バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) ★★★★





奇妙な映画がもたらす奇跡


 「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」 変な題名である。そして、奇妙な映画だと思った。しかしこの奇妙な映画は、多くの人々を熱狂に陥れハリウッド映画の最高峰ともいえる、アカデミー作品賞まで受賞してしまったのだ。そう、「バードマン~」とは主人公リーガンのことでもあり、図らずも現実世界での事象と結果、そのものこそが”予期せぬ奇跡”ともいえないだろうか。

 大勢が支持するアカデミー作品賞ながら、存分に奇妙と思えた理由が大きく分けて2つある。

① ワンカットで進む物語
 本作はブロードウェイを舞台にした正味4日間の物語である。その間、カメラにカットはなく(カットがないように見せている)、ひたすら画面に登場する人物を追う構図を繰り返している。長回しといえば、古くは「ロープ」、近年では「トゥモロー・ワールド」「ゼロ・グラビティ」のそれに近い。

 ダイアローグでも観客がだれないよう、リーガンの上下する心象模様をアントニオ・サンチェスのドラムスコアで表現し、一定のテンションとリズムを保っていた。さらに高いテンションを維持しつつも、ダーレン・アロノフスキー監督の「レスラー」の如く、キャラクターの背中や無人の廊下に、物語の行間を与えることで程よい進行・展開を生み出している。本編では楽屋等で、意図的に鏡が多用されているのだが、そこには撮影カメラが一切、映りこまない。脚本・キャラクターの魅力以前に、この緻密なカメラワークと技量にまずは驚嘆してしまう。


② 現実世界とのリンク
「ブレアウィッチ・プロジェクト」に代表されるよう、本作での映像体験は擬似ドキュメンタリーにも近く、主観のショットがキャラクターとほぼ同じ高さにあることで、(特に)リーガンの動きと観客の体感が同調するかのような効果を与えていた。劇中と実世界の劇場が共有する奇妙なリンクのひとつだ。

 また本作のキャスティングが言わずもがなリアリティに溢れている。「バットマン」を演じていたマイケル・キートンがバードマンを。「インクレディブル・ハルク」を演じ、その後、降板したエドワート・ノートンが自由奔放な性格俳優を。「アメイジング・スパイダーマン」のヒロインを演じていたエマ・ストーンが、バードマンの支えとなる娘役を。「マルホランド・ドライブ」さらには現実でも下積み期間が長かったナオミ・ワッツが、これまた売れない役で出演する等々、現実と劇中の配役が絶妙にマッチしているのは明白な事実だ。

 さらには、現在ハリウッド映画のスーパーヒーローもの乱立を揶揄する台詞、ロバート・ダウニーJr.、マイケル・ファスベンダー他、多くの実名俳優が台詞に登場するなど正に”いま”を踏襲した設定となっている。





*****以下、ネタばれ注意*****




 このようにワンショットの構図+現実世界とのリンク、そして質の高い脚本を取り入れた本作は、奇跡的なバランス加減を維持して傑作へと昇華した。この唯一無二の体験は、映画史における発明でもあり、アンチハリウッドを謳った内容がアカデミー賞を獲得したことは、ひとつの事件といってもよいだろう。

 「バードマン」は文字通り、一度は死んだ男が、再び羽ばたくことができるのかを描いた作品である。リーガンに限らず誰しも自分の可能性を信じるが、いつしかその情熱を忘れ地面に横たわってしまう。ラストのエマ・ストーンの視線が物語るよう、人には何度でも上昇のチャンスがあるのだと、この映画は語っている。



■■関連作品■■
ロボコップ(2014) ★★
ゼロ・グラビティ ★★★★
アメイジング・スパイダーマン2 ★★
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1 Comments

辻  

紹介

百花繚乱 http://www13.ocn.ne.jp/~ryouran/

言霊百神 http://futomani.jp/m

2015/06/21 (Sun) 13:57 | REPLY |   

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