パンズ・ラビリンス [Blu-ray]パンズ・ラビリンス [Blu-ray]
(2013/05/22)
イバナ・バケロ、セルジ・ロペス 他

映画の詳細を見る



 戦争やファシズムを題材にした映画は数多くあるが、子供の目線から語るというのはそうない。それに付け加えて劇中では、少女オフェリアの精神世界をも描いており、世間ではダークファンタジーと称されている異色の作品だ。




*****以下、ネタばれ注意*****




 幼い少女が思い描く世界というのは、それは色彩に富んだ華やかなイメージを連想させるがパンズ・ラビリンスは限りなく暗い。洞窟や地下室が舞台であり、虫が這いずり回り奇妙なクリーチャーが潜む光景が広がるのだ。しかしそのようなダークな世界以上に醜いのが現実の世界である。スペイン内戦下の独裁政治に感化された、ビダル大尉の歪んだ思想・言動はまさしく恐怖・脅威であった。

 この現実世界とファンタジーの世界との対比・対等関係が今作の脚本の巧いところだ。オフェリアは醜い現実から逃避するためにパンズ・ラビリンスを創り上げたのではなく、現実と対峙するために醜い世界を創り上げたのであり、自らに課した3つの試練は最終的には他者を守るという行動に繋がっていく。

 重くネガティブな作品にも捉えられるが、一握の希望を信じながら前へ進んでいくオフェリアの姿には胸うたれるものがあった。最後は死というこの上ない結末を迎えてしまうものの、暗い画が連続で続いていた作品中で、唯一煌びやかに映ったラストの景観は忘れることはできない。賛否はあるかと思うが、個人的には最高のエンディングであり、この美しさと哀しさの感情の共存・混同こそ、戦争の凄惨を際立たせる唯一の奇策だったのだろう。

スポンサーサイト
テーマ:映画感想
ジャンル:映画
コメント
はじめまして、ミクシイの足跡から来ました。
なかなか面白いブログですね。趣味も合います(笑)
『パンズ・ラビリンス』評、興味深く読ませていただきました。
「現実と対峙するために醜い世界を創り上げた」ということは完全にあれは少女の空想だと解釈してるわけですね。
そうするとその「ために」で繋がる因果関係がよくわからない。
この映画が現実とファンタジーを並行的に描いているのは「現実」がいかにファンタジックかを示しているのであり、少女の動機は映画にとって二の次なのだが、それでもあえて理由を考えると、現実の過酷さから逃れるために、乗り越えられる苦難とハッピーエンドを自ら用意したと言えるのではなかろうか。
いかがお考えですか?
2007/10/26(Fri) 00:05 | URL | マードック | 【編集
マードックさん、こんばんは!!
思慮深いコメントありがとうございます。

「パンズ・ラビリンス」は人によって賛否や解釈がはっきりと分かれる面白い作品だと思います。対峙という形容をしたのは、ファンタジーの世界も暗く醜いもので、現実世界の事象が何らかの因果で繋がっていると思えたからです。オフェリオの逃避ならば、完全に輝かしい世界を描くのではと感じました。
ただブドウを簡単に食べてしまったりと、そのような言動から「乗り越えられる苦難・逃避」という考えも出来ますね。マードックさんの「現実がいかにファンタジックかを示している」というコメントは逆説的で興味深いです。
2007/10/26(Fri) 00:36 | URL | >マードックさんへ | 【編集
足跡からきました!まだ観てませんが、日曜日に行きます。
また感想を書きにくるかもしれませんが、その時はよろしく。
実家喫茶店ですが、少しってか、かなり遠いですね。
2007/10/26(Fri) 14:27 | URL | ホタクン | 【編集
「パンズ・ラビリンス」日曜日に鑑賞に行くんですね!!上のほうでも書きましたが人によって、見解や好みが分かれる作品だと思います。よろしければまた、感想を書きに来てください!!
2007/10/26(Fri) 20:12 | URL | >ホタクンさんへ | 【編集
ミクシィからです。
わたしもエンディングがよかったと思います。

こうやってきちんと文章にできるのすごいなあ
読んで面白かったです。
2007/10/27(Sat) 04:59 | URL | moimoi | 【編集
コメントありがとうございます!!
ブログを褒めていただいて嬉しいです^^
出来る限り多くの映画を紹介していくので
今後ともよろしくお願いします!!
2007/10/27(Sat) 05:27 | URL | >moimoiさんへ | 【編集
足跡からお邪魔しましたが、この作品絡みだったんですね。

ラストが悲しすぎるという声もありますが、私は感動しました。
美しいラストです。
2007/10/27(Sat) 15:31 | URL | トラビス | 【編集
ラストも賛否分かれますね。
僕もトラビスさんと同じく美しさとある種の解放を感じてとても感動しました。ただその感動の後には、戦争の悲惨さも押し寄せてきて…その混同こそがこの作品の狙いだと思いました。
2007/10/27(Sat) 17:10 | URL | >トラビスさんへ | 【編集
mixiから来ました。

私の場合は人が殺されるシーンがとても耐えられなくて、目を背けてしまうことが何度もありました。そのようなシーンさえなければまた見たいと思いましたが、それでは、この映画はガラリと変わってしまうんでしょうね。改めて考えると、どんなに見ているのが辛くても、必要なシーンだと思いました。

どうしても理解ができなかったというか、私の理解力不足でしょうか、
あの手に目がある怪物が理解できませんでした。現実世界でも理解できないことはたくさんありますが。
どうしてあんな姿でなければならないのか。それは監督がどういう意味で作ったにせよ、見た人が自分なりの答えを出していいものだと思いますが、何も思いつけませんでした。

どのように理解されたら、もしよければお聞かせください。

色々な考えの方がいらっしゃいますが、私は好きです。
ちょっと違いますが、『死んだら天国にいける』という考えに似ていますね。
2007/10/27(Sat) 19:21 | URL | m | 【編集
コメントありがとうございます!!
たしかに華やかなポスターやファンタジーというイメージから離れて残酷なシーンが多かったですね。年齢指定もありますが、mさんと同じくこの物語を表現する上では必要なものだと思います。

手に目がある怪物に関しては僕もよく分かりませんでした。なんらかの理由がないと、あのような造形にならないとは思います。もしかしたらマンドラゴラの根のように、出典があるのかもしれないです。

推測なのですが、本来あるべき場所に目がないため、前を見ようとすると逆に手が使えなくなります。視覚と触覚を同時に機能的に使用できないのは、例えば現実世界での閉塞感などを表現しているのかなとも思います。
あくまで推測なので、、、しかも的を外している気も(笑) 今作のように色々な考え方が生まれる映画は好きです。
2007/10/27(Sat) 20:42 | URL | >mさんへ | 【編集
足跡から来ました。あの映画を文章で表現できるなんて、すごいです^^しかも、とてもわかりやすかったです。
私も「パンズ・ラビリンス」はオフェリアの夢(=空想の世界)だと思ってます。夢(寝ている時にみる)では本人の願望を叶えようとしているらしいので、つまりオフェリアの願望とは「現実からの逃避」と「生まれてくる弟の死」だったのかな、と。弟に早く会いたいと口にする一方で、強いコンプレックスや嫉妬を感じていたのではないかと。そしてラストでその暗い願いに打ち勝つことができた、のでしょうか??(自分でも整理が付かない部分です><;)
ラストの王国は全てが煌めいて見えて本当に印象的でした。
また読みにお邪魔させていただきますね。
2007/10/28(Sun) 08:22 | URL | へぼ | 【編集
はじめまして!!コメントありがとうございます。
「弟に早く会いたいと口にする一方で、強いコンプレックスや嫉妬を感じていた」こういう見方もたしかに出来ますね。人によって意見が様々なのでコメントをいただく度になるほど、と思うことばかりです。
またDVDで鑑賞するときには、自分の考え方や捉え方も変化しているかもしれません。
今後ともブログをよろしくお願いします!!
2007/10/28(Sun) 12:01 | URL | >へぼさんへ | 【編集
mixiからお邪魔させていただきます、足跡、ありがとうございました。
先日「パンズ・ラビリンス」観て参りました。mixiの日記では少々「包み隠して」というか、観た報告だけのつもりでしたので、少々文章の書き方や言葉が拙く、何か不快な思いをされましたら申し訳ありません;
現実も幻想も、一つ一つの出来事に対して人それぞれの解釈が出来る可能性が持たされていて、とても奥の深い作品だと感じました。個人的にはペイルマンがとても恐かったです。姿・動作もですが「目を外している」事が何か恐ろしい事を意味している気がして不気味でした。ですがそれ以上に大尉が恐ろしくて、画面に登場する度に緊張していました。力による暴力だけではなくて精神的な暴力を持ってる存在というのは恐いですね。ラストに関しては色々と賛否両論のようですが、何にせよ彼女が一瞬でも笑った事が救いで一番美しい事だったと思いました。宮殿の美しさも忘れられません。
まさきさんの文章での表現、とても素敵だと思います。それぞれの事項への解釈やペイルマンの存在意義など興味深く読ませていただきました。ダークファンタジーに触れたのは今回が初めてですが、ここまで奥が深いとは驚きでした。
またお邪魔させていただきますね。ありがとうございました!
2007/10/31(Wed) 23:37 | URL | もじゃ | 【編集
こんばんは!!コメントありがとうございます。
このような現実と幻想の世界を行き来する、しかも戦争が背景にあるなかでという設定は珍しいですよね。ブログのコメントもこの作品は多いですし、沢山の方が関心をもっているんだなと思いました。
もじゃさんの言うようにオフェリアが最後、一瞬笑っていたというのは救いがありますよね。あの描写があるのとないのとでは解釈等も変わってきそうです。
今後も映画を紹介していきますので、是非、覗いてみてください!!
2007/11/01(Thu) 00:03 | URL | >もじゃさんへ | 【編集
こんにちは。mixiの足跡からたどってきました。
上にあるマードックさんとの「現実と対峙するために醜い世界を創り上げた」に関する対話を興味深く読ませて貰いました。
現実と迷宮の世界は表裏一体で、見える人や捉える人によっていかようにも見えたり見えなかったりする暗喩と思いました。
mixiでは中身には余り触れず、見た目のイメージをつづりましたが、自分の感想ノートでは、「結局無垢なるもののみが正しく見え、自己犠牲によってもたらされる平和と安定といったものがこの映画の根源的なテーマで、画面の半分を覆うフランコの軍事政権とレジスタンスとの戦いの虚しさが対比となって効いてくる」と記しています。

ところで、これだけの作品をblogに連ねるのは大変ですね。今個人的にタグで映画ページを作っていますが(まだ非公開)、結構手間が掛かります。参考にさせてもらいました。

またちょくちょくお邪魔させてもらいます。
2007/11/01(Thu) 13:40 | URL | ばあこふ | 【編集
ばあこふさん、こんばんは!!
「無垢なるもののみが正しく見え」この見方は目から鱗でした。そうするとパンズ・ラビリンスの存在を柔軟に考えられますし、子供の視点から描いているのが活きているなと思いました。

タグでページを作っているんですね!!公開したら是非、アドレスを教えてください。今後ともよろしくお願いします。
2007/11/01(Thu) 20:13 | URL | >ばあこふさんへ | 【編集
mixiの足跡から来ました。
久々にすごい映画を観た、という気がしました。
確かに最後には、レジスタンスたちの戦いさえも、もう虚しく思えてきますね。

2007/11/04(Sun) 20:18 | URL | すずらん | 【編集
はじめまして、コメントありがとうございます。
「パンズ・ラビリンス」は沢山コメントを頂いていて、捉え方が千差万別なのでDVDでもう一度鑑賞すると僕自身の観方も変わるかもしれません。
また、すずらさんの好きな作品は僕と近いものが多いです!!今後ともよろしくお願いします。
2007/11/04(Sun) 20:54 | URL | >すずらんさんへ | 【編集
深い解釈と的確な表現に惹かれるブログですね。
この映画に関しては映画を見てから読ませていただきました。
これほど人それぞれで、反応が予想できない映画も初めてです。
高品質で高インパクトな作品だとは思いますが、残念ながら再度見直す勇気はありません。
2007/11/04(Sun) 23:01 | URL | うーたん | 【編集
高品質で高インパクト…たしかにそうですね。
映像は強く記憶に残りやすいと思います。
映画館では細かいところまで観れなかったのですが、DVDがリリースされた際にはパンズ・ラビリンスのシーンを中心に見直したいと思います。
2007/11/05(Mon) 00:17 | URL | >うーたんさんへ | 【編集
ミクシイから来ました。
そうか、ラストは戦争の凄惨を際立たせる為だったのか!どっちが勝っても戦争にハッピーエンドはありませんものね。納得です。いい映画だった!
2007/11/25(Sun) 12:36 | URL | 遊体X | 【編集
コメントありがとうございます!!
ブログを見ていただいて嬉しいです。
ラストの情景は戦争の暗い画と対比させて、鮮明に記憶に残っていますね。
2007/11/25(Sun) 12:53 | URL | >遊体Xさんへ | 【編集
ラスト
TBありがとう。
ラストの幻想世界についてはいろんな解釈がありますが、僕はあれでよかったと思いますし、冒頭の死の提示と円環することで、主題もはっきりしたように思いました。
2008/03/27(Thu) 16:18 | URL | kimion20002000 | 【編集
コメントありがとうございます。
こんばんは!!コメントありがとうございます。
ラストは確かに好き嫌い分かれますね。
僕もあのラスト、物語の閉じ方は好きでした。最後のシーンは美しいですよね。
2008/03/28(Fri) 01:26 | URL | >kimion20002000さんへ | 【編集
こんにちは
こんにちは。私もミクシィから来ました。
最近観た映画で、他の人は、こうみているのかと記事を見ました。

いろいろな映画をみているんですね。今後映画をみる参考にさせていただきます
2008/04/02(Wed) 13:15 | URL | 愁 | 【編集
こんにちは!!
コメントありがとうございます。

最新の映画を出来る限り紹介していますので、時間があるときに覗いてみてください!!
今後ともよろしくお願いします。
2008/04/02(Wed) 14:00 | URL | >愁さんへ | 【編集
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事へのトラックバック
1944年のスペイン内戦下を舞台に現実と迷宮の狭間で3つの試練を乗り越える少女の成長を描くダーク・ファンタジー。『デビルズ・バックボーン』のギレルモ・デル・トロ監督がメガホンをとり、ファシズムという厳しい現実から逃れるため、架空の世界に入り込む少女を通じて
2008/03/27(Thu) 16:14:22 |  サーカスな日々