コラテラル ★★★★

コラテラル スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray]コラテラル スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray]
(2012/09/14)
トム・クルーズ、ジェイミー・フォックス 他

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 殺害現場とタクシー車内 緊張と安堵の往路


◆タクシーという舞台

 車を運転していると、ものすごくリラックスした気分になる。なにかの記事で読んだのだが、新しい考えやアイディアが生まれる場所として、寝室に次いで車の中という項目が挙げられていた。それだけその空間は居心地が良く、発想の転換の場になり易いということなのだ。

 人を殺し、次のターゲットまで移動しまた人を殺す、その繰り返しの映画「コラテラル」はタクシー車内が重要な舞台であり、緊迫した殺害シーンと相対して車内では、この上ない安息・安堵感が漂っている。それは車が物理的な移動装置という枠を越えて、ヴィンセントとマックスの精神を通わすことのできる唯一の空間になっており、その緩急を付けた演出も今作の魅力と言えるだろう。




*****以下、ネタばれ注意*****




 殺し屋の発する言葉が真っ当に聞こえ、真面目に生きてきたタクシードライバーの意見は否定される、モラルの逆転現象も興味深いところだ。中盤にコヨーテがタクシーの前を横切り、そこでの両者の意識・呼吸が一瞬止まる素晴らしいシーンが用意されている。そのシーンも車中の出来事であり、2人の立場関係が微妙に入れ替わる重要なポイントでもあった。最終的にマックスはその空間を自らの手で破壊することでヴィンセントと対峙することになる。


◆殺し屋とタクシー運転手 2人のプロ

 マイケル・マンの映画はその道のプロ同士がぶつかり合うという設定が多く、今作でもそのベースは変わらない。タクシー運転手のマックスはL.A.の道を熟知しており、目的地まで信号機が何個あるか、特定の時間帯でどの道を通れば最短で辿り着くかを把握しているプロだ。出発前にクロスワードパズルを解いていたり、車内をスプレーを使って掃除するなど神経質・職人気質な性格をちらりと見せるシーンは印象深い。

 また殺し屋のヴィンセントは、どのような状況であっても依頼主から受けたターゲットを確実に殺害するプロである。路地裏でチンピラ2人を瞬時に撃ち抜くシーンは圧巻であり、ただならぬ人物であるということを思い知らされる。そんな彼の人間性が最も表れていたのは、4人目のターゲットを殺害するシーンだ。

 大勢の一般人や警備がいるクラブ内でも臆することなく、敵を倒しながら前へ前へと進んでいく、そこに迷いや躊躇は一切無い。ヴィンセントが人を撃ち抜く時には、胸に2発、頭に1発という確実に獲物を仕留めるルールがあるのだが、4人目のターゲットを殺害する際には途中で弾が切れるものの、再装填してまでも頭を打ち抜いていた。そこに仕事に対する彼なりのプライドや哲学を感じたのだ。無論、2人のプロを描くマイケル・マンこそプロであり、なくてもよい弾切れの演出をあえて見せるのがファンの心理を掴む味付けとなっている。



「コラテラル」オリジナル・サウンドトラック「コラテラル」オリジナル・サウンドトラック
(2004/10/21)
サントラザ・ルーツ feat.コーディ・チェスナット

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◆電車内での対決

 ラストで電車内に追い込まれたマックスが、ドアを挟んでヴィンセントとの銃撃戦に望むシーンがある。拳銃をろくに扱ったことのないタクシードライバーとプロの殺し屋、どう考えても後者に分があるように思えるのだが、おかしなことにマックスは無傷でヴィンセントは銃弾に倒れる。偶然なのか様々な可能性が考えられるが、2人の間で銃や弾の種類に違いがあったものと解釈するのが1番納得がいくだろう。

 マックスが持っていた銃は横転したタクシーの残骸から拾った、それまでヴィンセントが使っていた銃であり、一方のヴィンセントはビルの警備員が所有していた銃を奪って使用していたのである。推測だが元々ヴィンセントが使用していた銃は貫通性の高い弾を装填してあり、警備員の銃は一般的なものでそこまで威力は見込めないもの。銃撃戦のシーンをよく観てみると、ヴィンセント側から撃った弾が電車内のドアを貫通していないようにも見える。

 横転したタクシーから自分の銃を拾えなかったヴィンセント、そこが彼の運命の尽きだったのだろう。すべて憶測の話だが、劇中では銃の経緯を丁寧に描いており、一見あっけないラストシーンに思えた演出も実に練り上げられた見事な展開だと言える。


◆澱んだ空気のL.A.

 タクシーの車内と同様に重要な舞台がL.A.の街だ。様々なアングルから街の状態を映しており、晴天ではなくどこか重く澱んだ空気を臭わせるのは、マックスとヴィンセントの非常に曖昧で危うい距離感や内面を暗示しているかのようだった。そのような映像はHDカメラを用いた夜間撮影の成果であり、他の映画とは一味違う臨場感を体感出来るものだ。「Ready Steady Go」や「Shadow on the Sun」などバラエティに富んだBGMも半日の物語を盛り上げる良質なものばかりである。


■関連作品■
キングダム/見えざる敵 ★★★
マイアミ・バイス ★★
ヒート ★★★★
M:I-3 ★★★

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8 Comments

こもひろ  

こんにちは。

この映画、最近レンタルで観たばかりです。
私は「あっけないラスト…」と思ったんですが、
まさきさんの観方はやはり違いますねぇ!☆

単に自分が観るだけじゃなく、映画好きな人達の
感想を読むと、違った観方をしてるのが良く分かります。

まさきさんの感想は映画雑誌の評論を読んでるような
気分になりますよ!

ではまた☆

2007/11/18 (Sun) 12:46 | REPLY |   

>こもひろさんへ  

こんばんは!!コメントありがとうございます。
後半の銃の入れ替わりは好きですけど、それでもラストのほうは前半のようなテンションが保てていなかったように思えます。女性検事とヴィンセントのビルの中でのシーンやあまり活躍しない刑事の動きなど、傑作の一歩手前になっていた惜しい作品という気がしました。
それでもあの映像や空気感が好きで、なんとなく鑑賞してしまいますね。

2007/11/18 (Sun) 19:50 | EDIT | REPLY |   

HERO  

こんばんは!
ミクシィから来ました。
なぜ、ミクシィ内から個人ブログに飛ぶのかちょっと分からないですが・・・(苦笑)

でも、「コラテラル」やっぱり面白いですね!
基本的にマイケル・マン監督の作品はどれも好きですね。他にも社会派の男と男の骨太作品っていう感じがたまりません。
アル・パチーノ主演の「インサイダー」「エニイ・ギブン・サンデー」などが大好きです!(もし、観られてなかったらお勧めですよっ?)


さて、この本編ですが、私もまさきさんと同様に、マックスとヴィンセントとのトークのぶつかり合い、ストーリーの流れ、BGMの選定、LAのざらついた煌めき・・・みんな好きですね!!!やっぱりカメラにこだわってるだけあって色使いがもの凄く綺麗・・・!

台詞回しもイイですね!言葉はちょっと違いましたが、「人類なんて宇宙から視ればチリ芥に過ぎない」「世界では何秒かに‘幾人もの”ヒトが死んでる。お前は地球の裏側で幼い命が奪われた時、悲しみの涙を流したか?・・・瞬き一つとしてしなかっただろう・・・」

痺れる・・・!

あと、ヴィンセントの殺しのシーンとしては、ジャズメンを問いかけの後に簡単に撃ち抜くシーンも印象的です。。。

後半のシーンはちょっと急いでた感はありましたね。
ヴィンセントに‘現場”に向かわれた後、マックスがすぐに女性検事のいるビル(しかもその階数までも!)を見つけてしまうところとか・・・。


それはそうと、銃の入れ替わりの件ですが、マックスが手にしたのは、ヴィンセントの銃じゃなくて、タクシーの横転によって駆けつけて来た警官のをひったくって使ったヤツではなかったでしたっけ??(違ってたらごめんなさい)


それから、最後のシーンですが、個人的な感想として、銃の入れ替わりによるものというよりも2人の意識の差が、あの結末を生み出したのではないかなぁなんて思ったりもします。
つまり、マックスは女性検事を守らなきゃと必死になってるし、ヴィンセントに対する毛嫌いの念も手伝い、引き金を速くぶっ放した。
それに対し、ヴィンセントはマックスに対して一種の‘情”みたいなモノが生まれててその僅かな感情の揺らぎが、引き金を引くスピードを遅らせてしまったのではないか?
(何故かというと、本当に2人とも始末することしか頭に無かったのなら、ビル内で殺すチャンスはあった。同じ暗闇のルームに居る時、ヴィンセントはマックスと女性検事を殺す決定的なシーンで見逃してる所があるんですよ!・・・女性検事さえ殺れば、ドライバーとしてのマックスの価値は無いに等しいのだから)



長くなってすいませんっっっ


映画って、やっぱりイイモンですなぁ~(笑)

2007/11/19 (Mon) 03:19 | REPLY |   

>HEROさんへ  

こんばんは!!思慮深いコメントありがとうございます。HEROさんもこの映画が好きなんだなということが、文章から伝わってきました。

銃の入れ替わりの件ですが、横転したタクシー内でヴィンセントはまず腰のガンホルダーに手を当てて銃を探しています。そこに警察が来ているのを察知し、銃を諦めヴィンセントはタクシーから逃亡。
マックスは駆けつけた警官にトランクの死体を発見され、警官から銃を突き付けられる。
跪いたそのときに5人目のターゲットが女性検事であることと、残骸の下にヴィンセントの銃が落ちているのを見つけ、銃を拾い警官を脅しています。

何気ないシーンですが、後の警備員のガンホルダーのアップがあるなど銃の経緯は、丁寧に描いていました。

ただ銃が違っていても、HEROさんのおっしゃるように意識の差もラストの対決で関係していたようにも思えます。ヴィンセントの仕事に対する意識、マックスとの関係はコヨーテに遭遇した辺りから少しずつぶれ始め、またマックスは逆に迷いがふっきれて覚醒したようにも見えました。

また台詞もいいですよね。今作は男性のファンが多いようですが、それも分かる気がします。

個人的なことですが「コラテラル」のサントラを買って、福岡空港の夜の外周路を車で走っているときに「Shadow on the Sun」を流したりしてみました。1人コラテラル(笑)なかなか劇中の空気に近いものを味わえた気がします。今作の映像も音楽も相当に好きですね。

2007/11/19 (Mon) 22:29 | EDIT | REPLY |   

パタリロ  

まさきさんは勿論、こもひろさん、HEROさん、それぞれにこの映画を楽しんでみてらっしゃるなあと、嬉しくなりました。映画を楽しんでいる人を見ると私も幸せな気分になります。
 さて「コレテラル」は随分前に見たので、細部は忘れたのですが、やはり銃が換わるシ-ンが最も重要だと思います。このシ-ンがきたとき、ヴィンセントは死ぬと確信しました。数々の伏線を経てのラストに入る前の、きりっと絞ったポイントでしたねえ。まさきさんの分析に脱帽でした。
 私もなんやかんや言いながらトムの映画結構みてるんだなあと、気がつきました。そこはかとなくファンなのかもしれませんね。

2007/11/19 (Mon) 23:12 | REPLY |   

>パタリロさんへ  

 「コラテラル」は好きな作品だったので、文章も長くなってしまいました。ネットの評価などを見ると、世間では意外と賛否両論だったことに驚きました。個人的には隅に置けない作品なのですが、パタリロさんを含めてこの映画が好きな人に出会えて嬉しく思います。
 最近、トム・クルーズの作品ばかり紹介してるなと思ったのと、彼のファンなのかなと改めて思ったりしました。ハリウッドの象徴でもあり大スターですよね!!

2007/11/20 (Tue) 00:18 | EDIT | REPLY |   

cobblepot  

ミクシィからきました。

映像は文章と違って、流れていってしまうので、まさきさんのようにじっくりみるのが苦手です。自分が感覚で捕らえていたものを、まさきさんの文章で認識させてもらえた気がします。ありがとうございました!

2007/11/21 (Wed) 22:10 | EDIT | REPLY |   

>cobblepotさんへ  

こんばんは!!コメントありがとうございます。
「コラテラル」の感想は時間をかけて書きました。色々な映画を紹介するために、出来る限り更新していくので、今後ともどうぞよろしくお願いします^^

2007/11/21 (Wed) 22:31 | EDIT | REPLY |   

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