「パンチドランク・ラブ」は『無国籍映画』とも言える新しい感覚の作品だった。
主人公のバリーには口うるさい姉が7人もいる、バリーはかんしゃく持ちである、マイレージを稼ぐためにプリンを大量に購入、セックスダイアルを使用したがために脅される、吸盤棒を扱うよく分からない事業。このような興味を惹くエピソードが劇中には散りばめられているのだが、全てにおいて深く入り込まずにそれぞれれのオチを半ば放棄している。
恋愛映画にある、片想いから紆余曲折の末にめでたくハッピーに!!という時間帯もなく、2人の仲が危ぶまれるほどの大きなケンカも出来事もない、大きな見せ場もない。最初に道を横切ったトレーラー、食事の後の道で横切ったトレーラー、道端に捨てられたハーモニウムは何らかのメタファーだったのか??よくよく思い直すと理不尽なことも消化不良の点も多い。なのに今作は隅に置けないほどに面白く、画面から熱が伝わってくるほどに刺激的な映像体験だった。
「ブギー・ナイツ」「マグノリア」で群像劇を描ききったポール・トーマス・アンダーソン監督は、今作で様々な実験をしているように思う。それは映画に対する新たなアプローチや文法の提案であり、全く受け付けない人も多数いたのではないだろうか。今作に関して、手放しに素晴らしいとは言えないものの、新たな伝達手段のヒントがある気がしてならない、そのような意味でも監督の今後の作品に期待を込めたいものだ。
ポール・トーマス・アンダーソン作品常連のフィリップ・シーモア・ホフマンがやはり面白かった。「shut up!!」と連呼する電話のシーンが今作最大の見所だろう。登場時間が短かったせいか、セックスダイアルのボスとして、彼にスポットを当てた物語も見てみたくなった。
■関連■
M:I-3 ★★★ブギー・ナイツ ★★★★
マグノリア ★★★★★