知らない者同士が出会ってから恋に落ちるまで、これほど説得力をもって鑑賞できたのは今作が初めてだった。特筆すべきは劇中のほとんどがイーサン・ホークとジュリー・デルピーの会話のみで描かれているということ。劇的な展開、ケンカ、弊害はなく、誰かの主観に偏らずに、カメラは常に出会ったばかりのフレッシュな2人を追い続けている。唯一の制約は飛行機に乗るまでの14時間という時間の縛りのみ。
どうしてこのような自然な台詞を書けるのか不思議に感じるほど、今作は独特のリズムを生み出していた。1番知りたかった、互いの恋人の存在を明かすのは中盤以降であったり、核心を避けながら遠回しに本題に迫っていく。それでも会話の節々やしぐさから2人がどういう人間か、どんな生い立ちでどんな考えをもっているのか、どのような人生観で将来どうしたいのかなどリアルに人物像が伝わってくるのだ。
自分の本音・感情を言葉にださないことは、出会ったばかりの男女によくあること。それを表に示すために用意されたレコード屋の音楽、占い師、詩人、電話をかけるフリをする、など内面を探る演出も非常に巧く、「現実にあり得なくはない」という線を見事にクリアいる。勿論、それはイーサン・ホークとジュリー・デルピーの相性の良さにもあるだろう。今作では台詞が多く、様々な場面で長回しのシーンが用意されている。バス、レコード店、ピンボール台のシーンでは2人の動きや呼吸がぴたりと合っているのが観て分かり、台本があるのか疑問に思うほど自然。個人的にはイーサン・ホークとジュリー・デルピーこそ映画史上に残るベストカップルだと感じたほどだ。
イーサン・ホークは昔から好きな役者だったが今作ほど彼の魅力に満ちた作品はなかっただろう。なんとも皮肉っぽいインテリぶった台詞の数々、自分の内面を素直に言葉に出さずに得意気に語る様子が頭から離れない、そんなイーサン節ともいえる独特な感じがたまらないのだ。ウィーンの駅に着く寸前の電車のなかで、ジュリー・デルピーと別れたくないイーサン・ホークがなんとか彼女を誘い電車から降ろそうと口説くシーン、彼女に将来10年後・20年後を想像させ未来の夫に愛想をつかせて過去にあった男を思い出させる、といった口説き文句またそのときの手振りなどは最高である。
出会いや恋に落ちる際の素晴らしさと高揚感、別れの切なさ、外国の映画でここまで気持ちに同調されるとは自分自身でも驚きであった。
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