愛、アムール [DVD]愛、アムール [DVD]
(2013/09/06)
ジャン=ルイ・トランティニャン、エマニュエル・リヴァ 他

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登場人物に感じる体温






*****以下、ネタばれ注意*****




 人の最期を描くという観点では、ミヒャエル・ハネケ監督のデビュー作「セブンス・コンチネント」と同様である。しかし「愛、アムール」が監督のそれまでの作品と異なるのは、登場人物に体温を感じるということだ。

 「セブンス・コンチネント」「ベニーズ・ビデオ」「ファニー・ゲーム」等、ハネケ作品には、社会性や理性が飛び去った人物が主として描かれていた。そこには当たり前として備えていた感情やモラルが通用し得ない不条理さが横たわっており、トリッキーなキャラクター群について思慮深く探ってみたりしたものである。観客の意表を突き、ある種の暴力を描いてきたミヒャエル・ハネケ監督が、ここにきて最も理解を得易く、丹念に人間らしさ、他人を想う”愛”を描いた映画を製作したことは、驚くと同時に感動的でもあった。

 「愛、アムール」では序盤こそ外出のシーンはあったものの、それ以降はアパートの1室のみが舞台であり、言わば密室劇となっている。ジョルジュとアンヌの在宅介護を紡ぎ、人生の最期を映し出す。劇中の展開としては分かり易いものがあるが、老い・介護・尊厳死・親子関係等、誰もが経験し得る普遍のテーマが凝縮されており、鑑賞後の議論は尽きることはないだろう。病状が悪化していく中で悪夢を見たり、鳩を2度追い出したりと抽象的な記号を用いたのも興味深い部分だ。

 今作でカンヌ、そしてアカデミー外国語映画賞を制した監督は、今後どこへ向かうのだろうか。原点回帰として、また不条理の世界を映してくれないだろうか…と渇望しているのは私だけではないはずだ。


■関連作品■
セブンス・コンチネント ★★★★★
隠された記憶 ★★★★
白いリボン ★★★★
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