信じられないタイミングで物語が終わった。エンドロールの字幕が頭に入らず、作品中で初めて聴いたかのような音楽を流し込みながら、心が震えているのを感じた。
「ノーカントリー」には様々なメッセージが込められている。そのなかでも最も印象に残ったのは
「人間ってのはね、奪われたものを取り戻そうとして、さらに失う。結局は出血を止めるしかない。」
という台詞だ。傷の付近に注射器を射し、それらから泥のような血が流れ出すシーンがあるが、その光景と前述の台詞がぴたりと当てはまった。シガー(ハビエル・バルデム)という人間を卓越した存在、脅威の前に人はどのように抵抗しても無駄であるということ。繰り返す暴力の連続は、どちらかが血を抑えるまで、動きを止めるまで終わらないということなのだ。そのような不条理な出来事の繰り返し、世の中の乱れに無常を感じたのが保安官役のトミーリー・ジョーンズである。
*****以下、ネタばれ注意*****
また、面白いことに作品中では、傷を負って若者に着ている上着を売ってくれと、お金を差し出すシーンがモスとシガーの両方にある。どちらも若者は服を差し出し、金を受け取り、立ち去るというものだが、これらの一連のシーンこそ、世の中の乱れを暗示しているものではないだろうか。血のついた金や助けを呼ばない若者の姿に嘆き、老いた保安官の居場所はこの国には無いのだ。
「ノーカントリー」が巧いのは序盤で見せるだけのものは見せ、終盤では出来るだけ隠す演出にまわっているということだ。保安官の首を異常な形相で絞め殺し、高圧銃といういびつな武器で相手の額を撃ち抜く。シガーという脅威の対象を示すシーンは存分に描き、モスやその妻の最期はすべて省かれている。一番の旨味となりうる要素を打ち消してまで、伝えたかった語り口がコーエン兄弟にはあったのだろう。
前半にアクション、スリラーを描き、後半に叙情を広げる。今作のような構成がこれまでの映画にあっただろうか。鑑賞する度に味が深まり、テキサスの広大な景色がいつしか人間の無常観という心象風景に摩り替わりそうである。
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コラテラル ★★★★プラネット・テラー in グラインドハウス ★★★
コーエン兄弟最高傑作と呼び声の
高いこの作品、アカデミー賞受賞
したこともあり、観たい作品の1つでしたが、まさきさんの感想を拝読してより一層、観たくなりました!
コーエン兄弟マジック、健在のようですね♪