カノン [DVD]カノン [DVD]
(2001/06/22)
フィリップ・ナオンブランダン・ルノワール

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「この映画はすべてのモラルに戦いを挑んだ元馬肉屋の物語である」

 冒頭の言葉から既に攻撃的だ。「カノン」は1人の中年男性の姿を追うだけのスタートーリーなのだが、彼の頭の中では世間や人に対する不満が募っており、延々とその愚痴を聞かされることになる。リール郊外、パリなど不況下の街並みや活気のない人々、夜のシーンなど静的な画が多いのだが画面が切り替わるときに効果音が挿入されていたり、フィリップ・ナオンの独白のナレーションのせいか最初から最後まで緊張感が絶えない。

 「どんな時も孤独 セックスするときも孤独 肉体も孤独 命も孤独」「誰とも何も共有することはない」「人間関係なんて裏を返せば損得勘定にすぎない」「性欲が消されればこの世でやることがなくなる 人なんて性欲だけだ」

 とにかく世の中に人生観に不満だらけなのだが、過激なもの差別的なものが多い中にも、所々でユーモアに聞こえる箇所もある。また妊娠中の妻の腹を殴り堕胎させる、娘を犯す、娘を殺すなど冒頭の字幕通り、様々なモラルに反抗し世間でタブー視されている言動を次々と見せるのだ。これらの独白や行動だけで物語が終われば、ただの不謹慎・不可解な映画なのだがラストで不意に感動を覚えるシーンが訪れる。

 人によってはそれまでの行いから許せないと思う人も居るだろうが、80分近く独白した後にあの表情や台詞を言われると、一転してこの中年男性に深みをかんじてしまうのだ。彼の人格を肯定する訳ではないが完全に否定も出来ない。厭世主義とも違う、彼にはまだ生きる活力があり、何かがひっかかる隅に置けない人物像を作り上げたのではないだろうか。

「生きることは利己的な行為であり、生き残ることは本能の定めである」彼自身、その言葉の理解と矛盾の狭間で苦しんでいるだけかもしれない。
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テーマ:映画感想
ジャンル:映画
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