一瞬で世界中のあらゆる場所を行き来できる"ジャンプ"。「インビジブル」で描かれた透明人間と同じくらい、使えたら便利な能力である。それまでに行ったことのある場所、もしくは写真や映像を見てイメージするだけでジャンプできるという、言わば"瞬間どこでもドア"であり、自分ならこの力をどのように使うか想像を膨らませてしまう。しかしそのような素晴らしい能力があるにもかかわらず、作品は爽快感を欠き、あっさりとした仕上がりになっていた。期待しただけに落胆も大きいのだが、以下その理由を挙げてみた。
*****以下、ネタばれ注意*****
◆主人公(デヴィッド)の性格と行動
自分のなかにある、ジャンプの能力に気付いた主人公のデヴィッド。さて、どのような行動にでるのか観ていたら銀行の金庫からお金を盗み、赴くままに遊び呆ける正に自由人状態となる。そこにジャンパーを抑止しようとするサミュエル・L・ジャクソンが現れたら、慌てて逃げ出す始末、主人公は単なる強盗に過ぎないのだ。その後、父親を殺されたとのことで、パラディンに対する一応の怒りは納得できるが、彼女の気持ちを射止めるのもお金を使ったローマ旅行だったりと、能力に見合わず妙に小悪党なのが気になる。大量のお金を盗んだのだから悔い改めなさい、と言いたいのだが例えばその能力を使って、火事や災害現場から人を助けるといったシーンが少しでもあれば主人公の見方も変わっていたはずだ。ひたすらに悪いヘイデン・クリステンセンに最後まで同情できなかった。
◆分かりにくい設定
すっきりしなかったのは主人公のみならず、その周囲の人々の設定も分かりづらい。中途半端に絡んでくる母親と何がしたいのかよく分からない父親。さらに敵対するパラディンという組織、中世の頃からジャンパーを捕まえていたようだが、その人数や構成員・規模や追いつめる動機(宗教的なもの??)があまり見えてこない。この辺りの分かりにくさは、続編の狙っているかのような含みを感じ、半端な情報開示が逆にストレスになった。
◆「ジャンパー」らしさとは
「ジャンパー」はアクション映画であり、ジャンプを駆使したファイトシーンを楽しみにしていたのだが、敵対する脅威にジャンパーが居ないことが致命的だった。ジャンプを使うもの同士の対決は、デヴィッドとグリフィンの内輪ゲンカのシーンだけであり、基本的にはジャンパーVS人間の戦いである。ドラゴンボールのように殴って吹っ飛んだ方向にジャンプ→追い討ち攻撃のような独特の魅せ方もなく、目新しかったのは空間を利用してバスを投げたくらいだ。「ジャンパー」しかできない魅力的なアクションをなぜ撮らなかったのか、それこそ実写版ドラゴンボールに配慮したのか、見せ場の少ないアクションシーンだった。
様々な広告をうちだし、大作感を煽っていたが上映時間も89分と非常に短い。世界中のロケーションを取り込み撮影も大変だったと思われるが、本編への製作費よりも広告費の方へお金を注いだのでは、と疑いたくなる出来栄えだ。
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