やわらかい手 ★★★

やわらかい手 スペシャル・エディションやわらかい手 スペシャル・エディション
(2008/09/03)
マリアンヌ・フェイスフルミキ・マノイロヴィッチ

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 難病に侵された孫の治療・渡航費を稼ぐために未亡人のマギーが始めた仕事…それが男性を相手にした手淫であり、いつしかロンドン一の右腕と言われるまでに成り上がる。作品の設定はなんともユニークなものだが大袈裟なコメディでもシリアスでもない、特有の温かさを感じるのは主役のマリアンヌ・フェイスフルのお陰だ。

 お金のためとはいえ自身の行いに戸惑いつつ、献身的に仕事に励む姿。そして息子や孫に接する普段の姿、女性の強さと母親としての優しさを兼ね備えたキャラクターが魅力的であり、イカせる未亡人という難題を見事にクリアしていた。四六時中、困った顔をしていた彼女がお店のボスに向けて一瞬だけ見せた"あっかんべえ"がものすごくキュートであり、熟女好きの人が観たら堪らない映画だろうなと思った。その辺りの嗜好性をくすぐられる描写のオンパレードである。

 上述のように基本はヒューマンドラマだが冒頭から重く不気味な音楽が鳴り響く。ロンドン郊外の風景と疲れた人々、その閉塞感を表すようにコントラストを抑えた映像、そしてゆったりとしたテンポはハリウッド映画にはあまり観られないものだ。今回はドラマであるが、サスペンスやホラーへも転化できるような寒々としたトーンが印象に残った。

 手コキという表に見せられない事象を、どう映像で表現するのか気になっていたが壁越しに行うというアイディアに感心してしまう。これを「日本式」だとボスは語っていたが、本当にこのような作りの店が東京にあるのか、なんとも疑問に思った。「アーセナル、アストン・ヴィラ、ブラックバーン…」とプレミアリーグのクラブ名を叫びながら絶頂を迎えた男のシーンが最高に可笑しい。


■関連作品■
マリー・アントワネット ★★

[ 2008/09/05 00:00 ] ヒューマンドラマ | TB(0) | CM(6)

アメリカン・ギャングスター ★★★

アメリカン・ギャングスター コレクターズBOX (初回限定生産)アメリカン・ギャングスター コレクターズBOX (初回限定生産)
(2008/08/27)
デンゼル・ワシントンラッセル・クロウ

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*****以下、ネタばれ注意*****




 「アメリカン・ギャングスター」はラッセル・クロウとデンゼル・ワシントンという、演技に定評のある2人のハリウッドスターが共演するとのことで話題になっていた。一方は刑事、一方はマフィアのボス。その直接対決が見所だと予想していたのだが、意外にも2人が同じスクリーンに映るシーンは少ない。

 開始から1時間20分ほど経ったところで1度、それ以降はっきりと2人が対峙するのは最後のシーンのみである。それでも、麻薬捜査班を誕生させ麻薬の流通経路を絶つため暗黒街の組織を徐々に追い詰めるリッチーと、組織を次々と拡大させていくフランクのそれぞえの動きは緊張感を与え、リドリー・スコット監督の映像美も作品の敷居を上げていた。

 面白いのは、普段は善玉を演じることの多いデンゼル・ワシントンが悪役に挑戦しているのだが、家族を想い1人の女性に尽くすなど悪意を感じさせない人柄となっていること。反対に刑事役のラッセル・クロウは善い行いをしながらも、離婚調停中であったり、乱暴で大胆な様から危険な香りを感じてしまうという、善悪の逆転と対比も作品の魅力なのだと思った。


アメリカン・ギャングスターアメリカン・ギャングスター
(2008/08/27)
デンゼル・ワシントンラッセル・クロウ

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 また中盤でボクシング会場のシーンがあったが、これは「シンデレラマン」「ザ・ハリケーン」でそれぞれボクサーの役を演じた経験のある2人への皮肉のようなものも見える。法廷での戦いではなく、2人がリングに立ってボクシングで決着をつけても見応えがありそうだ。

 「アメリカン・ギャングスター」のような映画を観ると、ついつい「ゴッドファーザー」と比較してしまう。本編でも似ているような演出がいくつかあり、仮に現在「ゴッドファーザー」の続編が出来ると、今作のような仕上がりになるのかなと想像してみた。多くの名優が集い、巨匠と呼ばれる監督が作品をまとめる。それでもジャンルや視点が違うものとは言え、あの作品には遠く及ばない。「ゴッドファーザー」の面白さは何処からきているのか改めて確かめたくなった。


■関連作品■
ハンニバル ★★★★
プロヴァンスの贈り物 ★★
ノーカントリー ★★★★
プラネット・テラー in グラインドハウス ★★★

[ 2008/08/28 00:00 ] ヒューマンドラマ | TB(0) | CM(0)

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド ★★★★

ゼア・ウィル・ビー・ブラッドゼア・ウィル・ビー・ブラッド
(2008/08/20)
ダニエル・デイ=ルイスポール・ダノ

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 "ダニエル・デイ=ルイス!!"この一言に尽きる。物語・プロットを忘れさせ、1人の人間に対してこれほど魅せられる作品に出会ったのは久しぶりだ。現在商業ハリウッドに反抗するかのように、職人気質・メソッド演技を備えた俳優が居たことをまずは嬉しく思う。

 「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」では主人公(ダニエル・プレインビュー)の他、信仰と自我の言葉に溺れるイーライやプレインビューと行動を共にするH.W.など、面白いキャラクターは登場するが、今作はあくまでダニエル・プレインビューの物語である。その存在は地上よりはるか上にそびえる、油井やぐらのごとく圧倒的なものであり、他を寄せ付けず全てを支配していた。

 「群像劇」というレッテルを貼られたポール・トーマス・アンダーソンは、今作では多人数・同時平行というトリックを排除し、1人の男の一大叙事詩を見事に完成させている。それまでのイメージからの華麗なる脱却と監督の柔軟な創作性に、今回も強烈なパンチを喰らったな気分になった。




*****以下、ネタばれ注意*****




 意外だったのは、ラスト20分ほどで時代と作品の空気が一変したことだ。「2001年宇宙の旅」のラスト、木星からとある部屋へとワープしたかのごとく、カリフォルニアの荒野から邸宅へと舞台が移る。それまでのダイナミックな画、夕陽を覗き込むような光はなく、狭く暗く異常な空気が漂うこの部屋はプレインビューの精神世界といってもいい。


ゼア・ウィル・ビー・ブラッドゼア・ウィル・ビー・ブラッド
(2008/04/23)
サントラ

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 H.W.と決別を交わし、狂気に満ちた彼はイーライを殺してしまう。数々の酒の瓶、ボーリング部屋や"ミルクセーキ"といった言葉がその倒錯性を助長させていた。それにしてもダニエル・プレインビューは興味深い人物である。誰とでも一旦は親しくするも、相手が少しでも利己的な態度にでると、一瞬にして距離を置き憎悪の対象となるのだ。

 なにが彼をそこまで追い詰めるのか、その過去に秘密がありそうだが本編で語られることはなかった。冒頭の採掘の過程から推測すると、長年1人でピッケルを片手に、穴を掘っているうちに"完全主義"ともとれる、それらの精神が研ぎ澄まされたように思える。いずれにせよ、このラストの一連のシーンはダニエル・デイ=ルイスをイメージする上で、長い間語り継がれる場面となるだろう。

 「I am finished」と言い、背中を丸め、力なく座り込んだプレインビューとそこに横たわる死体。ラストカットになって初めて「There Will Be Blood」というタイトルの意図がつかめた。


■関連作品■
ブギーナイツ ★★★★
パンチドランク・ラブ ★★★
リトル・ミス・サンシャイン ★★★
ミュンヘン ★★★

[ 2008/08/09 00:00 ] ヒューマンドラマ | TB(0) | CM(4)
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