告白 ★★★

告白 【Blu-ray完全版】告白 【Blu-ray完全版】
(2011/01/28)
松たか子岡田将生

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 涙を流して感動するとは違う、重い心を引きずって憂鬱になるのとも違うが、「告白」が紡いだ世界には心を掴んで離さない大きなパワーが確かにあると思った。しかしその想いを言葉で何と表現したらよいか分からない。なぜなら、映画「告白」では登場人物の心境が分かりにくく、「なんてね」に代弁されるよう、特定のキャラクターに感情移入した途端に、その気持ちを透かされる可能性があったからだ。

 中学教師という職業柄、さらに娘を殺された被害者である森口(松たか子)に、普通は感情を入れがちだが、告白が進むにつれて彼女の恐るべき行動が露わになり気持ちが同調されない。先生への手紙を書く北原美月が演じた橋本もルナシー事件の信者であり本心が見え辛い。犯人とされていた生徒A・Bにもそれぞれのバックグラウンドがあり、一方的に悪とは決められない。

 劇中の誰とも波長が合わなかった要因に「命は何よりも尊いものか」という当たり前の命題が物語のなかでは通用しなかったからだ。少なくとも誰でも最初は持っていたその単純な命題を何らかの要因で失っている。大切なものが消えてしまう音、渡辺には「パチン」と。森口には「ドッカーン」と。そのため物語の登場人物はどこか冷めていて感情が伴っていない。常套な命題が通用しない世界を、インパクトのある映像の洪水とハイテンションで繋ぐ、それは時に美しく、時に異様に映った。

 命が軽視される世相だからこそ、命の大切さをストレートに描くより否定を強くさせることで、考えるきっかけを与えているように思える。エンターテイメントとしても非常に優れた作品だが、ディスカッションする手がかりとして映画版「告白」の存在意義が初めて発揮されるのかもしれない。個人的には森口が雨の中、泣いたあの感情を信じたいと思った。

 このような斬新で野心のある映画が、全国のシネコンで公開されたこと、そして興業的にも大成功を収めたことは日本映画界にとってもプラスだったのではないだろうか。近頃はテレビドラマからの安易な映画化が乱立し過ぎていた。内容が薄くてもある程度ヒットしてしまうこと、俳優が映画の宣伝を兼ねて連日テレビに出演する様に辟易としていたし、このままでは日本映画界は駄目になると思っていたからだ。


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