ライフ・オブ・パイ / トラと漂流した227日 ★★★★

ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日 4枚組コレクターズ・エディション(特製ブックレット付) (初回生産限定) [Blu-ray]ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日 4枚組コレクターズ・エディション(特製ブックレット付) (初回生産限定) [Blu-ray]
(2013/06/05)
スラージ・シャルマ、イルファン・カーン 他
映画の詳細を見る



自らが創る寓話と希望の礎


 主人公のパイは、宗教多元主義者であり様々な信仰が自身の生活スタイルにも影響を与えていた。そこに至るには宗教特有の神話が存在し、強い信仰心も人格も、その訓話を基に形成されたと推測して違いない。事実、映画の本筋である遭難事故までは、パイの宗教観の描写に多くの時間を割いていた。しかし、それらを信じ行動していたパイでも、故郷・家族、全てを失う大きな出来事に遭遇してしまう。




*****以下、ネタばれ注意*****




 「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」では遭難事故について本人の回想録という構造で、2つの物語が語られる。日本人の保険調査員に涙ながらに独白した物語が恐らくは事実であり、獰猛な虎であるリチャード・パーカーと救命ボートに同乗した物語こそが、パイがその後を生きるために創りだした寓話と捉えることができる。(あくまで推測だが。)

 ハイエナ=コック、シマウマ=船員、オラウータン=母親、トラ=パイで最初の物語を置き換えるならば、パイが直面した一連の出来事は痛恨の極みであり、多大なストレスを負ったことになる。それを緩和させ、その後の人生を立ち直らせる方法が過去と真実の寓話化だ。絶望の淵でも生きる為に何か希望を持ちたい、何かを信じたい。「ライフ・オブ・パイ」はそのような状態下からの回帰をファンタジックに表した傑作である。

 勿論、これらの物語に説得力を持たせたのは映像のリアルさだ。話の軸となる虎のリチャード・パーカーが陳腐な表現であれば、求心力は一気に失われただろう。CGとは思えない動物・水面・背景のリアルさこそが映画の質を高めている。

 筆舌に尽くし難い真実か、希望のもてる寓話か。「海で起こった2つの物語を話した。船の沈没の原因は不明、どっちの話が真実か証明できない。いずれの話も船が沈み―家族を亡くして悲しんだ。 どっちがいい?」パイからの問いが忘れられない。誰も傷つかず真実を語る必要性がなければ、時として表にしないことが良い事実もあるだろう。


■関連作品■
ラスト、コーション ★★
ブロークバック・マウンテン ★★★
アメイジング・スパイダーマン ★★
スポンサーサイト

0 Comments

Post a comment

Designed by Akira.

Copyright © 映画ノスタルジア ~映画館・DVDで観たおすすめ作品の感想・評論~ All Rights Reserved.