形や動きはCG技術では到達できない恐怖を感じさせる。

 唯一、冒頭のノルウェー人が手榴弾を誤爆させたシーンだけはB級らしいエッセンスだ。手が滑って自分が乗って来たヘリコプターを爆発させるのは反則級の笑えるシーンである。


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アサルト13/要塞警察 ★★
デス・プルーフ in グラインドハウス ★★★
テーマ:映画感想
ジャンル:映画
SUPERMARKET FANTASY [通常盤]SUPERMARKET FANTASY [通常盤]
(2008/12/10)
Mr.Children

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 「SUPERMARKET FANTASY」のジャケットを初めて見たときに、本当にミスチルのアルバムだろうか??一瞬、疑ってしまった。ピンクをベースにした色調と前面でキスを交わすカップル、それまでのジャケットとかけ離れてあまりにカラフルだったからだ。

 そのジャケットの世界観を表現しているのが今回のアルバムのリード曲でもある「エソラ」。そのPVではスーパーマーケットの棚に陳列された鮮やかな商品パッケージが、虹のように重なり極彩色の帯を創りだしている。この極彩色が横に連なるイメージ、どこかで見たことがある…と5日間くらい考え込んで、6日目にようやく思い出した。映画「パンチドランク・ラブ」だ。

 映画のなかではこの虹の帯を、恋愛におちた瞬間の脳内に流れるといわれる、β-エンドルフィンやフェニルエチルアミンを表しているかのような使い方をしていた。「パンチドランク・ラブ」のジャケットも男女の立ち位置が逆としても主演の2人がキスをしているもの。「SUPERMARKET FANTASY」で女性が浮いている様子も、エミリー・ワトソンがハイヒールの片足を少し上げた仕草に見えなくもない。そういえば「パンチドランク・ラブ」はプリンを買ってマイレージを貯める男の話。プリンを買い漁るシーンでスーパーマーケットを物色しているアダム・サンドラーの姿を思い出した。


パンチドランク・ラブ DTSエディション [DVD]パンチドランク・ラブ DTSエディション [DVD]
(2005/07/06)
アダム・サンドラーエミリー・ワトソン

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 この一致に気付いたことが妙に嬉しくなり、「パンチドランク・ラブ」のエンドロールに「エソラ」が流れたどうだろうか??などと想像を膨らませたり...そのようなカラフルなイメージの強い「SUPERMARKET FANTASY」気に入ったフレーズ、歌詞を抜粋してみました。



評論家の指摘なんか気になんないくらい
インパクトこそないけど良い映画だったなぁ
ちょっぴり泣いてたろう? 気が付いてたんだよ
僕にしたって そうよ


さぁ 油断して渡ろう 慢心して進もう
文明の恩恵の上を


蒼白き瞳の焔で
その危なっかしい足元を照らし出せ
道は続いてる
そう続いてくんだ


                01. 終末のコンフィデンスソング



君はどんな顔して聞いてたの?
甘く切なく胸を焦がす響き


メロディーラインが放ったカラフルな魔法のフレーズ


忘れない為に
記憶から消す為に



                03. エソラ



人それぞれの価値観 幸せ 生き方がある
「他人の気持ちになって考えろ」 と言われてはきたけど
想像を超えて 心は理解しがたいもの


僕らは許し合う力も持って産まれてるよ
ひとまず そういうことにしておこう
それが人間の良いとこ



                07. 口がすべって



「さよなら」を選んだ君はおそらく正しい


想い出の中に心を浸して


                08. 水上バス



人恋しさをメロディーにした
口笛を風が運んでいったら


                14. 花の匂い




Mr.Children “HOME” TOUR 2007~in the field~Mr.Children “HOME” TOUR 2007~in the field~
(2008/08/06)
Mr.Children

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 「終末のコンフィデンスソング」が良すぎて、アルバムを買った帰り道はずっとトラック1をリピート。こんなタイアップだらけのアルバムの1番目の曲に、変化球を投げ込むMr.Childrenがやっぱり好きだなと実感した。「シフクノオト」の「言わせてみてぇもんだ」のポジションに似ている気がする。大多数が「PADDLE」が良いと言っていた時にひっそりと「言わせてみてぇもんだ」を聴き込んでいた自分。今回も「エソラ」や「少年」が良い、というなかでも「終末のコンフィデンスソング」を臆せずに推していきたい(笑)丁寧過ぎない、熱いメロディーと熱い歌詞に誘われて、何度でも「終末のコンフィデンスソング」をリピートしてしまう。「終末のコンフィデンスソング」があんまり…という人は、「そう続いてくんだ」の箇所を注意して聴くと好きになるかも??桜井さんの声がキュートすぎる(笑)

 「SUPERMARKET FANTASY」の収録曲を中心とした「Mr.Children Tour 2009 ~終末のコンフィデンスソングス~」のセットリストも気になるところ。「one two three」は今回の雰囲気に合いそうだが、「SUNRISE」はスルーかな??いつかツアーで「SUNRISE」は歌ってほしい。「花の匂い」に絡めて「シーラカンス」「ゆりかごのある丘から」「深海」を入れると独特の流れになるが、さすがにそれはなさそうだ。Mr.Childrenの2009年の活動と併せて、どのようなツアーになるのか大いに期待したい。


01.終末のコンフィデンスソング
02.HANABI
03.エソラ
04.声
05.少年
06.旅立ちの唄
07.口がすべって
08.水上バス
09.東京
10.ロックンロール
11.羊、吠える
12.風と星とメビウスの輪
13.GIFT
14.花の匂い


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Mr.Children/Split The Difference [DVD]Mr.Children/Split The Difference [DVD]
(2010/11/10)
Mr.Children

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ジャンル:音楽
ダークナイト BATPODプレミアムBOX(2枚組)<初回限定生産>ダークナイト BATPODプレミアムBOX(2枚組)<初回限定生産>
(2008/12/10)
クリスチャン・ベールマイケル・ケイン

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2000年代を代表するアクション映画


 アクション映画というジャンルに限定して、その映画史を西暦の10年単位で区切った場合、1980年代には「インディ・ジョーンズ」「コマンドー」「ダイ・ハード」、1990年代には「ターミネーター2」「ザ・ロック」のように、それぞれの時代を代表する多くの傑作が存在していた。しかし2000年以降、これらの作品群に迫るアクション映画がはたして存在しただろうか。「スター・ウォーズ」の新シリーズや「マトリックス」シリーズなど新世代を予感させる映画はあったものの、前述の作品の興奮には届いていない気がしていた。

 昨今のCG技術の発展によって描かれた空想空間も悪くはないのだが、そこに目が行き過ぎてもうひとつ感情の領域に踏み込めない部分があったのだ。自分自身が色々な映画を観すぎたせいか、年齢を重ねアクション映画に感動できなくなったのか、などとも思っていた。そんなとき、昔感じたあの興奮を思い起こさせた作品こそが「ダークナイト」である。2008年7月現在、既に数々の全米興行収入の記録を塗り替えているが、評価から見ても2008年を象徴する作品であり、また2000年代をも代表するアクション映画になるのではないだろうか。

 アメコミヒーローとはいえ勧善懲悪という見地を鈍らせる、複雑で奥深いストーリーと激しいアクションの連続。その「ダークナイト」の魅力をいくつか挙げてみた。




*****以下、ネタばれ注意*****




ダークナイト BATPODプレミアムBOX(2枚組) (初回限定生産)ダークナイト BATPODプレミアムBOX(2枚組) (初回限定生産)
(2008/12/10)
クリスチャン・ベールマイケル・ケイン

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◆狂気のジョーカーと2人の騎士

 「バットマン ビギンズ」の続編にジョーカーが登場し、その役をヒース・レジャーが演じるということを耳にしたときに、それは絶対に辞めた方がよいと思っていた。コミックのなかでも特に人気のある悪役だが、89年の「バットマン」の際にジャック・ニコルソンが見事に演じている過去があったからだ。しかし、ダークナイト版ジョーカーのスナップ写真や予告編が公開され始めると、その想いが間違いだったことに気付かされる。

 高層ビルの闇間にすっと降り立つシルエット、「Let's put a smile on that face」(口が裂けるほど笑わせてやる)など台詞のひとつひとつに圧倒され、甲高い笑い声に心が凍りついた。ジャック・ニコルソンのコミカルなジョーカーとはまた一味違うもので、その振る舞いは狂気そのもの。ヒース・レジャーの異常なまでのキャラクターへの入れ込みが新たなジョーカーを生み出し、結果としてそれが「ダークナイト」の世界観と成功を決定付けたといえる。

 また、バットマン"暗黒の騎士"をクリスチャン・ベール、ハービー・デント検事"光の騎士"をアーロン・エッカートがそれぞれ好演。バットマン、ジョーカー、ハービー・デント(トゥー・フェイス)の3者の主張がぶつかり合い、交錯する。素晴らしいキャラクター達が見せる躍動は、高い緊張感を保持したまま物語の最後まで疾走していた。


ダーク・ナイトダーク・ナイト
(2008/07/23)
サントラ

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◆難度の高いアクションシーンの創造

 アクション映画のなかで、チェイスシーンと爆発シーンが見所としてピックアップされることが多い。今作ではこれら2つを非常に難度の高い次元で表現している。

 チェイスシーンでは、バットモービルからバットポッドが登場した瞬間に座席に前のめりになって叫びそうになったほどだ。ジョーカーは護送トラックに向けロケット弾を放ち、ヘリコプターは墜落、大型トラックは横転ならぬ縦転、そのなかバットポッドはゴッサムシティを駆け巡る。スピード感と激しい攻撃の応酬は劇中で最もテンションの上がるシークエンスだった。

 爆発シーンは近年稀に見る量であり、それぞれの爆破の規模が大きく驚いた。過去に「ダイ・ハード」におけるナカトミビル爆破、「ターミネーター2」でのサイバーダイン社の爆破などアクション映画を彩る名シーンが存在したが、今回の総合病院の爆破シーンはそれに並ぶとも劣らない見事なものである。

 爆発の直前に起爆装置を連打するナース姿のジョーカーも面白く、少し間を空けた後の崩壊ぶりが素晴らしい。最近は建物や爆風をCGで補完することが目に付くが、今作は"本当にやってしまったね"と匂わせる思い切りの良さが気持ちいい。勿論、VFXも使用しているだろうが、それを感じさせないリアル志向と空撮の多用で空前絶後の破壊を表現していた。


◆バットマンからダークナイトへ

 前作「バットマン ビギンズ」はバットマンの誕生を描いたものだったが、彼の立場や存在する意義を見据えた場合、今作こそが本当の誕生物語だったのではないだろうか。

 バットマンの力というものは、相手に恐怖心を植えつけるところにあった。しかしジョーカーという新たな脅威は、お金や地位といったものに興味はなく、混乱を招くことが目的のアナーキストであり恐怖を伝えることはできない。それどころか恐怖を利用し、ハービー・デントや市民を狂気に染める様子はバットマンのそれと紙一重であり、2人は似た者同士なのである。相手がいるからお互いが存在する。この因果関係が正義心を歪め、更なる不安を煽っていた。

 またバットマン自身が正体を明かさなかったことが、レイチェルの死、そしてトゥー・フェイスの誕生に繋がってしまい、またもや彼の正義というのが危うくなっていく。唯一、救いだったのはフェリーの爆破がストップされたことだ。バットマンはその市民の行動に微かながら希望を見い出し、トゥー・フェイスの罪を被ることを決意する。

 法で相手を裁き、正しく表に立った光の騎士ではなく、誰からも称賛されず、誰とも交われない存在。暗黒の騎士=ダークナイトとなり走り去るその姿に感動さえ覚えた。それにしても、なんとも暗く哀しいストーリーだろうか。レイチェルの心が離れそして殺され、ハービー・デントを失いトゥー・フェイスを殺害、フォックス(モーガン・フリーマン)に見離され、市民からは憎しみを受け警察に追われる。沈黙の使者を貫き、光の騎士を称えつつ自らは闇に消える。これこそバットマン独特の魅力・美学であり本当の意味での誕生だと思う。


The Dark Knight: Featuring Production Art and Full Shooting ScriptThe Dark Knight: Featuring Production Art and Full Shooting Script
(2008/07/22)
Craig Byrne

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 これほど濃密な映画を築き上げたクリストファー・ノーラン監督だが、脚本として常に監督のバックアップをしているジョナサン・ノーランの功績も大きいだろう。ノーラン兄弟の代表作は「メメント」だったが、「ダークナイト」はそれを塗り替える可能性もある、恐ろしいパワーを秘めた映画だ。


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アメリカン・サイコ ―デジタル・レストア・バージョン― [Blu-ray]アメリカン・サイコ ―デジタル・レストア・バージョン― [Blu-ray]
(2011/06/24)
クリスチャン・ベイル、クロエ・セヴィニー 他

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 こんなクリスチャン・ベールは見たことがない!!全裸でチェンソーを持って走る姿に、バットマンのブルース・ウェインの面影は全く無かった。舞台は1980年代後半のアメリカ。27歳の超エリート証券マンの過度なトレンド志向や物欲主義、そして精神に潜む危うい一面に迫るのが「アメリカン・サイコ」である。




*****以下、ネタばれ注意*****




 主人公のパトリック・ベイトマンは、流行の料理店に赴き、高級スピーカーで音楽を聴き、洗顔剤ひとつにも徹底したこだわりを見せ完璧なライフスタイルを求める。アメリカが舞台なので細かなトレンドは分からないが、日本人の思考と合致する部分もありブラックな笑いを誘う。

 本作で1番ユニークなのは名刺を自慢しあうシーンだ。紙の色と文字のフォントを言い合い、自分の名刺の優位さを競う。名刺勝負でライバルに負け、冷や汗を掻きながら震える姿がなんとも滑稽だ。前述のように全裸でチェンソーを操つる様子や、娼婦と3人でセックスをしてその合間に鏡越しに自分の筋肉をアピールするなど、クリスチャン・ベールの体を張った意外な演技が強烈に印象に残る。

 残念なのはそのような面白さがあるにも関わらず、もうひとつ伝わってくるものがなかった点である。現代風刺劇として、もっと深く身に迫る恐怖や、現代人特有の空虚感を表現してほしかった。劇中では「90年代末までに日本人が米国を買う」という台詞がある、当時の日本はバブル景気の真っ只中。そんな台詞も過去のものだと冷静に突っ込みを入れた自分が悲しくなった。


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ダークナイト ★★★★★
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ホットファズ -俺たちスーパーポリスメン!- [Blu-ray]ホットファズ -俺たちスーパーポリスメン!- [Blu-ray]
(2012/06/20)
サイモン・ペッグ、ニック・フロスト 他

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 「ホットファズ/俺たちスーパーポリスメン!」はインターネット上の署名運動により日本での上映が決まった話題作だ。基本はコメディなのだが、アクション、スプラッター、サスペンス、ヒューマンドラマ等、様々なジャンルを含めた内容となっており、素早いカット割と編集で最後まで走り抜ける爽快ポリスストーリーなのである。




*****以下、ネタばれ注意*****




 練り込まれたストーリー展開は見事で、思い起こすと今作は伏線だらけ、無駄なカットが全くないのが印象的だ。ぼーっとリラックスして鑑賞していたら、どんでん返しが炸裂する巧妙な構成についつい見入ってしまっていた。

 警察ものとしてガンアクションがいつ観れるのか楽しみにしていたら、溜めに溜めてラストでそれが開花する。街中で老人相手に繰り広げるガンファイトは爆笑もの。お爺ちゃんお婆ちゃんがショットガンをぶっ放す様、機敏な動きが異常に面白かった。

 キャラクターでは主人公の相棒、ダニーの映画マニアぶりが可笑しく、好きな映画と本編との連動など見せ場は多い。ピーター・ジャクソン監督の出演は気付かなかったが、ケイト・ブランシェットが出演していたのは嬉しく、短い時間のカメオ出演ながら華麗なオーラを放っている。他にもビル・ナイや007のティモシー・ダルトンなど英国らしい??独特のキャスティングも新鮮だ。

 ハリウッドでもヒットした「ホット・ファズ」。英国コメディのツボ、本作の特長とはなにか分析しなければならないが、ガイ・リッチーの作品にあるような、素早いカットがとりあえずは特色ではないかと思う。ブリティッシュ・コメディなる風潮。コメディ映画界の新たな流れを作るのか今後も注目していきたい。


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天国の口、終りの楽園。 [DVD]天国の口、終りの楽園。 [DVD]
(2003/03/28)
ガエル・ガルシア・ベルナルマリベル・ベルドゥ

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*****以下、ネタばれ注意*****




 序盤から性的な描写が多く、大胆なシーンの連続に驚く。物語の途中、プールサイドで自慰行為をする場面があり、射精したあとのものが水面に落ち、沈んでいく画が印象的に残った。酸素に触れると死んでしまう精子は、生命の根源から死への一瞬の変化を示し、今作の訴える儚さを表現しているようだ。

 「天国の口、終りの楽園。」では、セックス、ドラック、アルコールと、感情が高揚しやすい要素や悦楽を多く描くことと同時に、事故・墓・病気と"死"を連想させる要素も描いていた。若い2人フリオとテノッチ、そして人妻のルイサは、幻の海岸を目指しながら様々な悦に走る。しかしその合間でふと我に返る瞬間があった。車のなかでの生の確執と車の窓から眺める死。興奮から冷静へ、2つの感覚は常に隣り合わせであり、ルイサの生の残り時間と、フリオとテノッチが少年から大人になることへの変化を静かに暗喩していた。

 物語としては単純極まりなく、驚くような展開も少ない。しかし、ただのロードムービーとは言えない不思議な魅力に惹かれる作品であり、「もう会うこともない」という哀しいナレーションが鑑賞後も胸に響く。


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デス・レース [Blu-ray]デス・レース [Blu-ray]
(2009/04/24)
ジェイソン・ステイサム、ナタリー・マルティネス 他

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 今作は1975年製作のカルトムービー、「デスレース2000」のリメイク作品だ。製作にロジャー・コーマンが関わっていたり、フランケンやマシンガン・ジョーが登場するなど、共通項はあるのだが75年版と今作は別物と切り離して考えた方が良い。

 1番の違いは公道でのレースが刑務所内でのラップレースに変わったことである。これにより通行人を轢き殺すとポイントが加算されるという、デスレース最大の悪趣味な見せ場がなくなり、普通のクラッシュレースになっているのだ。無論、現在の社会状況を鑑みるとそのような演出は御法度かもしれないが、それならばデスレースという冠を外したほうがまだ良い気がする。また軽妙でブラックなユーモアが少なく、妻殺害の真犯人探しや娘を取り戻す父として、物語が順当にまとまっているのも、カルトの味付けを求めるファンとしてはどこか物足りない。

 「デス・レース」の監督は「バイオハザード」でメガホンをとったポール・W・Sアンダーソン。ゲームを映画化した実績があるせいか、今作の演出もゲームっぽい。特に、地面にあるパネルの上を通過すると機関銃や防具が使用できるようになる流れは、SFC版「マリオカート」の発想そのものである。ポール・W・Sアンダーソン監督はSFC版マリオカートファンに違いないと勝手に断定。しかも使用できるアイテムがオイル・煙・巻きびしなど2008年製作の映画とは思えない、昔ながらのチープな小道具に苦笑してしまう。




*****以下、ネタばれ注意*****




 カークラッシュシーンの迫力は凄まじく、CG全盛期にこれほど重量感のある見せ場は久しぶりだった。所長が密かに製作した"戦艦"なる改造タンクローリーの最期はアドレナリン全開のぶっ飛び方。今時の映画らしい手振れを多用したカメラワークは位置関係が把握しにくいなど個人的には駄目だった。

 ラストにはお約束ともいえる所長の爆死。憎き所長へのオチは好きだが、全編にあのような笑いが点在すると本家に迫る、素晴らしい作品に化けていたのではないだろうか。B級アクション映画、請負人となっているジェイソン・ステイサムの今後の活躍にも期待したい。


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