さや侍 [Blu-ray]さや侍 [Blu-ray]
(2011/11/05)
野見隆明、熊田聖亜 他

映画の詳細を見る



 ダウンダウンの松本人志監督、映画第3作品は時代劇をベースにした「さや侍」である。前2作品と違うのは、松本人志自身が出演していないこと、そして人物の目的や世界観が比較的分かり易いこと等が挙げられる。

 松本人志に変わり主役を務めるのは、なんと素人の野見隆明さん。この野見さんは只の素人というわけではなく、以前に「働くおっさん人形・劇場」に出演しており、強烈なキャラクターを持っていたことで監督も一目置いていたらしい。個人的にはその「働くおっさん人形・劇場」が未見だったため、イマイチ野見さんの持つ面白さが伝わってこなかった。映画館内でも、うどんを鼻で吸い込むシーンと、火の輪くぐりが雨で失敗に終わった部分で笑いが起きただけである。ほうき三味線やタコとの対決もピリッとした緊張感や、少し冷めたような空気を感じただけで笑うには至っていない。「働くおっさん人形・劇場」が放送されていた地域と全く放送されていなかった地域で、野見さんに対する印象の齟齬が発生するのでは??と思ったり。

 「さや侍」が前2作品とは違う、もうひとつの特徴は物語の分かり易さにある。時代劇とはいえ、若君を「笑わせなければならない」という目的がはっきりしていること。また笑わせるという行為自体が、コメディ映画の目的と合致するのも物語の進行をスムーズなものにしている。獣を倒すヒーローを描いた「大日本人」。自分の居る場所は元より目的が不明瞭な「しんぼる」に比べれば、恐ろしくストレートなものだ。また物語の根底に、普遍のテーマでもある親子愛が含まれているため、父と娘のやりとりからラストは、ほっこりとした感動に包まれる。




*****以下、ネタばれ注意*****




 意味ありげに映っていたお坊さんが、ラストで手紙を歌で読みあげるシーンは意表を突かれ驚かされた。歌っているのは”竹原ピストル”さんとのことで、この歌はCD化されるようだ。最初はあっけにとられていたが、規定概念に固執しない松本監督らしい素晴らしい演出であり、鑑賞後もあの歌(父から娘へ-さや侍の手紙-)は記憶に残るものである。もうひとつ監督らしいなと感じたのは、なにをやっても駄目な武士が最後に切腹を選んだ場面だ。同情されて生かされるくらいなら自害を選択するという、武士道らしい哲学と生き様。この行為は松本監自身を反映しているようだ。笑いに対しては常に命がけで挑んでおり、自分が納得できないもの、そこに妥協や同情が生まれるようなら自害したほうがまし、とのある種のプライドのようなものを感じずにはいられない。放送コードの限界、ブラックな笑いと倫理観等、テレビ業界と戦い歩いた監督の反骨心のようなものだ。

 三十日の業が繰り返しの作業になり、少し中だるみを覚えたのは残念。時代考証、舞台、目的を180度変えて、様々な種類の笑いを提供する松本人志。その飽くなきチャレンジスピリットに惹かれ次作も結局、鑑賞してしまうだろうなと思った。


■関連作品■
大日本人 ★★
しんぼる ★
スポンサーサイト
テーマ:映画感想
ジャンル:映画
X-MEN:ファースト・ジェネレーション 2枚組ブルーレイ&DVD&デジタルコピー(ブルーレイケース)〔初回生産限定〕 [Blu-ray]X-MEN:ファースト・ジェネレーション 2枚組ブルーレイ&DVD&デジタルコピー(ブルーレイケース)〔初回生産限定〕 [Blu-ray]
(2011/09/28)
ジェームズ・マカヴォイ、マイケル・ファスベンダー 他

映画の詳細を見る



特殊能力を兼ね備えた007又は、スパイ大作戦。


 「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」の特報の予告編を観たときに、あまりに地味な印象を受けたため、この企画は失敗ではなかろうか、と勝手に心配したものだ。しかし実際の作品を観てその完成度の高さに驚く。派手なアクションシーンも用意されているが魅力的な俳優陣に加え、深い人物考察と60年代という時代に即した物語に、ぐいぐいと惹き込まれたのだ。

 前X-MEN 3作は(設定上しょうがないが)近未来的なイメージが先行、一方のファースト・ジェネレーションは冷戦とキューバ危機を迎えている60年代が舞台である。セットや衣装がレトロなもので、アメコミ映画から連想される派手さやシャープさはない。それは出演している俳優陣にも言えることで、突出したアイドル俳優を起用していない点で抑止が効いており、見事な群像劇に仕立て上げている。後のプロフェッサーXとなるジェームズ・マカヴォイ、マグニードとなるミヒャエル・ファスベンダーを始め、悪の枢軸にここに来てケヴィン・ベーコンを招聘する辺り、渋いというか憎い。A級の企画でありながら何故かB級をも予感させる巧みなキャスティングであると唸ってしまう。
 
 どこか田舎くさいCIAエージェントのローズ・バーンや、正に悪ボスの愛人、ビッチを具現化したようなザ・60年代悪女エマ・フロストをジャニュアリー・ジョーンズが見事に表現している。個人的に好きだったのはレイブン・ダークホルム/ミスティークを演じたジェニファー・ローレンスだ。ブリジット・ジョーンズの頃のレネー・ゼルウィガーとリーリー・ソビエスキーを足して2で割ったような、少し芋っぽい感じがたまらない。全身ミスティークになっても顔がコロッとしており、ものすごくキュートである。

 監督も語っているように、今作はX-MENでありながら全体的な雰囲気は007である。個人的にはテレビシリーズのミッション:インポッシブルにも観えた。スパイ道具をミュータントの能力に置き換え任務を遂行する、いわば特殊能力を備えた人物が見せるスパイ大作戦である。秘密の部屋やハニートラップなど地味な侵入劇から一変するCIA施設襲撃や、ラストの艦隊との描写はカタルシス全開のアクションシーンだ。緊迫したシーンが多いなか、若いミュータントの育成を軽やかなカット割りとユーモアで見せた演出も程良いもの。「キック・アス」で注目を集めたマシュー・ヴォーン監督だが、今作の出来で、確固たる評価を得るに違いない。

 ファイナル・デシジョンに劣らぬほどの、多くのミュータントが登場するが”誰が最強なのか”というのは常に起こる論争である。今作に限定すればアザゼルの活躍が目覚ましかった。赤い悪魔のようなビジュアル、尻尾・刀・テレポートの連携、とにかく格好良いのである。敵を捕まえ上空に連れていき落とす、瞬時に移動して刀で刺す、手を繋いで味方を瞬時にテレポートなど全てにおいて万能だ。艦隊からのミサイル攻撃を傍観している姿には、自分を含めせめて味方だけでもテレポートすれば良いのにと突っ込みたい(笑)心が読めるテレパシー能力のエマと組めば、2人での世界征服も難しくなさそうだ。面白かったのがプロフェッサーXの能力で動きを止められたセバンスチャン・ショウ。手を伸ばしているせいか、わずかながらピクピクと動いていたケヴィン・ベーコンが可笑しかった。



■関連作品■
X-MEN ★★★
X-MEN2 ★★★
X-MEN/ファイナル・デシジョン ★★★
キック・アス ★★★★
ウォンテッド ★★
イングロリアス・バスターズ ★★★★
テーマ:映画感想
ジャンル:映画
ジャッカス 3  ブルーレイ&DVDセット [Blu-ray]ジャッカス 3 ブルーレイ&DVDセット [Blu-ray]
(2011/05/27)
ジョニー・ノックスヴィル、バム・マージェラ 他

映画の詳細を見る



jackass (ジャッカス)映画シリーズ待望の第3弾。今作はなんと3Dでの公開となっており、絶対に映画館で鑑賞せねば!!と意気込んでいたが、地元の劇場で公開されず結局DVDでの鑑賞となった。DVDでは「ジャッカス3」の表記でパッケージされているが、オープニングや途中の演出等、3Dを見据えたアングルが随所にあった気がする。飛び出していたと想像される糞・尿は、安易に3D化している映画業界への痛烈な皮肉ともとれるもの。最新技術を駆使し、メガネまでかけて立体化した映像がうんこなのだから笑うしかない。

 痛い系、グロイ系、ドッキリ系と無駄なく飽きない構成で配置されており、あっという間にエンディングを迎えることになる。個人的に好きだったパフォーマンスは以下の通りだ。

・tee boll ティーボール
・jet stream ジェットストリーム
・will the farter “ヘッピリ” ウィル
・poo cocktail supreme ウンチージャンプ

 やはりスティーヴォーの活躍が目立つ。ティーボールにしても、“ヘッピリ” ウィルにしてもくだらないことなのに大笑いする様子、ドッキリで引っ掛かっても決して怒らない様子に癒されるもの。唯一、凝視できなかったのがsweatsuit cocktail 汗のカクテルである。おデブのレイシーが特殊なビニールスーツで運動し、その汗をスティーヴォーが飲み干すというものだ。文体に起こすだけでも気持ち悪くなるのだが、飲んだスティーヴォーも、飲み終えた直後にお約束??の嘔吐というのも笑える。

 不謹慎でどうしようもない内容だがエンディングでは僅かばかりの感動も。反モラルを本気で行う彼らの姿には、いつも感服させられるばかりだ。


■関連作品■
ジャッカス・ザ・ムービー ★★★★
jackass number two ★★★★
ジャッカス2.5/封印解禁 ★★
テーマ:映画感想
ジャンル:映画
 コーエン兄弟作品でも好きな部類の作品とそうでない部類のものが、自分の中ではっきりと分かれていることを再確認できた。「ファーゴ」「ビッグ・リボウスキ」「ノーカントリー」「バーン・アフター・リーディング」等は好きな方で、「オー・ブラザー」「ディボーズ・ショウ」「レディ・キラーズ」等は苦手な方で、同じ作家の作品群でもここまで好みが異なるのは珍しいなと思ってしまったのだ。「シリアスマン」はどちらかと言えば後者の部類に入りそうであり、決して悲観をするわけでもないが作品の流れに乗れなかったのは寂しい想いである。裏を返せば、それほど作品毎に幅広い色があり、「ノーカントリー」であらゆる賞を総なめにして、「バーン・アフター・リーディング」でハリウッドスターを好きなように操ってたとしても、「シリアスマン」のようにインディペンデントっぽい映画を作ってしまうところ。周囲の喧騒に惑わされず独自のスタンスを貫いている部分が、多くの観客や俳優に愛される理由なのかなと思ったり。


ファーゴ [Blu-ray]ファーゴ [Blu-ray]
(2010/07/02)
フランシス・マクドーマンド、スティーヴ・ブシェーミ 他

映画の詳細を見る



「シリアスマン」がコーエン作品の中でも苦手な部類に入ってしまったのは、自分の知識不足に起因している。今作の主人公のラリーはユダヤ人であり、彼に次々と起こる不幸事を描いているのだが。。。ユダヤ人を取り巻く慣習が劇中では多く登場し、その描写についていけなかった。ユダヤ人コミュニティーの指導者”ラビ”について、13歳での成人の儀式、冒頭の寓話を始めとして概念や信条が理解出来なかったのである。




*****以下、ネタばれ注意*****




 それにしても今作の主人公は受難続きだ。救われる描写は皆無に等しく、夢でも悪い事柄しか起こっていない。冒頭の言葉通り「身に降りかかるあらゆるものを受け入れよ」ということか。迫りくる竜巻と自分の健康に対する良からぬ知らせ…このラストに関しては、生徒の評価を改竄した直後に転じた事象だ。因果応報といえばそれまでだが、静かに近寄ってくる巨大な竜巻は、先の読めない人生そのものであり、味わい深い余韻を残している。


■関連作品■
ノーカントリー ★★★★
バーン・アフター・リーディング ★★★
レディ・キラーズ ★★
テーマ:映画感想
ジャンル:映画