ブラインドネス [Blu-ray]ブラインドネス [Blu-ray]
(2009/04/03)
木村佳乃ガエル・ガルシア・ベルナル

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 「ブラインドネス」を劇場で観ていたら、途中で退席した人が何人かいた。そしてエンドロールを迎えた瞬間には、多くの人が席から立ち上がり、一目散に出口に向かって列を作っていた。その場のほとんどの人が「こんなはずではなかった」と思っていたに違いない。それも分かる気がする。




*****以下、ネタばれ注意*****




 本作の予告を観ると、世界中の人々の目が見えなくなり、ジュリアン・ムーアだけ1人だけが目が見える。その原因を究明することや、人々を救済する方法を彼女が見つけていく、ということを連想させる内容だった。しかし実際は、目が見えなくなった原因も分からず、彼女1人だけが感染しなかった理由も不明。スケールの大きな話と思いきや、物語のほとんどは隔離施設での出来事。彼女が全人類に影響を及ぼすのではなく、特定のグループに影響を与えたにすぎない。劇場を足早に横切りながら壁にあったポスターの"全世界、失明"というキャッチコピーが"全世界、失望"に見えた。

 前述のようにヒーローを誕生させる映画、「アイア・ム・レジェンド」のような脚色にならなかったのは、原作の「白の闇」に細心の敬意をはらったことと、今作にハリウッド資本が介入していなかったからだろうか。多国籍、性別や年齢を分散させた設定もブラジル・カナダ・日本合作らしい特色である。都市機能が麻痺している景観のシーンは圧巻であり、この辺りはハリウッド映画に負けていないなと感心した。


ブラインドネス スペシャル・エディション(初回限定生産2枚組) [DVD]ブラインドネス スペシャル・エディション(初回限定生産2枚組) [DVD]
(2009/04/03)
ジュリアン・ムーアマーク・ラファロ

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 「ブラインドネス」が描きたかったのは、人間の本性、組織・システム・ヒエラルキー、秩序の崩壊などである。人間ドラマに重きを置いたのは良いのだが、ラストを迎えても感情に訴えるものがあまりない。おそらくは、ジュリアン・ムーアの行動や考えが理解し難いものであったせいではないだろうか。唯一目が見える人物、且つ、メンタルが強いように映った彼女が、ガエル・ガルシア・ベルナルの脅威に立ち向かうタイミングが遅いように感じられるのだ。

 「シティ・オブ・ゴッド」ではエンターテイメントと人間ドラマを上手に融合していたフェルナンド・メイレレス監督だけに、今作の出来はいささか残念である。


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ベン・スティラーと波長が合うかどうか


 「トロピック・サンダー/史上最低の作戦」はベン・スティラーが製作・原案・脚本・監督・主演の一人5役を担当した意欲作だ。彼の交友関係の広さからか、ロバート・ダウニー・Jr、ジャック・ブラック、その他、大人数のカメオ出演により、主役級の俳優がそこらかしこに登場している。意外な人が意外な役で出演しているので、驚くこと間違いなしだ。

 今作が楽しめるかどうかはアメリカ文化特有の笑い、ベン・スティラーの目指す笑いとツボが合うかどうかに左右される。オースティンパワーズが日本で流行らないように、下品な言葉の応酬や、際どい残酷な描写はもしかしたら日本人向けではないかもしれない。オースティンパワーズが好き、もしくは「プラトーン」「地獄の黙示録」などハリウッドの戦争映画が好きな人であれば今作は面白く感じられ、駄目な人はあまり笑えない内容だろう。




*****以下、ネタばれ注意*****




 映画の撮影だと思っていたら、実は本物の戦場だった…実弾に焦りまくって右往左往する。このようなシンプルなプロットと思いきや、微妙に感動があったり。ベン・スティラーとその他4人に分かれて行動しはじめた辺りから勢いがなくなったように感じた。俳優としての苦悩・復活、友情など、それまでの伏線を回収し大円団となるが、そのせいか後半は笑いが薄い。個人的には冒頭のナパーム爆破撮影の失敗と、監督が地雷で瞬殺した場面が最高潮だった。出演者のなかでは頑固一徹なロバート・ダウニー・Jrの熱演が光り、そしてブランドン・T・ジャクソンの役名が"アルパ・チーノ"というのが面白かった。トム・クルーズのダンスも忘れ難い。

 前述のように他の映画へのオマージュや、台詞のなかに映画業界への皮肉が混じっているのは興味深い。コメディ映画を中心に活動している、ベン・スティラーの不満が、さり気に込められているようだ。



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(2009/04/02)
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テレビシリーズでの1エピソードの質にも及ばない


 Xファイルシリーズは、超常現象をテーマとした1話完結のエピソードと、UFO・入植・政府の陰謀等を描き第1シーズンから連続した物語になっている、いわゆる"神話"と呼ばれるエピソードの2つに分類することができる。劇場版1作目では主要キャストを総動員した、スケールの大きな神話系の話を展開したが、今作では超常現象を扱っており、正に原点回帰とも言える物語になっていた。

 失踪した女性と、その解決の糸口となる神父のジョー。彼の透視能力に関して肯定するモルダーと否定するスカリーの対立。これこそシリーズ伝統・定番の型なのだが…観終わってもなお、「真実を求めて」の出来はテレビエピソードの質から遠く及ばない位置に存在している気がしてならなかった。以下、その理由を挙げてみる。




*****以下、ネタばれ注意*****




1.モルダーとスカリーの共同捜査が無い
 上述のようにモルダーとスカリーの対立関係はあるものの、共に肩を並べて捜査をするシーンが極端に少ないのは残念だ。FBIを辞め物理的に距離が離れている場面が多いせいか、協力して事件を解決したようには思えない。

2.犯人の動機や背後の組織についての分かりにくさ
 犯人は女性を立て続けに誘拐し、中盤でそれが臓器売買目的の犯行だとミスディレクションを誘っていた。しかし終盤になると、いつの間にか実験用・さらには仲間を助けるための代用の身体を求めていたような描写へと移っていき、その辺りの意味がよく分からなかった。最初から実験のために人をさらったのか?仲間を助けるためなのか?さらには延命をしてまで、その男を生かす意味はなんだったのか?犯人の動機や背後の組織が非常につかみにくい。

3.見せ場の少なさ、間延び感
 途中にあるチェイスシーンや最後の爽快感の無さは、ある意味でXファイルらしいもの。しかし劇場版であるが故にもう少し見所があってもよかったと思う。またテレビでは45分の枠の中ながら「氷」「海の彼方に」「休息」「ペーパー・ハート」など質の高いエピソードを見せていただけに、今回の脚本はどうも弱い。45分で済む物語を無理に伸ばしている印象だ。

 モルダーとスカリーが同じベットに寝るなど、お互いの信頼関係が深まっていたのは新鮮。しかしエンドロール時のボートを漕いでいるシーンの意図はなんだったのだろうか??その後、画面に向かって手を振っていた2人だが、よく分からない演出にイラっとしたものだ。


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(2009/03/20)
ジョン・キューザックサミュエル・L・ジャクソン

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 ホラー映画やパニック映画は、なんの罪も因果もない人間が、恐怖の現象に巡り遭う"巻き込まれ型"が通例だ。しかし「1408号室」はオカルト作家が幽霊を求めて、わざとその舞台に乗り込むという点がユニークだ。誰も近寄らない場所に必死になって近付くのである。「ツイスター」で竜巻を追っかけていたヘレン・ハントのチームを思い出す。




*****以下、ネタばれ注意*****




 幽霊の存在を否定し、最初は強がっていたジョン・キューザックが徐々に追い込まれていく姿が、間抜けにも可哀想にも思えた。前半のサーフィンのシーンで夢オチのフラグを立てていたが、物語はそう単純には終わらずに2転3転していく。スティーブン・キング原作らしいB級臭の漂う展開は好感がもてるが、突出した恐怖や感動がないのは残念。色々な要因で主人公を追い詰めていく部屋だが、恐怖の対象としてもっと分かり易い一貫性のある記号が欲しかった。

 「1408号室」、その部屋の恐怖現象の原因や、サミュエル・L・ジャクソンの立ち振る舞いなど最後まで謎が多い。ハッピーともバットとも捉えられるラストは余韻を残して好きだ。宿泊した人物の過去のトラウマや脳の奥に隠してた苦い記憶を、増長させる部屋のようである。

 それにしても、主演のジョン・キューザックは、水責め、氷責め、火責め、手の上に窓がバーンと落ちたり、ダストを這いずり回ったり、背中からガラスのテーブルに落下したりと、鑑賞しながらも撮影大変だっただろうな、などと同情してしまった。


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(2010/05/26)
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日本人好みのヒーロー誕生


 「アメコミはぴちぴちのタイツ姿のヒーローばかりだ。」という友人の一言にハッとしたことがあった。スパイダーマンしかりスーパーマン、サイクロップス、デアデビル等、たしかに全身タイツ姿が多い。おそらくは全般的にアメリカ人の体型が大きく、筋肉質=強いという発想から由来しているのだと推測する。狩猟民族である米国圏内では、体格や筋肉がそのまま強さの象徴として刷り込まれているのだろう。しかしここにきて、それとは真逆のアメコミヒーロー映画を観ることになる。それが「アイアンマン」だ。

 主人公であるトニー・スタークは巨大軍需企業の社長であり、彼本人に力は無い。しかし知力に長け機械の助けを借りることによりスーパーヒーローへと生まれ変わる。非力でもテクノロジーにより強くなるという展開は正に日本人向けではないだろうか。超合金ロボットを連想させるメタリックな外見や変形(バージョンアップ)の要素が存在するのは、日本人の思うヒーロー像と嗜好が極めて近い。




*****以下、ネタばれ注意*****




 ロボコンやものづくり、半田付けや基盤設計が好きな人にとって劇中のメカニカルな描写にはたまらないものがあっただろう。アイアンマンが誕生する製作過程が綿密に描かれているため、強固なスーツや空を飛ぶ機能等、あり得ない事象ながら現実世界でも少しは真似できるかも…と期待をさせるものばかりである。個人的には網膜スキャンで、人質を盾にした敵だけを複数ロックオンし瞬時に殲滅させたシーンが最高だった。

 また「アイアンマン」の良さは、分かり易いストーリーで誰にでも楽しめるエンターテイメントに徹したことだ。5,6年前に映画化されていたら、もしかしたら重く暗い内容になっていたのかもしれない。同2008年は「ダークナイト」一色の年となったが、2つのアメコミ映画を比較するのも面白く、両者共に上手に差別化できているなと感じた。暗いヒーロー映画に辟易していたアメコミファンも、今回の爽快な色付けは歓迎ものだっただろう。

 テレンス・ハワードを除き、ロバート・ダウニーJr、ジェフ・ブリッジス、グウィネス・パルトロウという最近ヒット作に恵まれなかった俳優陣の見せる、コミカルな演技も今作の成功の要因のひとつだ。


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(2013/07/02)
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 仕事に疲れて海を見に行ったり、長い休みがあれば一人旅に行ったり、日常を離れ普段接することのない環境に身を置くことで、自分を見つめ直したいと思うことは誰もが持っている願望ではないだろうか。今作の主人公、エミール・ハーシュはその願望の極みともいえる計画を実行する。現在所有している現預金やクレジットカードを捨て、ゼロからのスタートで単身、アラスカを目指す旅に出るのだ。




*****以下、ネタばれ注意*****




 しかもアラスカでは大自然のなか極限下でのサバイバル生活を送る。植物を採り、動物を狩る姿は過酷に映る反面、本当の自由を手に入れ人間の本能の源泉を体験しているようで、羨ましくも思えた。大きなシカを捌く等、そのような描写を通しても「イントゥ・ザ・ワイルド」が実話であるということに大変驚かされる。

 エミール・ハーシュが旅に出る理由に、両親との確執が根底にあったのだが、彼はそのことや人生に必要な要素について・生きる命題について、最後には一定の答えを導き出したに違いない。しかし不幸だったのはその答えを見た後に最期を迎えてしまったことだ。彼の行動は無謀ではあったが、最期の瞬間まで自分の信念を貫き魂を燃やし続ける、その姿に清らかな感動を覚えた。

 少し残念だったのは、考える時間が鑑賞者にあまり与えられなかったことである。主人公と同様に旅の気分や厳しい環境を長い時間共有したかったのだが、過去の出来事が挿入されたりナレーションが入ったりと気持ちが寸断され、その辺りの説明が丁寧過ぎる印象をうけた。

 今作を観て感じたことは、人は独りでは生きていけないということ、そして気持ち次第で何でも出来るのだということだ。自分自身の生き方や秘めたポテンシャルを再度確認したくなる作品である。


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