「ハルク」は2003年にアン・リー監督の下、1度は映画化されているが今作はその続編ではなく、新生の「ハルク」として刷新された作品である。わずか数年で、新たなるプロジェクトを立ち上げることは映画界でも珍しいことだが、ハルクというアメコミヒーローがいかに人気があるかを伺わせる流れだ。
アン・リー監督の「ハルク」はブルース・バナーの内面や人物描写に重きを置きすぎたために、どこかテンポが悪くエンターテイメント性を欠く内容だった。その点を踏まえての新生ハルクだけあり今回は冒頭から展開が速い。2003年版で何十分もかけた、ハルク誕生のエピソードをオープニングクレジットでさっと紹介し、その後は逃亡・変身・活躍をアクション満載で描いている。以下、アクションシーン別に内容を挙げてみた。
*****以下、ネタばれ注意*****
1.ブラジル・スラム街での逃走劇
現実世界にこのような場所があるのかと驚いたのが、ブラジル・スラムの街並みである。「シティ・オブ・ゴッド」を過去に鑑賞したことがあったのだが、今作のように空撮を用いて1ショットで観せられると、その広さと斜面に密集した家々がまるで絵本の世界のものと思えるほど壮観なシーンだった。この地形を利用しての人間VS人間の逃走劇。狭い路地を駆け抜けるのだが、エドワード・ノートン本人が映るアクションシーンはここで最後となり、以降はCGのハルクが暴れることになる。
2.カルヴァー大学敷地内 芝生上での戦い
このシーンで初めてハルクの全体像がはっきりと観えるのだが、真昼間、都会のなかの青々とした芝生の上で戦う様子がなんとも新鮮である。ハルクVS人間なのだが、超人的な動きで攻撃するティム・ロスやガンマ砲を発する新兵器などの見せ場が続く。面白いのは軍隊の重兵器が一斉ではなく順序よく攻撃しているところだ。ジープからハルクに攻撃→破壊される→次の兵器という具合である。芝生の向こうからジャンプして登場するジープが、いちいち可笑しかった。
3.ハルクVSアボミネーション 都心部での戦い
ラストを飾るのがハルクとアボミネーションの決戦であり、都心のど真ん中で、車をなぎ倒しながら2体の重量級の攻防が繰り広げられた。ハルクの相手が人間のみだった2003年版とは異なり、分かり易い悪玉を出現させたことで単純に楽しむことが出来た。「ハルクスマッシュ」も綺麗に決まり気持ちが良いシーンである。
以上、3つのシーンは時間帯やキャラクター、場所を上手に変え様々な角度からアクションの面白さを引き出していた。ルイ・レテリエ監督のアクションに対する志は好きだが、少し残念だったのがCGに見えるところが目立ちすぎたところだ。ハルクはどうしようもないが、ヘリコプターに関しては何とか実機を出現させてほしかった。
また俳優陣も好演していたが、1番目立っていたのはリヴ・タイラーではないだろうか。タクシーの運転手にぶち切れる様子や彼女の体格の良さ、ぎこちない演技が逆に味があるように思えた。
さて、今作で最もテンションが上がったのがロバート・ダウニーJrが登場したラストシーンだ。ハルクVSアイアンマンという、アメコミ屈指の攻撃力とテクノロジーの戦いは誰もが観たい一戦である。しかしマーヴェル・スタジオズはこの2人に止まらず、ソーとキャプテン・アメリカを絡めたアベンジャーズなる一大プロジェクトを進めているようだ。正に夢の共演であるが2011年の公開を予定するその頃まで、現状のアメコミブームが続いているのかが心配でもある。もし実現できるのなら製作費10億ドルをかけたドリームマッチを期待したいものだが…。
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