*****以下、ネタばれ注意*****
娘が刺し殺した夫の死体を、レストランの冷蔵庫に隠し入れ終えた、ほぼその直後に30人分の料理の注文を取る主人公のライムンダ。このシーンを観たときに、自分は出来ないな、女性は強いなと思った。
この映画では劇中のほとんどのシーンが女性のみで構成されていて、誰もがたくましく、生き生きと輝いている。逆に男はというと仕事をクビにされ、酒に入り浸り、娘を暴行しようとするなど情けない描写ばかりだ。目の前の世界・事実をすぐに受け入れ現実を生きようとする、精神的な強さを備えているのはやはり女性なのである。しかし「女性の強さ」が主題ではなく、それぞれの登場人物が死というものを、どのように受け入れ、生きていくのかを描いた心模様こそが今作の要旨だろう。
「ボルベール」は現実的なストーリーだが、死者が甦るといったファンタジー的な要素も孕んでおり、死んでいた母が目撃されたり、伯母の葬儀が行われた、閉鎖的な村ラ・マンチャが存在する。ライムンダが住んでいる場所からラ・マンチャ行く途中に風車のある道を何度か通過するのだが、現世となにかもうひとつ先の包括的な世界を結ぶ道ではないだろうか、鑑賞しながらそんなことを思った。
物語の中盤で娘や食事を注文してくれた映画クルーに向けて、ライムンダが歌を披露する素晴らしいシーンがある。しかし後半ではそのような、単純に胸が感化されるような描写はない。それは常に「死」というものが、それぞれの登場人物の近くに見え隠れしているからであり、冒頭のシーンがお墓から始まったり、暗く背中を向けて終わるラストカットが「死」を暗喩させるものになっていた。アルモドバル監督らしい鮮やかな色彩を取り入れた画が多いものの、要所は哀しげでどこか寂しささえも感じられるのだ。
■関連作品■
ボルベール/帰郷 ★★★トーク・トゥ・ハー ★★★★★
アルモドバル監督のものは好きなので!
どこかユーモアがあるのに、深い影を感じさせる作品でした。
それも、この監督らしくて◎