コンプライアンス -服従の心理- ★★★

コンプライアンス -服従の心理- [Blu-ray]コンプライアンス -服従の心理- [Blu-ray]
(2014/01/24)
アン・ダウド、ドリーマ・ウォーカー 他

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現代人の社畜化と想像力の欠如


 「コンプライアンス/服従の心理」はアメリカのファーストフード店で実際に起きた事件を基にしている。自称警察官の男からの電話を信じアルバイト女性を裸にしたり、性的暴行を加えていく…というのが物語のアウトライン。一見すると”そんな馬鹿な”と思えるが、映画を鑑賞すると自分自身はどのような行動をとるだろうか、と心が揺らいだ。

 何故、電話の向こうに居る面識のない男の話を信じてしまったのか。勿論、犯人の男の話術は卓越したものがあったが、私が最も動揺したのが「責任は全て警察官である私がとる」という言葉だった。

 例えば仕事の場合、上司の命令は当然従うし、それが(一般的な基準の)モラルに多少は反しても責任が自分になく、上の立場の人がとるのであれば率先して動くかもしれない。ミルグラム実験において、権威者の指示に従う人間の心理状況はある程度証明されているものの、それは組織化、マニュアル化された現代社会の構造では、より顕著になっているのではないだろうか。当たり前の判断が、組織構造の上部の人からの命令で出来なくなる、正に想像力の欠如である。あれほど自己主張が強いアメリカでこのような事態となったのだから、同様の電話が日本であった際にはもっと悪い結果になったのではなかろうか。

 映画では、序盤の10分くらいから終盤までを犯人との電話のみで映し出す。舞台はファーストフード店の裏方と犯人の自宅のみ、会話劇中心の作品だが最後まで飽きない演出が観られた。寂れた街並み、駐車場に放置されたショッピングカート等、現代アメリカ人の抱える孤独が心象風景としてカットインしたり、なにより店長役のアン・ダウドが素晴らしい。厨房棚越しにアルバイトの会話を見つめる目線、自分の車へ向かう際の背中の丸まり方、また汚れた車と社内に散乱したゴミといった具合に妙にリアリティのある記号が満載なのだ。

 B級映画で近年流行りの、単発シチュエーションスリラーと思いきや、ノンフィクションの脚本や魅力的な俳優、堅実でテーマ性のある演出といった具合に今作の質はものすごく高い。自身の度量を計る意味でも必見の作品である。
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