アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の最新作「バベル」。同監督の前作「21グラム」は1つの心臓を巡って3人の人間模様を描いていたが、今回は1発のライフルの銃弾その経緯を巡り3大陸4言語に渡る、壮大なスケールの群像劇となっている。それぞれの大陸のエピソードには家族があり、コミュニケーション不全や想いのすれ違いから生じた家族の再生と破壊を描いているのだと感じた。
*****以下、ネタばれ注意*****
鑑賞して分かり難かったのは、再生に向かった家族のシナリオ。銃弾をうけるアメリカの夫婦とそのライフルの出所になった日本の親子の不協和・不仲の原因である。台詞の隅々にその要因ともとれるニュアンスはあったが明確ではない。その理由を探るよりも、再生する過程、どのようにすれば想いが伝わるのかが重要なのだろう。
その顛末を追うに銃弾をうけ瀕死になった妻を助けた夫婦、聾唖のため言葉では伝えきれず全身で訴え自殺まで考えていた(個人的にはそのように解釈)少女と父親は互いに想いが通じたと言える。まさに命をかけて伝えたのだ、逆に言えば言葉や言動ではなく命を犠牲にしなければ通じなかったとも言える。
飄々と風が吹きつけるモロッコの砂漠から始まり、バベルの塔に見立てた大都会の高層ビルのベランダで終わる今作、そのラスト浄化ともとれる描写と圧倒的なパノラマに美しさを覚えたが、一方でそのビル群が現代社会のコミュニケーション不全の象徴でもあり、また破壊された家族のことが頭を駆け巡り重く煮えきらない感情に包まれた。
本作では出演者の演技が素晴らしく、話題の菊地凛子もまさに全身全霊で取り組んだという情熱が伝わってくる。本編中の位置付けと存在感からして裏の主役とも言っても過言ではないだろう。個人的には都会的で美しく潔癖症の役を演じていたケイト・ブランシェットに惹かれた。
冗長的なシーンが多く、メキシコ編が本当に必要なのかな?とも思えたが、それも全体のリズムを支える要素である。鑑賞してすぐ今はまだ消化できない部分があるものの時間を置いて別角度から観るとガラリと印象が変わるのかもしれない。
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