パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉 DVD+ブルーレイセット [Blu-ray]パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉 DVD+ブルーレイセット [Blu-ray]
(2011/11/02)
ジョニー・デップ、ペネロペ・クルス 他

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 「あれっ??ジャック・スパロウいい人じゃない?」と鑑賞直後、真っ先にそう思った。ジャック・スパロウといえば、敵になったり味方になったり、どのグループにも属さず得意の話術を利用し周囲を混乱させ、いつの間にか自分の利益を得るという、天才ペテン師のような動きに魅力があった。それが今回は鳴りを潜め、正統派でどこかマイルドな印象を受けたのだ。

 パイレーツ・オブ・カリビアンの最新作「生命の泉」はインディ・ジョーンズを連想させるとの指摘が何件かあるようだが、キャラクター自体もインディに近寄った気がする。インディ・ジョーンズシリーズとの類似点は以前も述べた通りだが、今回は聖杯と不死の水・呪いの人形等、小道具に至るまで似ており、陸ばかりの冒険というのも海賊らしさを感じさせないもの。何を考えているのか理解不能、変な動きだが格好良い。ジョニー・デップが作り上げた異彩のニューヒーローは、今作ではさほど輝きを放てていない。次回作がもし製作されるのであれば、あの外連味たっぷりのジャック・スパロウに戻ってほしいものだ。




*****以下、ネタばれ注意*****




 前作「ワールド・エンド」まで難解とは言わないが、やはり今回も物語が難しく、頭の中は混乱でいっぱいだった。パイレーツシリーズ伝統ともいえる、誰がなんの為になにを目指して戦っているのか相変わらず分かりにくい。特に主役であるジャック・スパロウに、バルボッサやデイヴィ・ジョーンズに匹敵するような危機感がないのが致命的。キャラクターにストレスが発生していないため感情的になる訳でもなく、なんとなく動きの画面を見つめ、なんとなく終わってしまった感じである。永遠の命を得る為には、生贄(犠牲者)が必要と分かった時から、生命の泉に対する興味は明らかに薄れたはずなのに、ジャック・スパロウは何がしたいのかが理解できなかった。その前に「生命の泉の効力しょぼくね?」そして「黒ひげ弱くね?」と突っ込まずにはいられない(笑)

 前3作まではテンションが上がるシーン、また、あの場面が観たい!!と思えるシーンがひとつはあったが、今回はそれが特に思い浮かばない。それは、アクション映画をそれほど経験していないロブ・マーシャル監督のせいか。手堅くそつの無い仕上がりとも言えるが、物足りなさを覚えてしまう。


■関連作品■
パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち ★★★
パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト ★★★
パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド ★★★
ツーリスト ★★
英国王のスピーチ ★★★
NINE(ナイン) ★★
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白いリボン [DVD]白いリボン [DVD]
(2011/06/25)
クリスチャン・フリーデル、レオニー・ベネシュ 他

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 「白いリボン」を普通に鑑賞すれば、とある村で起きた不可解な事故と、そこで暮らす人々の洞察の物語である。しかし、冒頭のナレーションも語っていたように、歴史的な背景・考察もミヒャエル・ハネケ監督は同時に取り入れていたようだ。


 “これから話すことがすべて真実か、あまり自身はない。
それでも、あの奇妙な出来事を誰かに話しておくべきだと私は思う。
あの出来事こそがおそらく、当時の我が国そのものなのだ。”


「当時の我が国そのもの」という文節。来る第一次世界大戦とその後の戦争、ナチスドイツ台頭の予感が、ストーリーの裏側で蠢いていることを示す。監督は政治的な批判をするのではなく、国として何故そのような歴史を辿ることになったのか、宗教か教育か社会の構造か…その心の根幹を探ろうとしていた。

 「セブンス・コンチネント」をはじめとして「ファニーゲーム」「隠された記憶」、監督の作品にはショッキングなシーンが最低1場面はあった。しかし「白いリボン」ではそれらを徹底的に排除して、観客に最上の観察と熟慮を要求している。モノクロにすること、音楽を無くすこと、そして暴力描写の排除…そうであっても、恐怖や不安を覚えてしまうのは、扉の向こう側で起きていることを頭のなかで想像してしまうからだ。




*****以下、ネタばれ注意*****




 最も不気味に思えたシーンは、教師とエヴァが馬車に乗っているシーンである。内気なエヴァが教師にキスまでして、森のなかの湖に行かないように諭す様は、なにかを隠しているとしか思えない。また、行方不明になった助産婦の家から帰る子供たちのシーンで、白いリボンの罰を受けたマルティンの表情、凍ったような目つきが未だに忘れられない。

 ドクターの落馬、小作人の妻の死、ジギ、カーリへの暴行など…これらの事件の犯人は直接描かれていない。それでも監督は語る、「すべての事件に、論理的な説明がなされている」と。作品を凝視することでなんらかの筋道は浮かび上がりそうだ。真っ先に疑うべきは子供たちである。「セブンス・コンチネント」「ベニーズ・ビデオ」「ファニーゲーム」「隠された記憶」監督の作品ではタブーなど存在せず、常に子供が重要な位置づけで登場しているのも、そう考える一因だ。純真無垢を願い白いリボンを強要されること、過度な厳格さと感情の抑制は耐え難いストレスと、あらぬ人間性を生みだすのではないだろうか。小さな体格ながらも世の中の不条理さを既に見抜いているのだ。

 監督作品常連のスザンヌ・ロタールは「ファニーゲーム」に続き、今作でもひどい目に遭っている。それまで紳士的な人物に映っていたドクターから、(情事の相手として)お前に興味がなくなっただの、口が臭いだの、ものの見事に罵倒される(笑)幸薄そうな表情にぴったりな(ある意味で)面白いシーンだったがそれも束の間、ドクター一家、助産婦一家ともに行方が分からなくなる後味の悪さ。助産婦は自転車でドコに行ったの??エンドロールを迎えた際の放心感。さすがハネケ監督である。


■関連作品■
セブンス・コンチネント ★★★★★
隠された記憶 ★★★★
ピアニスト ★★★★
ファニーゲーム ★★★
ファニーゲーム U.S. ★★★
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ブラック・スワン 3枚組ブルーレイ&DVD&デジタルコピー(ブルーレイケース)〔初回生産限定〕 [Blu-ray]ブラック・スワン 3枚組ブルーレイ&DVD&デジタルコピー(ブルーレイケース)〔初回生産限定〕 [Blu-ray]
(2011/09/07)
ナタリー・ポートマン、ヴァンサン・カッセル 他

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 ナタリー・ポートマンの為の映画!!と言っていいほど、その存在感は圧倒的だった。優雅で繊細、純真といった白鳥のイメージは、正にそれまでのナタリー・ポートマンそのもの。その彼女が男を誘惑する、邪悪なブラック・スワンを踊らないといけないということは、演技と現実世界の境遇がダブって見え、この上ない説得力を引き出している。プリマドンナとしてのニナ、そして俳優業としてのナタリー・ポートマン。客席へメッセージをどのように伝えるか、芸術の産みの苦しみをホラーテイストを交えて描いた怪作である。

 ニナを演じたナタリー・ポートマンは「クローサー」でストリッパーを演じているが、個人的にはそこまで印象に残っていない。やはり「レオン」の頃のあどけなさが勝っていたように思える。「ブラック・スワン」はそれまでのイメージを一新させる、重要な位置付けとなり、彼女のキャリアを大きく変える映画になっただろう。劇中では自慰行為をはじめとして、自傷行為、レズビアン等、様々な状況を体当たりで見せている。もちろん、撮影の1年前から準備を始めていたとされるバレーシーンも、素人眼だが見応えはあった。




*****以下、ネタばれ注意*****




 今作がユニークなのは、物語の起承転結のうち承の部分が異常に長いということだ。人物の紹介・イントロダクションがあり、新しい主役の発表以後は、ずっと悩み苦しみ続けるナタリー・ポートマンを観なくてはならない。背中の引っ掻き傷はまだ理解できるが、人が暗闇から突然現れたり、ウィノナ・ライダーが爪やすりで顔を刺す箇所はもはやホラーである。妄想を孕んでいるが、電車の向かいの席のおじさんの笑顔と自慰行為は笑う箇所だろう。そのような長い長いストレスの道を抜けようやく、ブラック・スワンの舞へと辿り着く。もっと長くその舞を観たかったが、CGを交え美しく躍動するシーンは、多大なストレスの後のご褒美タイムともいえる。怒涛のラストはハッピーエンドと捉えることができ、主人公が落下する様子は、ダーレン・アロノフスキー監督の前作「レスラー」のラストと被って見えた。

 重厚な人間ドラマにだけ比重を向ければ同監督の「レクイエム・フォー・ドリーム」を超える絶望感を期待できたのだが、リアリティとは一線を画した精神崩壊の過剰な画は時に滑稽に映る。その隙間こそが映画を楽しむ為の余裕であり、今作が(個人的にだが)傑作とは呼べない、怪作と紹介したくなる所以ではなかろうか。

■関連作品■
レスラー ★★★
ファウンテン/永遠につづく愛 ★
レオン ★★★
クローサー ★★
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瞳の奥の秘密 [DVD]瞳の奥の秘密 [DVD]
(2011/02/18)
リカルド・ダリン、ソレダ・ビジャミル 他

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 久しく「これぞ映画!!」という作品に巡り合っていなかったが、「瞳の奥の秘密」はまさにその形容に相応しい傑作だった。ラブロマンスあり、サスペンス、ミステリー、コメディ、ノスタルジックありと様々なジャンルを絡めても上質なバランスを保つ、正に”映画”を観たという感じにさせられたのだ。




*****以下、ネタばれ注意*****




 伏線を上手に使いながら迎えるラストの展開は、全く予想し得なかった着陸地点である。
「彼に何か喋るように言ってくれ」
「助けてくれ」と懇願するのではない、その台詞にゾッとしたものだ。20数年間の幽界生活、食事を与えるだけのリカルドとの距離を容易に想像できる、ゴメスの言葉は重い。ここで物語が終わっていたら極上のミステリーだが、その後の決意を固めたベンハミンと満面の笑みで受け入れるイレーネの表情に希望やなにか救われる思いがした。どこでエンディングを迎えるか。エンディングは映画の顔とも言えるものだが、今作ほどそれを思わせるものはない。後味や全体からの印象が全く異なっていただろう。

 25年前の全貌が分かった後にもう一度鑑賞すると、新たな発見が多数浮かび上がってくる。ドアの開け閉め、イレーネのペンを振る癖、好きな人を見つめる目、写真立て、印刷されないタイプのA、手に持っていたお皿、本棚に医学関連の本、さり気ない伏線が後に繋がるのは快感である。結末や本心が分かった後の登場人物の動きも面白い。タイトル通り、正に瞳の奥に真実が映っていることが解る。

 アルゼンチンという、普段は全くと言っていいほど接しない文化圏の映画だが完成度の高さに驚いた。俳優陣の演技、25年をスムーズに往来するメイクアップ、サッカースタジアムでの一連の長回し等、終始感心しきりの作品だった。
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