スペクター ★★


007 スペクター 2枚組ブルーレイ&DVD(初回生産限定) [Blu-ray]


「スペクター」での物足りなさは「スカイフォール」で上がったハードルとの落差


 ダニエル・クレイグのボンドはシリアスだ。007シリーズお馴染みのアバンタイトルから、オープニングテーマに移行するまで、ダニエル・クレイグボンドは常に厳しい表情、または過酷な状況に置かれている。「スカイフォール」に至っては死んだとさえ思えるショックングなものであった。

 「スペクター」では一転する。メキシコの伝統的な祭り”死者の日”をバックに華麗で荒唐無稽なアクションを展開する。敵をヘリから落とし操縦するボンドの表情はそれまでの過去作とは違い、穏やかで余裕さえ感じられるものに。この瞬間「今回の007はこのタッチでいきますよ。シリアスではなく活劇に近いクラシカルなボンドに戻るよ。」という宣言に思えたのだ。

 しかしである。以前のロジャー・ムーアのような、ユーモラスで余裕のある007も悪くはないが、今作はどうにも気持ちがのらなかった。最大の理由はシリーズを通じての宿敵、スペクターの存在感・存在意義にある。




*****以下、ネタばれ注意*****




 物語が進むと、スペクターの組織を率いるブロフェルドの主な動機が、ジェームズ・ボンドへの個人的な嫉妬・恨みであることが明かされる。しかも父親に起因するというもので、これは「スカイフォール」における母性の逆ともとれる構図であり、連作でネタの焼き直し感が否めないのだ。

 その動機の弱さ故に、期待していたクリストフ・ヴァルツがものすごく小物に映る。世界を牛耳る悪の結社の根幹要因が、ごくごく私的なものとはいただけない。今回は荒唐無稽です!!と宣言したのだから、分かり易い動機で良かったように思える。列車の食堂車両で戦いが始まった瞬間に居なくなった乗客、そして銃撃戦が起きた後も走り続ける列車、敵のアジトにノープランで潜入する主人公カップル等、ストーリー上で腑に落ちない点も多い。

 前作「スカイフォール」は手放しで傑作だった。それは従来の007を外れ、格式の高い上質なヒューマンドラマと凝った映像による貢献が大きいが、ずっとそのようなテイストは続けられない。「スペクター」での物足りなさは「スカイフォール」で上がったハードルとの落差だ。襟を正したシリアスなドラマの007か。エンターテイメントに徹した活劇路線の007か。映画界のトレンドを踏まえ、次回作以降の舵取りは難しそうである。


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