ハート・ロッカー (期間限定価格版) [Blu-ray]ハート・ロッカー (期間限定価格版) [Blu-ray]
(2013/02/02)
ジェレミー・レナー、アンソニー・マッキー 他

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 爆弾に特化した新しいタイプの戦争映画


 「ハート・ロッカー」は意外性に満ちた作品だった。何の前触れもなく突然死んでいく兵士たち。冒頭でいきなりガイ・ピアーズが爆死した時からラストまで、もしかしてこのキャラクターは死ぬのでは??という緊張感が解かれることはない。また戦争映画に欠かせない戦闘シーンには(大部分で)敵兵の姿はおらず、対峙するのは物静かに横たわっている爆弾である。それに加え爆弾を処理する際にはその周囲の状況、起爆装置を握っている人物を特定しなければならないことも更なる緊張を煽っていた。そのような演出・構成は他の作品との差別化に成功し、ついにはアカデミー作品賞をも受賞してしまう。世界のあらゆる興業成績を塗り変え、3D映画の礎を築いた「アバター」に勝利した今作の顛末こそ、一番の"意外性"ともいえないだろうか。




*****以下、ネタばれ注意*****




 本編の多くは前述のように爆弾処理の様子に時間が割かれている。しかしながら個人的に1番印象に残ったシーンは砂漠地帯でのスナイパーとの戦闘だった。奇襲された際の乱射から一変しての静かな戦い。マガジンの弾が血で詰まり、それを唾で滑らせるシーン、ジュースを飲もうとするがストローのビニール袋が開けられない様、またそれを自分は飲まずサンボーンに差し出すなど、ギリギリの状態で見せるこれらの演出は秀逸だ。顔に群がるハエの一匹も追い払えない状況はこの映画の中で最も緊迫した場面である。これらのシークエンスを眺めながら、キャスリン・ビグロー監督こそはマイケル・マンの後継者だと心の中で思ったほどだ。

 「ハート・ロッカー」が伝えようとしたことはなんなのだろうか。最後まで鑑賞しても、一概に反戦映画とも兵士を賛歌しているものともいえない。あえていうなら"戦争依存の疑似体験"である。冒頭から2時間近く高い緊張状態に放り込まれた観客は、後半に訪れるシリアルがずらっと並んだシーンで異様な感覚に包まれるはずだ。劇中のジェレミー・レナー同様、このシーンで特有の居心地の悪さを覚えてしまう、これこそ今作の狙い所ではないか。爆弾処理を偏愛してしまった男を通して見えてくるのは、それまでのヒーローイズムから遠く離れた孤独と、終わることのない戦争への虚無感だけである。


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