白いリボン [DVD]白いリボン [DVD]
(2011/06/25)
クリスチャン・フリーデル、レオニー・ベネシュ 他

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 「白いリボン」を普通に鑑賞すれば、とある村で起きた不可解な事故と、そこで暮らす人々の洞察の物語である。しかし、冒頭のナレーションも語っていたように、歴史的な背景・考察もミヒャエル・ハネケ監督は同時に取り入れていたようだ。


 “これから話すことがすべて真実か、あまり自身はない。
それでも、あの奇妙な出来事を誰かに話しておくべきだと私は思う。
あの出来事こそがおそらく、当時の我が国そのものなのだ。”


「当時の我が国そのもの」という文節。来る第一次世界大戦とその後の戦争、ナチスドイツ台頭の予感が、ストーリーの裏側で蠢いていることを示す。監督は政治的な批判をするのではなく、国として何故そのような歴史を辿ることになったのか、宗教か教育か社会の構造か…その心の根幹を探ろうとしていた。

 「セブンス・コンチネント」をはじめとして「ファニーゲーム」「隠された記憶」、監督の作品にはショッキングなシーンが最低1場面はあった。しかし「白いリボン」ではそれらを徹底的に排除して、観客に最上の観察と熟慮を要求している。モノクロにすること、音楽を無くすこと、そして暴力描写の排除…そうであっても、恐怖や不安を覚えてしまうのは、扉の向こう側で起きていることを頭のなかで想像してしまうからだ。




*****以下、ネタばれ注意*****




 最も不気味に思えたシーンは、教師とエヴァが馬車に乗っているシーンである。内気なエヴァが教師にキスまでして、森のなかの湖に行かないように諭す様は、なにかを隠しているとしか思えない。また、行方不明になった助産婦の家から帰る子供たちのシーンで、白いリボンの罰を受けたマルティンの表情、凍ったような目つきが未だに忘れられない。

 ドクターの落馬、小作人の妻の死、ジギ、カーリへの暴行など…これらの事件の犯人は直接描かれていない。それでも監督は語る、「すべての事件に、論理的な説明がなされている」と。作品を凝視することでなんらかの筋道は浮かび上がりそうだ。真っ先に疑うべきは子供たちである。「セブンス・コンチネント」「ベニーズ・ビデオ」「ファニーゲーム」「隠された記憶」監督の作品ではタブーなど存在せず、常に子供が重要な位置づけで登場しているのも、そう考える一因だ。純真無垢を願い白いリボンを強要されること、過度な厳格さと感情の抑制は耐え難いストレスと、あらぬ人間性を生みだすのではないだろうか。小さな体格ながらも世の中の不条理さを既に見抜いているのだ。

 監督作品常連のスザンヌ・ロタールは「ファニーゲーム」に続き、今作でもひどい目に遭っている。それまで紳士的な人物に映っていたドクターから、(情事の相手として)お前に興味がなくなっただの、口が臭いだの、ものの見事に罵倒される(笑)幸薄そうな表情にぴったりな(ある意味で)面白いシーンだったがそれも束の間、ドクター一家、助産婦一家ともに行方が分からなくなる後味の悪さ。助産婦は自転車でドコに行ったの??エンドロールを迎えた際の放心感。さすがハネケ監督である。


■関連作品■
セブンス・コンチネント ★★★★★
隠された記憶 ★★★★
ピアニスト ★★★★
ファニーゲーム ★★★
ファニーゲーム U.S. ★★★
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