ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女 [DVD]ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女 [DVD]
(2010/06/04)
ノオミ・ラバスマイケル・ニクヴィスト

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 スティーグ・ラーソンの大ベストセラー推理小説「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」の映画化。本作は、36年前に失踪したハリエットの行方を追い、大企業ヴァンゲル・グループの暗部に迫るミステリー部分。そして天才ハッカー、リスベットの生い立ちや内面に迫るドラマ部分の、脈絡のないふたつの要素が、上手に繋がり交わっていくのが特長である。

 美少女ハリエットの失踪の謎を追うパートは、ヴァンゲル・グループの一族の怪しげな面々といい、ヘーデビー島の陰湿な雰囲気といい、どこか「ツインピークス」を思い起こさせるもの。舞台となったスウェーデンの島は今作のヒット以降、観光名所になっているとか。寒々とした台地と霧深い描写が一族のミステリアスさを表現しているようだった。

 このハリエット失踪とは別に、大きく時間を割いていたのが、鼻ピアスに黒の皮ジャン、全身にタトゥーを入れたリスベットのシークエンスである。後見人である弁護士にレイプされるシーンは特に過激な内容であり、あまりの脱線具合に本当に必要なのか??と思えるほど。しかしリスベットという人物を理解する上で、また続編の「火と戯れる女」「眠れる女と狂卓の騎士」に繋がるエピソードとして不可欠な箇所らしい。どんな逆境になろうと、自分1人で解決する様子は痛快で力強さを感じるが、時に見せる悲しい表情が印象的だ。奇抜な外見や自己防衛本能は彼女の過去の出来事に起因しており、この辺りのエピソードは続編を鑑賞するしかなさそうである。また本作でリスベットを演じブレイクした、普段のノオミ・ラパスのなんとキュートなことか!!映画と実際のギャップに驚き、同一人物とは到底思えない素振りに、本作にかけた彼女の女優魂を感じずにはいれない。

 スウェーデン、デンマーク、ドイツ合作の本作は世界中で大ヒットとなり、ハリウッドでのリメイクが既に決定している。監督はデヴィッド・フィンチャー、ミカエルは近年ジェームズ・ボンド役で評価を上げたダニエル・クレイグ(2010年9月30日 現在の情報)。元の作品の出来が良いため、わざわざリメイクする必要はないと思っていたが、なんとも楽しみな監督と俳優の組み合わせである。「セブン」の頃のエッジの効いた演出と、リスベット役がはまればオリジナルとは違った雰囲気の仕上がりが期待できる。世界中でブームとなった"ミレニアム現象"はもうしばらく続きそうだ。

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ボーダー [Blu-ray]ボーダー [Blu-ray]
(2010/09/03)
ロバート・デ・ニーロアル・パチーノ

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映画に漂う気品のようなもの


「遂に実現する映画史上最高の"本物の競演"」 

 本作「ボーダー」のキャッチコピーである。競演とはアル・パチーノとロバート・デ・ニーロのこと。2人は過去に「ゴッドファーザーpartⅡ」「ヒート」で競演済みなのだが、時間軸の違いや僅かなシーンのみの競演であり、冒頭から同じショットに入りまくる今作は正に"本物"と形容して良いだろう。しかし作品を見渡す限り、これまでの2人が培った演技の凄味は全く発揮されておらず、せっかく果たした"競演"は単なる"共演"に止まったと言わざるを得ない。

 映画には質というものが存在する。自分の興味や嗜好に合わない作品でも、脚本や映像に何か気品の様なものを感じ、ついつい見入ってしまうものだ。アル・パチーノとロバート・デ・ニーロ2人の70-90年代前半迄の作品にはそのような最低限の質や、尊厳のような威風漂う香りが保証されていた。自分に興味のないジャンルでもこの2人が主人公であれば、そう大した話でなくても見入ってしまう強烈な引力が作品にあったのだ。

 それが本作ではどうだろうか。冒頭から2人が同じショットに収まってはいるのだが、画面から全くパワーを感じないのである。映像もサウンドも安く、お手軽映画臭が開始3分くらいで漂い始めていた。ストーリーもN.Y.市警のベテラン、内部捜査、謎の連続殺人…と、何処かで聞いたことのある要素を繋いでいる感は否めない。最初からロバート・デ・ニーロが怪しい、怪しいと連呼すればするほど、ラストの展開は自ずと読めてしまう。

 鑑賞後、本編を思い返しても全くと言っていいほど語るシーンが無い、つまり見所が皆無なのだ。「ヒート」以来12年ぶりの共演だが、ゴールデンラズベリー賞にノミネートされ(アル・パチーノ)、評論家に酷評されたのも頷ける内容である。2人のネームバリューだけで観客が集まる時代は終わってしまったのか…??マイケル・コルレオーネやビト・コルレオーネのような、そこに居るだけで惹きつけられるキャラクターを、また生み出してほしいものだ。


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ゴッドファーザー Part2 ☆Great Movie☆
ゴッドファーザー Part3 ★★★
ヒート ★★★★
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アウトレイジ [Blu-ray]アウトレイジ [Blu-ray]
(2010/12/03)
ビートたけし三浦友和

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 「なんだと馬鹿やろう」「大きなお世話だよ、馬鹿やろう」「ぶち殺すぞ、コラ!」この繰り返しの映画。もっと言えば、北野武演じる大友への指令→「なんだと馬鹿やろう」→殺人→大友への指令…この繰り返しの映画だ。登場人物の内省に迫る時間は無いに等しく、「アウトレイジ」(激怒)のタイトル通り怒りと暴力が作品を覆っていた。

 それまでの北野作品のような抽象さはない。指令に従って物語が前に進むため、分かりやすいエンターテイメントという印象をうけた。中身がないと言えばそれまでだ。それを補ってもお釣がくるほどの、バイオレンス描写をどう捉えるかで本作の好みはハッキリと分かれそうである。




*****以下、ネタばれ注意*****




 登場人物のなかでは、武闘派ながら何処かクールさを漂わせていた椎名桔平の立ち振舞いが記憶に残る。女性に対して優しいなぁと思わせるベットシーンをはじめ(笑)、インパクトに残る最期など見せ場の多い役だった。多数の俳優陣が悪人として出演してるが、椎名桔平以外は似たり寄ったりで面白味に欠ける。

 歯医者の機器を使用しての口内攻撃、菜箸を耳に突き刺す、カッターで指を切り落とすなど過激な描写もひとつ外せば笑えるもの。某国大使への蛇トラップや喫茶店爆破はさながらドリフのコントのようである。暴力映画を観ているのに笑いがこみ上げてくるのだ。

 生への執着を唯一見せたキャラクターが大友であり、その大友も最期はあっさりと殺されてしまう。この乾いた世界観こそがアウトレイジの作風である。「TAKESHI'S」「監督ばんざい」でひたすら自分の内面と向き合った北野監督、今回はひたすらに殺しのレパートリーを熟考したのではなかろうか。


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