フッテージ [Blu-ray]フッテージ [Blu-ray]
(2013/10/02)
イーサン・ホーク、ヴィンセント・ドノフリオ 他

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オカルトか 猟奇殺人か


 「フッテージ」の求心力は主演のイーサン・ホークにあったと断言してよい。彼のこれまでのフィルモグラフィーにホラー映画が無いことが信じられないくらいのはまり役だった。劇中のほとんどの舞台が引越し先の自宅内。出演者も主人公一家とその他何人か程度であり、本作はイーサン・ホークの独断場と表して問題ないもの。自分の成功のために家族を巻き込んでよいのか??犯罪ノンフィクション作家として掴む大きなネタとモラルの狭間で、憔悴していく過程を上手に体現していた。




*****以下、ネタばれ注意*****




 まず目を引くのは8mm映写機から流れる不気味な映像だ。この辺りはニコラス・ケイジの「8mm」や「リング」を想起させるもので、鮮明ではない画質のざらつき加減や手持ちカメラのぶれ具合などが余計に不安を煽るものとなっている。主人公一家のキャラクター描写と、これら8mmフィルムの内容を探るシークエンスを交互に、とても丁寧に積み上げているので、これはすごいサスペンスになると期待していた。…しかし中盤以降、イーサン・ホークが目を離した隙にパソコンの画面が勝手に動くなど、超常現象的なシーンが挿入され始めてから映画のイメージが変わっていく。

 要は「フッテージ」という作品に何を求めていたかと思う。「オカルトか(非科学・超常現象) 猟奇殺人か(サスペンス要素)」。個々が求める展開の相違で、本作の好みは大きく分かれそうである。(個人的に)前半は割と生真面目にサスペンスを積み重ねただけに、後半の展開がどうにも大雑把に観えてしまった。家族の和解もない、なかなかダークなオチ。「リング」と同じく止まらない呪いの連鎖、ここからどのような話に広げていくのか続編にも注目したい。邪神ブグールの格好をもっと怖くしてほしいかな。。。


■関連作品■
恋人までの距離/ビフォア・サンライズ ★★★★★
ビフォア・サンセット ★★★★★
ファーストフード・ネイション ★★★
その土曜日、7時58分 ★★★★
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(2012/07/27)
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傑作カルト映画の一歩手前。


 R20指定、映画公開時には”倫理的にも表現的にも最悪の描写がございます。”なる注意書きと、なにやら曰くがありそうな今映画こそ「セルビアン・フィルム」だ。物語の前半は丁寧に主人公の日常を映しており、その画面構図は本気のヒューマンドラマを鑑賞しているよう。ところが主人公が新作ポルノの撮影を始めた辺りから、一気にゴア描写満載の世界へと突き落とされることとなる。




*****以下、ネタばれ注意*****




 口淫を強要しつつ、鼻を押さえて窒息死させる。SEX中に女性を切り裂いての屍姦。生まれたばかりの新生児を犯す。父親と息子の近親相姦。勃起した性器で目を突き破る…等々。確かに悪趣味描写のオンパレード、極めつけは一家心中なるバットエンドのおまけ付きだ。場面のみを切り取れば確かに刺激が強いが、それが物語の必要性にあまり寄与していない。つまり主人公が体験しうる絶望感に、私(観客)を上手く誘導できていないのである。好例では「ソドムの市」や「ホステル」だろう。「セルビアン・フィルム」はどちらかと言えば、過激な映像の繋ぎでハイテンションを保った「ムカデ人間2」の作風に近かったように思える。

 「これが理想のセルビアン家族だ!」とのセリフ。強烈な皮肉の裏にはセルビアという国家が辿った内戦や混乱の境地が窺える。また、どこまでが新作ポルノ映画の撮影だったのか、メタ化したラストのオチも興味深い。実は過激な描写を抑えて最後まで丁寧に紡いでいたら、社会問題を取り入れつつ、「ロスト・ハイウェイ」のような(ポルノ業界が絡むため)極上ミステリーまで含めた、傑作カルト映画に成り得たかもしれない。前述のように普通のドラマパートでは丹念な人間描写と意外な映像美で見せていただけに、この完成度は非常に惜しいと感じたのだ。
テーマ:映画感想
ジャンル:映画
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(2013/12/20)
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宇宙戦争と同じく序盤~中盤は驚きと絶望、そして足場の悪い着陸地点。


 「ワールド・ウォーZ」は”怖い”と考える暇さえ与えない、ハイテンションパニックムービーである。序盤、ジェリー家のよくある朝食シーンを最後に物語はラストまで感染者Zからの逃亡劇と化すのだ。例えば、「インデペンデンス・デイ」のように巨大な宇宙船が飛来して一定時間が経過の後に破壊でもなく、「デイ・アフター・トゥモロー」のように地球の異常気象の兆候を投げかけた後のスーパーフリーズが始まるわけでもない。冒頭のテレビニュースで、鳥インフルエンザの流行を若干は謳っているものの、人が未知のウイルスに感染して襲い掛かる”Z化”は突如として始まり、詳しい情報もないままラストのラスト付近までその感染を抑えることはできないのだ。

 「ワールド・ウォーZ」の感染者は死んだ人間が蘇る訳ではないので、ゾンビと形容するのは微妙なところだが、今作のZ=ゾンビは特に手強い。襲われた後12秒で狂暴化する爆発的感染力、走るゾンビとそのスピード、車のフロントガラスを頭で突き破るパワー。「ドーン・オブ・ザ・デッド」「28日後…」「バイオハザード」等それまでに様々なゾンビを観たが、その最高峰ともいえる能力である。




*****以下、ネタばれ注意*****




 鑑賞後は以下の点で、似たような映画が他にあったなと真剣に悩む。

・地球規模の崩壊が突然、同時に始まる。
・主人公がハリウッドスター。
・主人公が家族を守り、物語の展開がほぼ主人公視点。
・敵対する生物に関する情報が皆無、逃亡に徹する。
・前半にスペクタクルな描写があるが、後半は一転してミニマムな動き。

 熟考の後に思い出したのがトム・クルーズ主演の「宇宙戦争」だった。特に前半の大規模さと、後半尻すぼみの印象が両者似ているような。今作でいえば、イスラエルの壁を乗り越えてくるゾンビの塔は未曾有の映像描写だったが、そこをピークにラストはウェールズの研究所で音を立てずに侵入し、1体のゾンビと攻防を繰り広げる矮小なもの。宇宙戦争の納屋のシーンを彷彿とさせるが、上空から何千何万とゾンビを観た後に1体のゾンビと研究室の1室で籠城という対比も観方によれば、なかなかユニークなものである。

 ただ、トム・クルーズとブラッド・ピットとで大きく違っていたのが職業だ。宇宙戦争が普通のブルーカラー労働者に対し、今作は元国連職員。そのために感染源を突き止めるという任務の一旦を担い、最終的に人類を救うワクチン製作を導いた、いわばヒーローになるという点で展開が異なる。元国連と特別任務というだけで、行く国々で手厚く迎え入れられたことや、周りの人達の物分りの良さ、協力体制の良さには若干の疑問が残った。

 「ワールド・ウォーZ」の完成までには予算の都合や、度重なる脚本のリライトなど、なかなかの難産だったと聞く。ラストの駆け足気味なナレーションと不自然な収束感はその辺りの影響がありそうだ。それまで上手に終焉世界を描いていただけに、足場の悪い着地点が非常に勿体なく思えた。


■関連作品■
007/慰めの報酬 ★★
イングロリアス・バスターズ ★★★★
ベンジャミン・バトン/数奇な人生 ★★
オーシャンズ13 ★★★


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(2013/12/20)
ブラッド・ピット、ミレイユ・イーノス 他

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