カイジ 人生逆転ゲーム [Blu-ray]カイジ 人生逆転ゲーム [Blu-ray]
(2010/04/09)
藤原竜也天海祐希

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 "負け組のエース"今作の主人公、伊藤カイジを端的に表したフレーズである。

 私自身、いま唯一読んでいる漫画がこの「カイジ」なのだが、その特徴は正に前述のフレーズに隠されていると思う。それは彼が"負け組"だということだ。定職に就かず自堕落な日々を送っていたカイジが、友達の借金の返済を迫られたことを期に、命がけのギャンブルの世界に足を踏み入れる。通常では考えられない、奇想天外なギャンブルで勝負するのだが、重要なのはカイジはどのギャンブルでも1度は負けているということだ。

 限定ジャンケン、人間競馬、Eカード、ティッシュ箱くじ引き、チンチロ、パチンコ沼・・・。どのギャンブルでも1度は負け、毎回心臓が凍り付くような思い(若しくは体の一部を失ったり)をしている。しかし彼はそこで萎えず、絶対に諦めず、希望の光も見えない逆境から予想し得ない方法で勝つ仕組みを積み上げていく。相手のイカサマや味方の裏切りにも屈せず、それぞれのギャンブのアキレス腱を見いだし、起死回生の攻撃を仕掛ける。この逆転劇に極上のカタルシスがあるのだ。

 福本伸行作品の「零」、または「ライアーゲーム」がカイジほど魅力的でないのは、主人公が最初から賢く、負けないからではないだろうか。定職に就かない様子はニート・フリーター、派遣切りを、インチキなギャンブルは社会の不条理さや支配構造と合致しており、カイジは正に現代社会・現代人にとっての"負け組のエース"なのだ。

 映画版では限定ジャンケンやEカードの内容が大幅に削られていたことが非常に残念だった。しかしカイジの世界観を堅実に守った演出(地下帝国やペリカの登場など)、アイドル俳優を起用しなかったキャスティングには好感がもてた。特に利根川を演じた香川照之の動き台詞がいちいち面白い。「金は命より重い」等のカイジ語録が聞けたのも嬉しいこと。

 今作のヒットをうけ早くも続編の製作が決定となった。(2011年公開予定)次はどのギャンブルが登場するのか??映画オリジナルのギャンブルで利根川との再選を熱望したい。願わくば焼き土下座も観てみたいものだ(笑)


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(2010/08/27)
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 現代人を描いたエアームービー


 「マイレージ、マイライフ」がアカデミー賞に絡むほどの好評価を得たのは何故なのか。本作には既存の映画とは違う点がいくつかあった。

1.リストラ宣告人という職業
 主人公の仕事はリストラ宣告人。日本では馴染みのない言葉だが、要は会社の社長や人事担当者に代わり、社員に解雇を言い渡すのが仕事である。映画でこの職業を扱うのはおそらく初めてであり、ジェイソン・ライトマン監督曰く、最初はコメディ映画のつもりで脚本を書いていたとのこと。そのうちリーマンショックが起こり、世界同時不況が襲い・・・と笑えない内容になってしまったようだ。劇中でリストラを宣告される人々の中には、実際にリストラを受けた人(素人)も居るため、台詞に重みが感じられる。

2.旅客機を使用したロードームービー
 ロードムービーでの移動手段と言えば、バイク・車・バスなど陸路を使うものであった。本作がロードムービーであるかは疑問だが、リストラを宣告すべく全米を移動しまくるその手段は旅客機だ。移動する度に、上空からの視点で大きく地名がスクリーンに映る演出が目新しい。無機質なビル群や広大な農場地が映るとこちらも旅をしているようで気分が高揚する。ロードムービーならぬエアームービーの誕生ではなかろうか。

3.ライアン・ビンガムというキャラクウター
 男のロマン、欲する物といえば、高級車・豪邸・ブランド小物などだったが、今作の主人公である、ライアン・ブンガム(ジョージ・クルーニー)はそのようなものは一切必要ないものと考える。彼が最も必要としているのはマイルでありクレジットカードであり、空港で優先的に搭乗手続きのできる会員特典の方が重要なのだ。家族をはじめとする前述の要素は重荷であると考え、ポイント集めに奔走する様は、現代人の思考やライフスタイルを端的に示した新しいキャラクターであった。空港で軽やかに搭乗する様はさながらバレーダンサーのようで面白い。




*****以下、ネタばれ注意*****




 上記の目新しさが”現在”を捉え、新鮮味のある共感を運ぶ。また今作では主要キャスト3人、ジョージ・クルーニー、ヴェラ・ファミーガ、アナ・ケンドリックがそれぞれアカデミー賞にノミネートされるという快挙を成し遂げた。個人的には新入社員で現代っ子のアナ・ケンドリックのフレッシュさが印象に残った。スマートな思考ながら彼と別れた際には、突然泣き出すなどキュートな一面、ジョージ・クルーニーとの掛け合いもユニークである。

 一度は気持ちを介した3人が、別々の道を歩み始めるラスト。「マイレージ、マイライフ」では空港が重要な舞台となるが、3人が過ごした時間は一端出会って別のゲートへ行き旅立つ、正に空港の乗り継ぎ時間内での出来事のようでもある。ポスターで3人が目を合わさずにそれぞれが別の方向を向いているのも物語の行く末を暗示しているようだ。ジョージ・クルーニーがしっぺ返しを喰らうというオチは意外だったが、人間関係を築くにはある程度の時間やそれに伴った深い信頼が重要なのだ。


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(2012/04/13)
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ありがとう、クリストフ・ヴァルツ!!


 タランティーノ監督が第二時世界大戦を舞台に映画を撮る。全く想像もつかない絵空事のような話だったが、いざ完成した「イングロリアス・バスターズ」を観ると、紛れもなくそれはタランティーノ節全開の作品であり、しかも傑作であった。多数のキャラクターが入り交じる群像劇、食べ物を美味しそうに映す様子は「パルプ・フィクション」を。チャプターに分かれた構成、家族の仇討ちのためナチスに復讐を誓う女性の目線は「キル・ビル」を彷彿とさせる。

 また今作の最大の功績は、クリストフ・ヴァルツの発見とハンス・ランダ大佐の創造である。ユダヤ・ハンターの異名を持ち、計算高さ、用心深さと知的な振る舞い。話相手に対し丁寧に接しながらも、どこか見下した眼差しをする男こそハンス・ランダであり、悪でありながら実に魅力に溢れたキャラクターなのである。ほぼ無名の役者に近かったクリストフ・ヴァルツは、この役でアカデミー助演男優賞を獲得するに至るのだが、それを納得させるほどの強烈な存在感だった。




*****以下、ネタばれ注意*****




 ブラッド・ピットやイーライ・ロスを前にイタリア語で質問をするシーンは何度観ても笑える。突然に流暢なイタリア語を話し始めるクリストフ・ヴァルツと「ゴーラーミ~」とばつが悪そうな顔をするブラッド・ピット。2人の掛け合いが最高である。またダイアン・クルーガーが足の怪我を登山のため、と嘘をついた後に爆笑する大佐の姿もどこか愛嬌を感じた。彼無しではこの映画の質も保証されないものになるだろう。

 ラストでは映画でナチスに復讐を果たすという、ビックリな展開が待っている。ヒトラーも思いのほかあっさりと銃殺されるのだが「重要な事柄こそ短く、どうでもいいことに時間を費やす」タランティーノ映画の定石をそこに観た気がした。


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