何かに疲れた男が2人、モーテルに入るとさっきその2人が撃ち殺したであろう死体が横向きに倒れている。彼らが疲弊していた原因は、人を殺したせいだったことが次のシーンで分かるのだ。序盤から展開される、原因と結果を入れ替えた構成は、物語の世界観や恐怖を充分に引き出しており、そこから最後まで緊張感や不安感が絶えることがなかった。
*****以下、ネタばれ注意*****
「ヒストリー・オブ・バイオレンス」は平穏な田舎町で起きた事件を起点に、人の変化、とある家族の変化を描いている。主人公のトムは善き父親として毎日を過ごしていたが、強盗を殺傷したことにより昔の自分を思い出し始め、結局は過去との決別を図るために殺人を犯してしまう。トムの息子は学校でのイジメを無視していたが、父親の変化のせいからクラスメイトに暴力をはたらき、最終的には防衛のためとはいえ人を殺してしまう。
自分を取り戻すために起こした行動が逆に周りを遠ざけるジレンマ。ラストでトムは再び食卓へと戻ってくるが、以前のような幸せな空気はない。なんとも重い雰囲気のなか作品は終わってしまうのだが、幼い娘がトムに食事を差し出すなど僅かに見える希望も余韻を深めた。
変化という観点からすると、序盤と終盤にそれぞれあるセックスシーンが記憶に残る。互いが抱く感情・想いをセックスという最上位のコミュニケーションで交し合う場面、人間の本質やキャラクターの変化が見て取れるシーンとして比較するのも面白いだろう。
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