第9地区 Blu-ray&DVDセット(初回限定生産)第9地区 Blu-ray&DVDセット(初回限定生産)
(2010/08/11)
シャールト・コプリーデヴィッド・ジェームズ

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 映画に登場する宇宙人(エイリアン)は侵略するか友好的か、とにかく何らかのアクションを起こし、その都度、人類はそれにリアクションするというものだった。「第9地区」がそれまでの映画と違い異質なのは、ヨハネスブルグ上空に大型UFOが飛来するのだが、そこから"何もしない"ところにあった。




*****以下、ネタばれ注意*****




 難民と化したエイリアンを移動させるためにボロい小屋の前でサインを貰おうとする描写は、なかなかシュールなものである。エイリアンに対する差別的な態度や武器を横取りしようとする様子は、正にこれまで人類が繰り返してきたことであり、今作のエイリアン=人間の置き換えや、南アフリカ=アパルトヘイトへの置き換えも容易に想像できる。第9地区が単なるSFに止まらず、アカデミー作品賞にノミネートされたのは独自性と社会風刺が見事に融合されていたからだろう。

 個人的に残念だったのは、主人公が謎の液体により感染した以降は、逃亡劇とアクションの要素が強かったことである。エイリアン"エビ"やヴィカスと妻の感動的なエピソードにもっと時間を割いてほしかったところ。後半はテンポがやや単調に感じられた。

 それでもエイリアンの武器の実験、エイリアンや人間が瞬殺されまくる様はポール・バーホーベンの映画並に過激でブラックなもの。パワードスーツ??に身を包み、ミサイルを受け止め豚が空を飛ぶシーンは爽快なシークエンスである。これほど大規模で、多くのカットでVFXを用いているにも関わらず、製作費が30億円ほどというから驚きだ。異種への理解、嫌人間感情など「アバター」と比較しながら鑑賞するのも面白いだろう。
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ハート・ロッカー (期間限定価格版) [Blu-ray]ハート・ロッカー (期間限定価格版) [Blu-ray]
(2013/02/02)
ジェレミー・レナー、アンソニー・マッキー 他

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 爆弾に特化した新しいタイプの戦争映画


 「ハート・ロッカー」は意外性に満ちた作品だった。何の前触れもなく突然死んでいく兵士たち。冒頭でいきなりガイ・ピアーズが爆死した時からラストまで、もしかしてこのキャラクターは死ぬのでは??という緊張感が解かれることはない。また戦争映画に欠かせない戦闘シーンには(大部分で)敵兵の姿はおらず、対峙するのは物静かに横たわっている爆弾である。それに加え爆弾を処理する際にはその周囲の状況、起爆装置を握っている人物を特定しなければならないことも更なる緊張を煽っていた。そのような演出・構成は他の作品との差別化に成功し、ついにはアカデミー作品賞をも受賞してしまう。世界のあらゆる興業成績を塗り変え、3D映画の礎を築いた「アバター」に勝利した今作の顛末こそ、一番の"意外性"ともいえないだろうか。




*****以下、ネタばれ注意*****




 本編の多くは前述のように爆弾処理の様子に時間が割かれている。しかしながら個人的に1番印象に残ったシーンは砂漠地帯でのスナイパーとの戦闘だった。奇襲された際の乱射から一変しての静かな戦い。マガジンの弾が血で詰まり、それを唾で滑らせるシーン、ジュースを飲もうとするがストローのビニール袋が開けられない様、またそれを自分は飲まずサンボーンに差し出すなど、ギリギリの状態で見せるこれらの演出は秀逸だ。顔に群がるハエの一匹も追い払えない状況はこの映画の中で最も緊迫した場面である。これらのシークエンスを眺めながら、キャスリン・ビグロー監督こそはマイケル・マンの後継者だと心の中で思ったほどだ。

 「ハート・ロッカー」が伝えようとしたことはなんなのだろうか。最後まで鑑賞しても、一概に反戦映画とも兵士を賛歌しているものともいえない。あえていうなら"戦争依存の疑似体験"である。冒頭から2時間近く高い緊張状態に放り込まれた観客は、後半に訪れるシリアルがずらっと並んだシーンで異様な感覚に包まれるはずだ。劇中のジェレミー・レナー同様、このシーンで特有の居心地の悪さを覚えてしまう、これこそ今作の狙い所ではないか。爆弾処理を偏愛してしまった男を通して見えてくるのは、それまでのヒーローイズムから遠く離れた孤独と、終わることのない戦争への虚無感だけである。


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(2012/09/05)
ジョセフ・ゴードン=レヴィット、ズーイー・デシャネル 他

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 草食系男子のエース


 「500日のサマー」をデートムービーと思い、カップルで観に行くと気まずい雰囲気になるだろう。冒頭でも語られるように今作は一般的なラブロマンスではなく、男と女の思考の違いや恋における勘違い、失恋のショックをリアルに描く、一種のハウトゥー作品でもある。誰にでもある恋愛の体験を今回は男性目線で描いているのだが、人を好きになる視点(トム)と人から好かれる視点(サマー)に分けて鑑賞することもでき、自分自身のこれまでの恋愛感は果たしてどちらだったか、内省しながら観るのも面白いだろう。また今作は以下の点が特に優れていた。

1.主役の2人がはまり役
 もはや素で演じているのではないか、と思わせるほどジョセフ・ゴートン=レヴィットの草食系男子ぶりとズーイー・デシャネルの天真爛漫ぶりがはまっていた。特にサマーを演じたズーイーはトムを同情してしまうほど思わせぶりな言動、小悪魔ぶりが際だっており、しかもそれを"許せてしまう女性"を説得力たっぷりに演じている。"こんな女性を相手にしていたらこっちが疲れるから別れよう、と思わせておいてほっておけない存在の女性"はハリウッド広しとはいえ、ズーイー・デシャネル以外は現状居ないだろう。よくよく考えるとサマーは最初から嘘は言わず正直にトムと接していた。この500日はトムの壮大な勘違い録と形容できるが、勘違いも彼女の前なら無理はないな・・・と感じさせるズーイーはやはりすごい。

2.時系列を入れ替えた演出
 今作はトムとサマーが出会った日から500日目までを描いた作品である。シーンの初めには「○日目」と表示され上映中はこの500日の間を行ったり来たりする。巧いのはIKEAで2人の関係が上手くいっていたシーンを見せ、その後の日では同じIKEAでも2人のリアクションが全く違っていたことだ。恋の上昇と終わりの予感を同じ場所で見せ、気持ちの変化を分かりやすく伝えていた。ミュージカル調に恋の高揚感を表現した直後に、どん底に陥ったトムを捉えたエレベーターのシーンもこの演出ならではだ。画面を縦に分割し理想と現実を並べて展開するシーンも新しい見せ方である。

 上記でも述べたミュージカルのシーンのように全てが上手くいく、全てが輝いてみえるほどの幸福状態と、全てが無意味で世界の終わりまで感じてしまう、この2つの感情を体験できるのが恋愛である。ときに素晴らしく、ときに苦しいこの気持ちの往来こそが経験となり、人を成長させる糧でもある。今現在、恋愛で傷ついている人こそ今作の意義を見いだせるのかもしれない。


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(2010/09/09)
ダニエル・デイ=ルイスマリオン・コティヤール

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*****以下、ネタばれ注意*****




 ミュージカル映画は苦手だが、ダニエル・デイ=ルイスが出演とのことで鑑賞に至る。「セア・ウィル・ビー・ブラッド」のような鬼気迫る感じとは全く違うプレイボーイぶり、年を重ねてもセクシーと思わせる見せ方はさすがである。しかし豪華女優陣のせいか、映画に対する彼の苦悩の深度があまり伝わってこなかったのはマイナスだ。フェリー二の8 1/2が下地にあるせいか、言動が軽い男は彼のイメージと乖離しているようにもみえた。それでもラストに見せるダニエル・デイ=ルイスの眼。9歳の頃の自分を重ね、純粋さを取り戻したかのような澄んだ瞳を観たら、やはり「彼しかいない」と感じてしまう。

 映画、NINE(ナイン)の最大の話題は豪華スターの共演である。ミュージカルで一番印象に残ったのは意外にもファーギーが演じた「ビー・イタリアン」である。9歳のグイドの性の目覚め、白黒のノスタルジックな映像と真っ赤に染めた衣装、ステージでの激しいダンスとのギャップも記憶に残る要因となった。演技でいうなら、アカデミー助演女優賞にノミネートされたペネロペ・クルスよりも、妻を演じたマリオン・コティアールが美味しい役柄だったように思う。

 全員が1ショットに収まる場面は冒頭とラストのわずかな間だけである。普段はなかなか観ることのできないスターの集合は、眺めているだけでもワクワクするものだ。


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