セブンス・コンチネント ★★★★★

セブンス・コンチネント [DVD]セブンス・コンチネント [DVD]
(2007/01/12)
ビルギット・ドル、ミヒャエル・ハネケ 他

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 ミヒャエル・ハネケ監督デビュー作にして最高傑作


 自分の身近に居る人の死、病気、貧困、これらが人間の抱える、最も大きいと言われるストレスであり、仮に自殺を考えたり厭世的な気分に支配されるのは、そのような出来事が引き金になることが多い。しかし「セブンス・コンチネント」で提示された、一家心中の理由に前述のようなストレスは一切存在しなかった。家庭は中流かそれ以上、仕事でも昇進を決めて収入も安定、周りの誰も死なず、重い病気もない。一見すると幸せそうに見える家族が、何故そのような人生を選択したのだろうか。




*****以下、ネタばれ注意*****




 序盤から延々と見せていた日常生活の姿は我々自身の毎日であり、大きなストレスは無くとも、道具の使用と支配に反映されたように、繰り返しの日々を生きている。その変わり映えのない世界を嘆いたのか、存在しない第7の大陸を劇中の家庭は目指してしまった。興味深いのは、道具からの解放を叶えるべく家の物、家財に限らず衣類・レコードに至るまでを破壊し価値を無くすという行動だ。お金をトイレで流すという行為も、物質社会からの逃避という心境を顕著に感じてしまう。しかしその道具を破壊するものも道具であり、お金を破棄する際ですらトイレを利用、死ぬ間際までテレビ画面を覗いていたというのは、なんとも滑稽なことではないだろうか。どこまで逃亡を計ろうと、現実世界に存在する闇からは絶対に解放されないとのアイロニーに包まれたメッセージを感じる。

 厭世観とは本来、人に備わっている感覚なのだろうか。その感覚が「道具」によっていよいよ姿を現し、心を蝕んでいく…その心の侵食過程を映像で表現できている映画は少ない。言語や動作でも伝え難く、曖昧で不確定な人間の本性。現在の心の闇とも言える領域に逸早く切り込んだ「セブンス・コンチネント」は、ミヒャエル・ハネケ監督のデビュー作品であり最高傑作だといえる。


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