痴漢事件の冤罪、日本の裁判制度の実態を鋭く描いた今作。冤罪で捕まってしまう主人公の男性が26歳、自分と同じ年齢ということもあり大きな衝撃をうけた。
もし実際にやってもいない痴漢で捕まった場合「やっていない」と主張するだろう。鑑賞前は自分のなかにもそういう意識は当然あったが、上映して30分と経たないうちにその気持ちは揺らいだ。主人公は最後まで一貫して無実を主張したが、自分なら当番弁護士と接見した時点で確実に折れる。そして鑑賞後もその気持ちは変わらず、やってない罪を別のニュアンスで認めてしまうかもと思ってしまった。
*****以下、ネタばれ注意*****
26歳でフリーター、これから企業の面接に行く途中の電車内で痴漢と間違えられる。細身で一見すると大人しそうな彼が、警察や検察官の偏った取り調べにもめげずに無罪を主張、12回にもおよぶ裁判をした後の判決。これは映画であり、弱者は助かると観ている側は願うが判決は有罪、愕然としてしまう。これが現実なのだ。
映画としての脈絡を外しリアル路線を貫いたラスト、痴漢事件で無罪を勝ち取る難しさを思わせるし、この結果こそ今作の意義があるのかもしれない。
また本作が巧いのは、痴漢はしていないけど鞄が被害者の少女に当たっていたかもしれない。真犯人がいたかもしれないが、いなかったのかもしれない、など事件の真相は分からずに曖昧であること。つまり主人公は痴漢はしていないけど、電車内で不用意に動いたり、電車に体の正面を向けて乗っていたりと突っ込み所を与え、完全に悪くないわけではないのだ。そして今作には本心から悪い人間が1人もでてこないこと(非難できるのは現状の裁判制度)この点が気持ち悪くすっきりしなかった、と同時に非常に巧い脚本だと感じた。
それでは冤罪にならないためにどうすれば良いのか、とどのつまり最低限の知識をつけ自分の意識を高めておくことだと思う。極力疑わしい行動はせず、何か起きた場合は目撃者を押さえておくおこと。また被害者の女性のほうも難しいことだが、状況を鮮明に覚えてはっきりと証言することだろう。そういう意味でもこの映画は、男性のみならず女性にも多くの人に観てもらいたい作品だ。
「自分に嘘をつき、軽い犯歴をもち、5万円ほどのお金を払ってその日のうちに自由になる」か「自分の気持ちを貫き無罪を主張し、4ヶ月拘留され、保釈金等何百万というお金を払い、有罪になるかもしれない裁判をするのか」普通の社会生活を送るうえでこの2つの選択は非常に難しい、一概に「それでもやってない」とは言い難い。
それ故に「10人の真犯人を逃すとも、1人の無辜を罰するなかれ」という冒頭の一文が重く感じられた。
■関連作品■
かもめ食堂 ★★★★めがね ★★
今作は非常に重かったですね。(T_T)
僕は友達と四人で観に行ったんですが、鑑賞後にみんなで「電車に乗る時は両腕をあげよう!」って言ってましたね。(・_*)\ペチ
ほんとに最初観る時に自分は無実を貫こうっていう気持ちが揺らいでいくのは僕も物語が進むうちに感じましたね。悲しいですね。(;゜Д;゜)ババーン!!