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インターステラー ★★★★

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(2015/04/08)
マシュー・マコノヒー、アン・ハサウェイ 他

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深層心理から恒星間航行、5次元の世界まで網羅してしまう、クリストファー・ノーランの止まらない進化


 近年、この監督の新作映画は是が非でも観なければならない、と思わせる監督が3人いる。デヴィッド・リンチ、デヴィッド・フィンチャー、そしてクリストファー・ノーランだ。

 振り返れば「ゾディアック」が公開された際、それがフィンチャー監督作品と思えなくてひどく失望した記憶がある。「セブン」や「ファイト・クラブ」で味わったスタイリッシュな映像・演出が影を潜めたように観えたからだ。(実はものすごい映像技術を使用しているのだが。)しかし、何度か鑑賞するうちに自分の間違いに気付く。映像は物語を正確に伝える手段に過ぎず、大事なのはキャラクターの感情そのものなのだと。映像より人物に比重を置いてから鑑賞したところ「ゾディアック」は大好きな作品のひとつとなった。近年のフィンチャー作品は無駄な演出を削ぎ落とし、正確に物語・人物・感情を伝えるよう、努めているように思える。

 「インターステラー」におけるクリストファー・ノーランも、その時と同じ様な印象を受けたのだ。仮に今作を監督名を伏せた状態で鑑賞しても、ノーランが監督であると答えることができるか正直分からない。それほど監督のフィルモグラフィーと異なる箇所が多かった。

・映画のタイトルクレジットがエンドロールではなく冒頭に現れる。
・時間軸が前後せず、物語の進行は極めて連続性が高い(後半まで)。主人公クーパーの行動、感情が次のシーンへと直に繋がっている。
・高層ビルやスーツ姿といった都会的で直線的な画のイメージがあったが、農場、畑、田舎町のアイコン、そして映像の印象は円や球体を連想させるものが多い。

 そして何よりも、1番の違いは監督の代名詞ともいえるノワール色が皆無だということだ。クーパーは1度もノワール的な闇に呑み込まれることなく、一心に娘との約束を果たそうとする。同じように子供との面会を切望した「インセプション」のコブは自身のトラウマ(闇)と最後まで対峙することと比較すれば、今回は極めて明朗で感情がぶれていない。深層心理の揺れを真下へ描いたこれまでの構造とは逆に、上へ上へと目指す様はポジティブで物語のトーンも最後は明るいものに。前述のように直線ではなく曲線や円のイメージは、自分だけではなく周りの現状を見据えているような印象さえ感じさせるのだ。

 では「ゾディアック」のように「インターステラー」も失望したかといえばNOである。これだけ大仕掛けをしておいても描き貫いたのは親子愛、SFの設定は感情の引き出しを開けるツールに過ぎず、監督は終始その部分を徹底していた。

 心の中を4層に下った「インセプション」から、恒星間航行、5次元の世界を描く「インターステラー」まで。ノワール色をも脱したクリストファー・ノーランの進化がどこまで続くのか楽しみで仕方がない。



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