フィクサー [Blu-ray]フィクサー [Blu-ray]
(2012/02/24)
ジョージ・クルーニー、トム・ウィルキンソン 他

映画の詳細を見る



 硬派な物語に舞い降りるファンタジー


 この映画での"フィクサー"とは"もみ消し屋"のことであり、企業や上流の顧客で面倒事が発生したら、そのことを処理するプロのことを指している。しかし、フィクサーであるジョージ・クルーニーはその職務に関して、劇中ではほとんど触れられることはない。題名に「フィクサー」とあるため彼の華麗な仕事ぶりを期待するとそうでもない、自身のお店が潰れ借金に塗れた、哀れな中年男性が主人公なのだ。

 それに加え、今作の主要人物にはそれぞれに弱みがあり善意も悪意も兼ね備えているため、物語として勧善懲悪が成り立ち難いものになっている。派手な見せ場や爽快感は少ないが、脆い人間性と巨大企業・弁護士事務所とのリレーションシップ、互いのパワーバランスがどのように破綻するのか、地味な演出ながら個人的には大変見応えのある作品だと感じた。

 注目すべきはキャスティングであり、「フィクサー」の主要俳優陣は全員がアカデミー賞に絡んでいる。唯一の受賞となったティルダ・スウィントンも企業の法務責任者として、自身のキャリアとモラルを行き来する苦悩の女性を見事に演じていた。しかし彼女よりも記憶に残ったのはむしろム・ウィルキンソンのほうである。弁護士として企業を守るもその裏の事実を知り、精神を壊しながら行動する様は狂気に近い危いものであった。冒頭のナレーション、彼の独白を聞いたときの恐怖は物語の黒さを示した見事な台詞まわしである。




*****以下、ネタばれ注意*****




 今作はフィクションだが、現実でも似たような事象は起きているのだろう。企業の利潤を追求し過ぎると必ず歪が生じてしまうのだが、それと同時に自分の倫理観も捨てなければ生き残れない。取り戻すことのできない複雑なロジックを泳ぐ中で、ジョージ・クルーニーが出会ったのは3匹の馬である。

 息子から紹介された本の挿絵とリンクした、馬のシーンだがリアリティのある話のなか、本当のコンプライアンスを取り戻す手段として非常に興味深い場面だった。自分の利益や将来と引き換えに行動に打って出る、その最大限の覚悟は、得てしてこのような非現実的な効力が発端となるのかもしれない。硬派な物語に舞い降りる、ある種のファンタジーは清々しい余韻を残すものであった。


■関連作品■
オーシャンズ13 ★★★
バットマン&ロビン/Mr.フリーズの逆襲 ★
バットマン ビギンズ ★★★★
エターナル・サンシャイン ★★★★
スポンサーサイト
テーマ:映画感想
ジャンル:映画
コメント
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事へのトラックバック