「10分しか記憶が保てない男の復讐劇」
この映画の主人公、レナードの世界を表現する語り口が非常に巧く、そして斬新である。ラストから物語が始まり、そこから時間が戻っていき、とある地点で終わるという大胆な構造。
これにプラスして「10分間しか記憶が保てない」という事象の説明のために、モノクロ画面でサミーという人物を登場させる。このサミーの言動が「メメント」に更なる捻りを生み出すことになる。10分毎の時間の逆行を映したカラーパートと通常の時系列のモノクロパート。このパートの繰り返しが、いつしかひとつの物語として交わっていくのだ。
1度目の鑑賞では「メメント」という世界のルールを覚えるために。2度目は伏線と結果を確認するために。3度目はキャラクターの本性を暴くために。と、それぞれの答えを導き出すためにこの複雑な作品を何度でも鑑賞してしまう。
「メメント」ではレナードの主観のみで物語が展開され、しかもそのレナード自身も10分しか記憶が保てない。そうなると、その世界を最後まで目撃できるのは鑑賞者自身だけなのである。何度も鑑賞するうちにレナードは善とも悪ともとれ、周囲の人物も誰もが疑わしくなる。その答えを探せるのはスクリーン越しの自分のみのため、登場人物の誰とも感情を交わすことは出来ない。
この激情と悲哀に満ちたレナードの世界を、独りで探索する過程こそが「メメント」の魅力であり、唯一無二の苦くも甘美な映像体験となっているのだ。
今作では、デジタルカメラや携帯電話、パソコンといった端末が一切出てこない。時代考証や物語の都合上での削除かもしれない。しかしそれは、記憶する行為を外部端末に委譲し、無意味な情報をもとりあえず保存してすぐに消去してしまう、現代人への冷ややかな皮肉を投げかけているように思えるのだ。
■関連作品■
ダークナイト ★★★★★プレステージ ★★★★バットマン ビギンズ ★★★★メメント ★★★★★
これ、面白かったです。1回観ただけで理解できる人は天才だと思います。自分が記憶を保てない人間ような錯覚に陥る見事な編集でした。
またおじゃまします。
応援Clickして失礼します。