セルビアン・フィルム 完全版 ★★

セルビアン・フィルム 完全版 [Blu-ray]セルビアン・フィルム 完全版 [Blu-ray]
(2012/07/27)
スルディアン・トドロヴィッチ、セルゲイ・トリフュノヴィッチ 他

映画の詳細を見る



傑作カルト映画の一歩手前。


 R20指定、映画公開時には”倫理的にも表現的にも最悪の描写がございます。”なる注意書きと、なにやら曰くがありそうな今映画こそ「セルビアン・フィルム」だ。物語の前半は丁寧に主人公の日常を映しており、その画面構図は本気のヒューマンドラマを鑑賞しているよう。ところが主人公が新作ポルノの撮影を始めた辺りから、一気にゴア描写満載の世界へと突き落とされることとなる。




*****以下、ネタばれ注意*****




 口淫を強要しつつ、鼻を押さえて窒息死させる。SEX中に女性を切り裂いての屍姦。生まれたばかりの新生児を犯す。父親と息子の近親相姦。勃起した性器で目を突き破る…等々。確かに悪趣味描写のオンパレード、極めつけは一家心中なるバットエンドのおまけ付きだ。場面のみを切り取れば確かに刺激が強いが、それが物語の必要性にあまり寄与していない。つまり主人公が体験しうる絶望感に、私(観客)を上手く誘導できていないのである。好例では「ソドムの市」や「ホステル」だろう。「セルビアン・フィルム」はどちらかと言えば、過激な映像の繋ぎでハイテンションを保った「ムカデ人間2」の作風に近かったように思える。

 「これが理想のセルビアン家族だ!」とのセリフ。強烈な皮肉の裏にはセルビアという国家が辿った内戦や混乱の境地が窺える。また、どこまでが新作ポルノ映画の撮影だったのか、メタ化したラストのオチも興味深い。実は過激な描写を抑えて最後まで丁寧に紡いでいたら、社会問題を取り入れつつ、「ロスト・ハイウェイ」のような(ポルノ業界が絡むため)極上ミステリーまで含めた、傑作カルト映画に成り得たかもしれない。前述のように普通のドラマパートでは丹念な人間描写と意外な映像美で見せていただけに、この完成度は非常に惜しいと感じたのだ。
スポンサーサイト

0 Comments

Post a comment

Designed by Akira.

Copyright © 映画ノスタルジア ~映画館・DVDで観たおすすめ作品の感想・評論~ All Rights Reserved.