 | 羊たちの沈黙 ジョディ・フォスター、アンソニー・ホプキンス 他 (2006/10/27) 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 映画の詳細を見る |
「子羊の悲鳴はやんだか?」
バッファロー・ビルが女性の背中の皮を剥いでいたように、レクターは言葉によって、クラリスが心に閉じ込めていた氷壁を丁寧に剥いでいった。
緊迫した時間のなかで、クラリスの過去の恐怖体験を聞きだしたレクター。それはクラリスの内面を覆うトラウマの壁を見破り、それを克服してほしいという親心かそれ以上の感情が芽生えた、彼からのささやかな気遣いなのだろう。そう考えると、観客を含め恐怖の底に突き落とした上記の台詞は、一転して優しい語りにも聞こえないだろうか。
ハンニバル・レクターはそれまで見たことのない特異な人物だった。どのような状況でも慌てず、冷静で優雅に振舞う。打算的な考えは簡単に見破られ、そのような行為には容赦のない制裁、カニバリズム(人肉嗜食)が科せられることに。その一方で高貴な人格者の一面もあり、雨に濡れたクラリスにタオルを差し出すなど、純粋で正直な人には紳士的な態度で接するのだ。
*****以下、ネタばれ注意*****
後半30分ほど彼が画面に出てこない時間帯があり、ラストで再び姿を現す。その瞬間にどこかで彼を待ち望んでいたような、嬉しくなるような気持ちに包まれた。鑑賞を終える頃にはハンニバル・レクターという人物に夢中・虜になっている自分に気付かされる。
クラリス以外の周りの人物全てが異常に見え、レクターが正常にすら思える逆転現象を導きだし、映画史上最も愛される異常殺人者を演じきったアンソニー・ホプキンスの功績は大きい。勿論、クラリス・スターリングを演じたジョディ・フォスターも素晴らしかった。最初にレクターと接見したシーンで、彼に心を出し抜かれ呆然と椅子から立ち上がる時の表情、わずかに足元がふらついていた言動など、気丈さと内面の脆さとを使い分けた演技は見応えがある。
トラウマから解放されたクラリス、そして牢獄から開放され自由の身となったレクター。映画公開から随分と年月が経過しているが、2人の支配関係・人物像は今尚も熱を帶びている。
■関連作品■
ハンニバル・ライジング ★レッド・ドラゴン ★★★
羊たちの沈黙 ★★★★★ハンニバル ★★★★ブレイブ ワン ★★★
記事、大変参考になりました!ありがとうございます。このシリーズ大好きです。レクターはこわいけど不思議な魅力がありますよね。またお邪魔させていただきます。