脳内ニューヨーク [DVD]脳内ニューヨーク [DVD]
(2010/07/21)
フィリップ・シーモア・ホフマン、サマンサ・モートン 他

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 チャーリー・カウフマン初監督作にて壮大な意欲作


 「脳内ニューヨーク」を公開初日に鑑賞しに行く。気づけば2日後にもう1度、今作を観に行っていた。チャーリー・カウフマン初監督作品「脳内ニューヨーク」は過去に脚本した「マルコビッチの穴」「エターナル・サンシャイン」「アダプテーション」を超えた奇妙で壮大な傑作である。オリジナリティとユーモアに溢れ、それでいて感情に訴えかける素晴らしい映像体験だった。

 登場人物の一風変わった因果関係と物語の設定からか、1度観ただけで今作を理解するのは難しい。2回観ると、ようやくその世界を受け入れることができ、主人公ケイデンの内面もより深く注視することができる。




*****以下、ネタばれ注意*****




 物語を難解にしているのが現実世界と、病気に冒され家族と離れ、人生に絶望したケイデンが見る空想の世界、そして巨大な倉庫内で演じている"もう一つのニューヨーク"の世界が混在していることだろう。厄介なのは今作がケイデンの完全な主観ではないことだ。「脳内ニューヨーク」で最もユニークなシークエンスのひとつ、常に燃えている家の最初の出だしは、ヘイゼルの視点であり、さらには燃えていることにも彼女は突っ込みをいれている。その他にもミリセントの回想シーンで登場する母親は、"もう一つのニューヨーク"の登場人物であり序盤で登場したテレビの中の女性でもあった。100%ケイデンの主観ならば、妄想の一言で片付くのだが・・・

 そうすると"燃えている家"もミリセントの回想も巨大倉庫内での演技・演出ではないのか??物語の最初から既にケイデンの壮大な劇がスタートしていたのでは??などと突拍子もないことまで考えてしまう。ラストでカートを運転しているケイデンの向かう先が、物語の冒頭の7時44分へ行っているのも何か思わせぶりな演出である。倉庫内に第2倉庫ができたときには、劇中内劇内劇が繰り広げられており、無限に広がるパラレルワールド、幾何学模様をじっと眺めるような不思議な感覚に陥ったものだ。

 そのような混乱の境地でも物語の軸は決してぶれることはない。人生の晩年と秋を重ねた詩で始まる冒頭。病気、家族との別れ、愛する人の死、それらを経験し一層の孤独と疎外感を重ねる男の心境の推移が作品根底にある。度重なる死の描写、その執着にチャーリー・カウフマン自身に何かあったのでは??と勘ぐりたくなるほどだった。それだけ彼も歳をとったということだろうか。
 
 実に奇妙な物語だが、"ウォーリーを探せ"のごとく画面の後ろにしれっと映るサミーを探したり、現実世界で起きている不安定な世界情勢(戦争かなにか)を想像してみたり、とにかく何度観ても発見のある作品である。気づけば自分の世界も所詮自分自身を演じているだけで、決められたことを毎日繰り返しているだけかもしれない。それでもカウフマンは言う「誰一人エキストラじゃない 皆それぞれの人生の主役だ 出番を必要としている」 なかなか気の利いた台詞ではなかろうか。


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パンチドランク・ラブ ★★★
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