サプライズ [Blu-ray]サプライズ [Blu-ray]
(2014/04/16)
シャーニ・ヴィンソン、ニコラス・トゥッチ 他

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観客・登場人物が感じるサプライズ


 予告編の印象ではホラーかと思っていたが、実際はスプラッター+サスペンス+コメディの融合。一言で表するなら実に”にぎやか”な映画である。R-15のレイティングで激しい残虐描写はあるものの、上質な映像と、繰り返される「Looking for the Magic」(Dwight Twilley )も相まって、スカッとする後味だ。

 本編では、両親の結婚35周年祝いに集まった家族10人を助けを呼べない状況で、別荘に閉じ込めておく必要がある。携帯電話の普及のせいでミステリー小説が成立しなくなったといわれる昨今。劇中ではジャマーなる電波妨害装置で、いとも簡単にそれらの端末使用を禁じたのは目新しい方法だった。劇中のように広範囲で妨害電波が効くのか怪しいところだが、今後ミステリー系の脚本で重宝されそうな小道具ではある。




*****以下、ネタばれ注意*****




 邦題は「サプライズ」。何がサプライズかと言えば犯人の正体ではなく、一般学生に思えた絶妙に華のないヒロイン(笑)が実は、ジェイソン・ボーン並の能力を持っていたことである。つまり観客が感じるサプライズというよりは、犯人グループが感じた不意打ち、サプライズという流れだ。

 しかし突っ込み所は多い。
・犯人グループが動物のお面を被る必要性→視界が制限されるし、仮に顔を見られたくないのであれば普通の目出し帽でよい。結局は「映画の画作りのため」の域を超えていない。
・殺人計画の無謀さ、意味のない行動→短いクロスボウで窓の外から7人を殺害しようとする計画が甘い。また壁に書く「You're Next」(次はお前だ)の血文字、猟奇殺人に見せるのであれば全員殺害した後でもよい。観客のミスリードを誘うほどのインパクトもなく必要性に欠ける。

 もっとも観客総意の突っ込みはヒロインの生い立ちである。父が妄想に憑りつかれ世界の資源が枯渇すると思い込み、1人でも生き残れるようにサバイバルキャンプで育ったというバックグラウンド。いや、そっちの方がむしろ映画向きだろ!!どんな風に育てればあんな能力が備わるのか、そのサバイバルキャンプを映像化した方がドラマチックではなかろうか。

 それでも、助けを呼びに走り出す娘が速攻でグエッとなる。(スローモーションで死亡フラグも立ちまくり)足に釘が刺さる他、弱小犯人グループはさながらホームアローン。脳天ミキサーと爆笑シーンは多い。色々こねくり回した末に犯行動機が、何の捻りもなく遺産相続に着陸すること、または若すぎる母親の容姿こそが本作1番のサプライズだったのかもしれない。
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(2014/07/02)
ジョエル・キナマン、ゲイリー・オールドマン 他

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オリジナル版と比較される困難な宿命


 例えば今作がリブートではないオリジナル作品だった場合、概ね好意的に鑑賞できただろう。しかし今作は「ロボコップ」であり、タイトルもそのまま「ロボコップ」である。そのように謳っている以上、オリジナルの1987年公開、ポール・ヴァーホーヴェン監督版と比較しない訳にはいかないのだ。

 最初からロボットが配備されている世界、人間としての意識を持ったままロボコップになる、ロボットに改造した後に真っ先に本人に素顔を見せる…等々、オリジナルと比べ多くの差別化が図られている。なかでも印象深いのは、生身の右手だ。それは映画公開前より話題となっており、一部ではスマートフォンを操作するため(笑)との噂もあったほど。実際はオリジナル版ロボコップで、マーフィがクラレンスのショットガンにより吹き飛ばされた部位であり、最も早く失った体の一部を今回は敢えて残すという、洒落たオマージュでもある。また、この右手はクライマックスでの演出に用いる大事な記号となっている点も巧い。しかしである。なにか足りない。思うに本作には突き抜ける快感のようなものが存在しないのだ。




*****以下、ネタばれ注意*****




・オムニ社は義手や義足を作成するなどの社会貢献を果たしており、そこまで巨悪な企業に見えない。同様にノートン博士も悪ではない。
・オリジナルで心底怖かった敵対組織も、今回はよく分からないままフェードアウト。
・なんとなく悪そうだったオムニ社の軍事担当、ジャッキー・アール・ヘイリーもそこまで悪くなくフェードアウト。
・ロボコップは車に変わりバイクに跨るが目立ったアクションシーンはない。

 オリジナルのガソリンスタンド大爆発、ED-209が階段から落ちる、というような”コレだ!!”というインパクトがないのは、やはりマイナスである。私が考えるにロボコップの魅力は重量感、もっと言えば移動が遅い、そして実は弱いことが特徴だと思う。ロボコップのスーツが重すぎたという難点から派生した、この要素こそが愛おしく感じないだろうか。同じ金属ヒーローでは今日、アイアンマンがその地位を築いている。スピーディーさ強さはアイアンマンに渡せば良い。今作のロボコップにスピード感があること、走りジャンプする描写に、やはり違和感を禁じえない。ロボコップは遅く弱くなくては!!

 私はオリジナルの「ロボコップ」が大好きで、小学生の頃、VHSに録画したものを何度も何度も観直していた思い出がある。映画が好きになった原点がロボコップにあると言ってもいいくらいだ。そういう意味で(思い出補正があるにせよ)いかにオリジナルの完成度が高かったのか、またその本家の後を継ぐことが、いかに難度の高い宿命だったかということを今更ながら痛感した次第である。

 それにしても、今作でマーフィの妻を演じたアビー・コーニッシュのセクシーなこと。シャロン・ストーンを匂わせる妖艶さである。アビー・コーニッシュがエロいので良しとするか。


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(2014/12/03)
不明

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ドキュメンタリー映画のひとつの到達点


 常識を覆す映画だ。「殺人を犯した当人が、カメラの前で嬉しそうにその様子を語る」という行為を目の当たりにするからである。しかも針金を首に回し「こうやって殺したんだ」と流暢に話す様は、”人を滅すること=悪”という、今日まで当然に思えた倫理や規範を飛び越えて来そうで心が揺らいだ。

 なぜ、このような事態になったのか??初見時はそこまでの経緯をうまく飲み込めなかったのが正直なところ。鑑賞後インターネット等で、ある程度の知識を得て咀嚼出来た部分はあった。以下、「アクト・オブ・キリング」の要点を。

・1965年、インドネシアでスカルノ大統領親衛隊の一部がクーデターを起こし、陸軍の高級将校6名が殺される。通称9・30事件といわれるが、詳細は現在も不明瞭である。
・9・30事件によりスハルト少将が事態の収拾にあたる。事件の背後には共産主義者が暗躍していたとされ65年~66年の間にインドネシア各地で100万、200万人といわれる人々を虐殺。
・スハルトによる新体制が確立された後の1973年、この虐殺のなかで共産主義者の命を奪った者に対しては、法的制裁を科さないことが検事総長により決定される。
・1998年にスハルトは大統領辞任を宣言するが、その当時のトラウマや思想、社会構造は現在もインドネシアに根付いている。
・ジョシュア・オッペンハイマー監督は当初、この虐殺の被害者側に証言を求めたが撮影の度に軍に阻止され、これを断念。そのようななか、生存者の1人から加害者を撮影してほしいと依頼され実行してみると、自発的に殺人を再現し始めた。

 上記のように人を殺した側が正式に罰せられないこと、当時の思想や体制が継がれているためにカメラの前で悠々と語ることができたのである。この辺りは、映画の冒頭の字幕で最小限の情報のみが流れるため、イントロダクションが掴み難く混乱する要因になっていたと思う。


9・30 世界を震撼させた日――インドネシア政変の真相と波紋 (岩波現代全書)9・30 世界を震撼させた日――インドネシア政変の真相と波紋 (岩波現代全書)
(2014/03/19)
倉沢 愛子

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 「アクト・オブ・キリング」で最も優れている点は、加害者に殺人を”語らせる”だけではなく”演じさせる”ことに踏み入ったことだ。しかもその劇中劇がチープ!!冒頭と終盤の奇妙なダンスシーン、女装するヘルマン、極めつけはアンワルの見る悪夢に登場する悪魔だ。このチープさがブラックな笑いを運ぶ要因に。重い重い内容に鑑賞を続けさせる意欲と、映画本来のエンターテイメント性が入り雑じり、それまでにない味を醸し出している。悪魔登場シーンは白い煙と相まって「マルホランド・ドライブ」におけるクラブ・シレンシオに座っているかのよう。映画も虐殺も全ては幻であり悪夢であってほしいと願うが、エンドロールおける大量の”匿名(ANONYMOUS)”の波が今なお続く現実を突き付けている。




*****以下、ネタばれ注意*****




 「ゆきゆきて、神軍」で奥崎謙三氏が、部下射殺事件の真相を話さない元隊員に殴りかかるシーンでは、見てはいけないものを見たという嫌な気持ちになった。本作でもアンワルの隣人スルヨノが、自分の継父が殺された経緯を、全員の前で独白する箇所でも同じようにばつが悪かった。そしてラストである。アンワルの嘔吐では率直にこの人にも、良心の呵責があったのかとホッとすると同時に、延々と続くように思われる地鳴のような音と嘔吐に、またしても見てはいけないものを見てしまったという、恐ろしい気持ちに包まれた。背中を丸め階段を下りる姿に、作品前半で見せた陽気さは一切ない。

 演技ではない、人が一生のうちに1度見せるかどうかの、行動・行為・感情の極みをフィルムに焼き付け、それを不特定多数の他人が傍観する。これこそがドキュメンタリー映画のひとつの到達点といえないだろうか。傍観の後になにを思うか。公平な人権、公平な思想、公平な議論、、、ANONYMOUSの文字が消えゆく世界を願うばかりだ。
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(2014/04/02)
マイケル・ファスベンダー、ペネロペ・クルス 他

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ダイアローグ(対話劇)の後ろで進行しているシステム


 退屈な作品だな、と開始1時間は思っていた。ハリウッドスターは出演しているが、会話ばかりで動きがない。なにより物語の芯が見えないのだ。主人公(カウンセラー:マイケル・ファスベンダー)はどのような立場で何をしようとしているのか、登場人物それぞれが物語を推進させる台詞ではなく、深遠な言葉が並ぶのも何処か堅苦しかった。しかし後半は一変する。

 ラストまで物語が進むと、前半の蛇足に見えた台詞の各々に意味があることが分かる。特にカウンセラーの悲劇を目撃した後に再鑑賞をすると、周囲の警告を無視し安易に裏社会に踏み込んでしまった無防備な様子が際立つ。そのような角度で捉えれば「悪の法則」という作品は2回観ることで、より味わいの増す映画だ。リドリー・スコットの前作「プロメテウス」の出来栄えを個人的に悲観していたが、今回はシャープな映像と演出が戻ってきており、同監督のなかでも上位に位置する作品だと思った。

 本作のポイントは物語の核となる麻薬取引の現場に、主要な人物は近付いていないところ。自分たちの居る場所以外で物事が進むため、本編はダイアローグの積み重ねとなる。またスリリングで動きのある麻薬取引の顛末を後半に置いたことだ。これは脚本のコーマック・マッカーシーの名を一躍世界に知らせめた「ノーカントリー」とは真逆の構造である。「ノーカントリー」では、同じく麻薬取引でこじれた現金入りのブリーフケースの行く末をウェリン・モスとアントン・シガーの攻防をアクション交じりに描くのだが、後半はエド・トム・ベル保安官の捜査と引退の話を軸にダイアローグ中心となるのだ。「ノーカントリー」では動から静へ、「悪の法則」は静から動へといった具合である。共通することは人の欲と理不尽なシステムに巻き込まれた際には止めようがないということだ。




*****以下、ネタばれ注意*****




 強烈なのは”ボリート”。首を締め付け切断する殺人装置である。あれほど裏社会に精通し余裕に振舞っていたウェストリー(ブラッド・ピット)もボリートの餌食に。1度起動したら止まらないシステムという点では本作の教訓を想起させる殺人マシンである。埃っぽい砂地の描写から一変して、ロンドンの都会ど真ん中でボリートに巻き込まれるブラッド・ピットの最期は、ソリッドな音楽と併せ緊迫感抜群だ。

 また、カウンセラーとカルテルのボスのやりとりも興味深い。どこまで懇願しても妻のローラを救出することは無理だと悟るカウンセラー。「犯した過ちを取り消そうとする世界は過ちを犯した世界とはもはや違う。今あなたは岐路にいて道を選びたいと思う。だが選択はできない 受け入れるだけ」淡々と語る口調がなお怖い。慈悲も感情も存在し得ない、動き出せば止まらないアーキテクト、世の常をコーマック・マッカーシーは非情にも描く。


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(2014/04/23)
サンドラ・ブロック、ジョージ・クルーニー 他

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舞台は広大な宇宙、しかしテーマは極めて内観的。


 圧倒的な臨場感、洗練された映像。早くメイキングが観たい!!と思わせる映画だ。劇場3D字幕版とブルーレイでそれぞれ鑑賞したが、画面から受ける印象が全く異なる。17分とも言われる冒頭の長回し、ライアンのヘルメット内部からの視点、ほぼリアルタイムで進む物語...これらの要素を鑑みて特に「ゼロ・グラビティ」という映画は、最高の環境で鑑賞または”体感”しなければ充分に伝わらない作品だと強く思った。私の周り(大分県)にIMAXの劇場がないこと、福岡まで鑑賞に行けばよかったと後悔するほどである。

 映像の凄さは言わずもがな、やはりその製作過程が本編に増して凄いことに。船外活動のシーンでは、原寸大に宇宙服や小道具を作成したものの使用するのは役者の顔のみ、後は全てCG。またシーンによる動きが事前に決定されており、役者は好きなようには振舞えない、それでいて自然に見せるのは大変なことだ。船内のシーンでは、これまでにない12本のワイヤーを使用し無重力空間を表現。自分の涙の中に逆さまに映るサンドラ・ブロックのなんと美しいこと!!

極めつけはスペースデブリだ。漆黒の闇を切り裂く轟音と未曾有のレイヤー重ね。レンダリングの作業時間が1フレームに15時間以上。1台のコンピュータで全編処理するには紀元前5000年に始める必要があり、メモリを500テラバイト使用、ipodが2万5000台分に相当するとのこと。これらの数値からも、本作がいかに野心的で高度な技術を試したかが分かる。




*****以下、ネタばれ注意*****




 劇中には誕生を連想させる記号が点在している。サンドラ・ブロックとジョージ・クルーニーが命綱で繋がっている箇所は臍帯を。エアロック内で宇宙服を脱ぎ捨て身を丸める姿は胎児を。地球へ帰還し水中から陸へ歩む様は羊水から体外へ、また、微生物から始まった進化が哺乳類となり地面へ降り立つ過程を体現している。3Dや臨場感、テクニカルな映像に注視しがちだが、多くの人を惹きつける普遍の象徴が全編に詰まっているのだ。舞台は無限に広がる壮大な宇宙、しかしテーマは内省からの回帰を描く。喪失から再誕へ。重力を感じ、大地に感謝を示したライアンに新たな人生が拓かれる。


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