12人の怒れる男 ★★★

12人の怒れる男 [DVD]12人の怒れる男 [DVD]
(2009/01/23)
ニキータ・ミハルコフセルゲイ・マコヴェツキイ

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 密室劇の金字塔といえばシドニー・ルメットの「十二人の怒れる男」だ。今作は舞台を現代のロシアに置き換えてアレンジを加えたリメイク作品である。ユニークなのは、1957年版の邦題が「十二人」と漢数字表記に対して、2007年版は「12人」とアラビア数字表記、数字の表記によって作品を区分しているところだ。またリメイク元と同じく、キャラクターが名前を持たず、陪審員1、陪審員2、3、4…12とクレジットされているのも珍しい。撮影中はお互いを何と呼び合っていたのか、どうでもよいことが気になってしまう。

 今作は57年版「十二人~」と大きく異なる点が2つある。ひとつは完全な密室劇ではなくシーンの合間・合間に、被告人である少年の映像が挿入されることだ。孤児から義父に出会うまでの経緯や生い立ちを挟むことにより、彼自身について、また国の紛争についてイメージしやすい演出となっている。

 ふたつめは、どんでん返しや高度な会話劇を狙ったものではなく、議論を進めるうちに自らの内省や、現代ロシアの問題を省みる展開になっていくことだ。陪審員の口から吐露される真実…人種・国の差別やイデオロギーの変化を皮肉たっぷりに会話へ込めているのが見所である。そのためロシアとチェチェンの現状や、そのパワーバランスについて知識がなければ理解に苦しむ台詞が多い。少年の罪を問う際に生じてしまった偏見、そこから国の現状を見つめ直すスパイラル状に広まる構成が新鮮に思えた。




*****以下、ネタばれ注意*****




 有罪11人:無罪1人から、有罪1人:無罪11人に転じるまではおおよそ検討はつく、驚くべきはその後だ。「路上より刑務所のほうが長生きできる」。少年の釈放後を察し、わざと有罪にするほうが良いのでは?と説くのである。日本に居ては理解し難い提案だが、なにか生々しさと世の中の非常さ冷淡さを感じた。色々なことを思い巡らされる2時間40分。「意義のある時間だった」と最後に陪審員の1人がつぶやくが、まさに自分自身に跳ね返ってくるような響きだった。
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2 Comments

lily-rose  

12人の怒れる男

こんにちは。初めて書き込みさせていただきます。

去年見た中で一番面白いと思いました。
オリジナルを生かしつつ、ロシアとチェチェンの関係をうまく描いていると思いました。
少年のナイフを使った踊りが印象的でした。

最近「チェチェンへ~アレクサンドラの旅」という、やはり”チェチェンもの”を見ましたが、こちらは暴力的な要素が一切ない、静かな反戦映画でした。
私には良さがあまりよくわからなかったけれど…。

2009/01/19 (Mon) 09:18 | REPLY |   

> lily-roseさんへ  

世界情勢に疎くて…

コメントありがとうございます^^

物語は見応えのあるものでしたが、自分自身がロシアとチェチェンの状況について疎くて…もっとその辺りの知識をもって鑑賞していたら、深みが変わっていたかもしれないです。

少年のダンスは僕も印象に残っています。また彼の状態を表現した鳥の演出が好きでした。

2009/01/19 (Mon) 16:57 | EDIT | REPLY |   

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