悪の法則 ★★★★

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(2014/04/02)
マイケル・ファスベンダー、ペネロペ・クルス 他

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ダイアローグ(対話劇)の後ろで進行しているシステム


 退屈な作品だな、と開始1時間は思っていた。ハリウッドスターは出演しているが、会話ばかりで動きがない。なにより物語の芯が見えないのだ。主人公(カウンセラー:マイケル・ファスベンダー)はどのような立場で何をしようとしているのか、登場人物それぞれが物語を推進させる台詞ではなく、深遠な言葉が並ぶのも何処か堅苦しかった。しかし後半は一変する。

 ラストまで物語が進むと、前半の蛇足に見えた台詞の各々に意味があることが分かる。特にカウンセラーの悲劇を目撃した後に再鑑賞をすると、周囲の警告を無視し安易に裏社会に踏み込んでしまった無防備な様子が際立つ。そのような角度で捉えれば「悪の法則」という作品は2回観ることで、より味わいの増す映画だ。リドリー・スコットの前作「プロメテウス」の出来栄えを個人的に悲観していたが、今回はシャープな映像と演出が戻ってきており、同監督のなかでも上位に位置する作品だと思った。

 本作のポイントは物語の核となる麻薬取引の現場に、主要な人物は近付いていないところ。自分たちの居る場所以外で物事が進むため、本編はダイアローグの積み重ねとなる。またスリリングで動きのある麻薬取引の顛末を後半に置いたことだ。これは脚本のコーマック・マッカーシーの名を一躍世界に知らせめた「ノーカントリー」とは真逆の構造である。「ノーカントリー」では、同じく麻薬取引でこじれた現金入りのブリーフケースの行く末をウェリン・モスとアントン・シガーの攻防をアクション交じりに描くのだが、後半はエド・トム・ベル保安官の捜査と引退の話を軸にダイアローグ中心となるのだ。「ノーカントリー」では動から静へ、「悪の法則」は静から動へといった具合である。共通することは人の欲と理不尽なシステムに巻き込まれた際には止めようがないということだ。




*****以下、ネタばれ注意*****




 強烈なのは”ボリート”。首を締め付け切断する殺人装置である。あれほど裏社会に精通し余裕に振舞っていたウェストリー(ブラッド・ピット)もボリートの餌食に。1度起動したら止まらないシステムという点では本作の教訓を想起させる殺人マシンである。埃っぽい砂地の描写から一変して、ロンドンの都会ど真ん中でボリートに巻き込まれるブラッド・ピットの最期は、ソリッドな音楽と併せ緊迫感抜群だ。

 また、カウンセラーとカルテルのボスのやりとりも興味深い。どこまで懇願しても妻のローラを救出することは無理だと悟るカウンセラー。「犯した過ちを取り消そうとする世界は過ちを犯した世界とはもはや違う。今あなたは岐路にいて道を選びたいと思う。だが選択はできない 受け入れるだけ」淡々と語る口調がなお怖い。慈悲も感情も存在し得ない、動き出せば止まらないアーキテクト、世の常をコーマック・マッカーシーは非情にも描く。


■関連作品■
プロメテウス ★★
イングロリアス・バスターズ ★★★★
X-MEN/ファースト・ジェネレーション ★★★
ノーカントリー ★★★★
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